【不定期更新】ラッキースケベに憧れて 〜明るく楽しい異世界生活〜

香月ミツほ

文字の大きさ
52 / 66
記憶喪失……?

2-15 密林舐めるべからず

酒の席でのノリで言ったのかと思ったけどシャッフルダンスを教わりたいのは本当だったらしい。宴がお開きになり、女の人たちが船長達と引っ込むと、残された男の人たちが集まってきた。

『アンタ、この島の言葉が喋れるんだよな?』
『はい』
『よし! それなら安心して舞踊を教えてもらえるな』

キラキラお目々の一際童顔な壮年男性が皆を代表してそう言った。童顔だけどほうれい線とか目尻の皺で若者でないことはわかる。そして……、巨根!! 男の娘は巨こ……、げふんげふんっ。すみません、この島に男の娘文化はありませんでした。

で、教えてみて。
裸族のシャッフルダンスって、アレがぶらぶらして気になってしかたない。ランニングマンはまだいい。Tステップとかチャールストンとかさ、正面向いて左右に行ったり来たりするじゃん? イマイチかっこよくないよね。

でも本人たちは至って真面目だし、気にならないようだ。普段と違う体の動かし方に苦戦しつつも比較的速く覚える島民達、さすがだな!

たいして飲んでないけど、体を動かしていたらだんだん酔いが回ってきたので寝た。



*******



目を覚ますと女装させられていて、3人の子供達におもちゃにされていた。等身大の着せ替え人形か。

『タカラおちたー!』
『おちた? あぁ、起きたってことか。うん、おはよう』
『おはよー』

この島の滞在は今夜まで。
明日の朝には出港だ。宝浜で見つけたお宝は大切に持ち帰る。魚は海で釣れるけど肉や野菜(?)や果物はしっかり補充していくらしい。トロピカルなフルーツもあって楽しみだ。今も食べてるけど。

『獣避けの蔓……』
『あははははっ!! タカラエロ~い!』
『………………』

女装させられたままチビ達を膝に乗せていたらガン達がやってきた。獣避けの蔓?

『タカラがいるの今日で最後だろ?』
『とっておきの果物、教えてあげる~』
『タカラ、もりにいくの?』
『あぶないよ?』

まだ森に入る許可がないチビ達は森は怖いところだと教えられているようだ。むやみに入ると迷子にもなるだろうし、危ないのは間違いない。

『ガン達が守ってくれるからたぶん大丈夫』
『おう! 任せとけ!!』
『じゃあぼくもいく』
『ぼくもー!』
『あたしも!』
『10歳になったらね~』

聞けば森の奥の方には10歳にならないと保護者付きでも入れない。15歳になり、成人式を済ませれば2人以上で入れる。海は入江の中なら10歳になれば2人以上で行っていいという。

今ここにいる子供達は5~7歳くらいだから、どっちもダメなのか。森の浅いところなら行けるらしいけど、途中に置いていく訳にはいかないから断られている。

『ごめんね?』
『むぅ。おみやげ とってきたら ゆるす』
『おみやげ!』
『あまいの!!』
『見つかったら』

子供達の言葉にダーが真顔で答える。

オレが謝ったせいか許す許さないの話になってしまった。いや、いつもこうなのかな。まぁ甘い果物とかオレも食べたいから期待しよう。


*******



獣避けの蔓を叩いて柔らかくしたら腰に巻く。叩いて樹液を出すことで匂いによる獣避け効果が出るらしい。蔓が獣に食べられないよう進化しての効能だろう。この蔓の実はいわゆるむかごで、蒸し焼きにして皮を剥いて食べる。ビー玉サイズでじゃがいものような味で美味しかった。

で。

『ほら、もう大丈夫だよ~』
『ひぐっ、うっ、嘘じゃっ、ないっ?』
『もう村』
『外の人間てこんななのか?』

数十分後、オレは村に戻ってきた。
ギャン泣きしながら。

彼らは森と呼んでいるが、ここは熱帯。つまり森とはジャングルで、当たり前ながら生き物が大きくて派手。大きなナナフシに驚き、不気味な毒蛾を恐れ、毒々しい色の巨大なカタツムリに慄く。

未成年でも入れる森の生き物にビビって大泣きし、帰らざるを得なかったオレは今、村の集会所でガン達に宥められている。

蛾の目玉模様って異世界共通なの!?
葉っぱの隙間から覗く変質者かと思ったよ!
田舎育ちだから虫とか好きじゃなくてもスルーできると思ってたのに……。

でもさ、人頭蜘蛛とかヤバいでしょ。
大人の頭サイズの蜘蛛で毛が生えてるからぱっと見、人の後頭部に見える。それが複数ぶら下がってるんだよ?

ジャングル怖いぃぃぃぃっ!!

結局、果物はオレを送ってくれた後にガン達が採りに行ってくれた。トロピカルな果物は甘くて濃厚で美味しかったよ。船長をはじめ、船員達からはジャングルなんてよそ者が行くところじゃない、と笑われた。

夜はまた船員が女性達に連れて行かれたけど、ハリーは船から降りなかったようだ。例の女の子は影の薄いヤンと腕を組んでいたから、ハリーはフラれたのだろう。昼間、オレが森へ行ったり引きこもったりしているうちにカップルができていたらしい。

暫定的なものだろうから気にしない方がいいよ? 知らないけど。



*******



『じゃあな!』
『また来てね~』
『待ってる』

見送りのガン達にそう言われたけど定期航路ではないので困る。返事に困っていたらシャッフルダンスを教えた童顔のおっさんが会いたければお前らが行け、と言ってくれた。

『でもオレ、どこに住むか決まってないんだよね』
『あの船じゃねぇの?』
『それがね……』

旦那様がいるらしいこととその人を探していること、その人がどこの国の人か分からないことを言ったらダーが何やら考え込んだ。

『これ、タカラの夜光貝から落ちた』
『……指輪?』

宝浜でオレが見つけた夜光貝から落ちたという、赤と黒の宝石が嵌められた太い指輪。指輪だと思うけど、オレだと親指でもぶかぶかだ。でもなんだか気になる。

『ここ、名前かも』
『……なんて読むの?』
『おれたちには読めないって』

島には文字はないらしい。
ちょうど近くにいたヤンに聞いたら国によって読み方が変わると言われた。

「Weisell……、ウィセル? エイシール? この宝石は琥珀か? ならベイセル……、かな? たぶん。【ベイセルへ・タカラより】だな」

ベイセル!?

名前だけでキュンキュンする、だと……!?

「お前の旦那の名前か。分かって良かったな」
「あ!! タカラより、ってオレ?」
「そんな珍しい名前、そうそうないと思うぞ?」

この辺りの夜光貝は悪食で、いろんなものを飲み込むらしい。そのまま死ぬと貝殻の奥に引っかかって打ち上げられてから出てくることがあり、あの浜には何故か中に何かを抱えた夜光貝が打ち上げられやすいという。

『どこから運ばれてくるかは誰も知らないけどな』

まさかの手がかり!!

でも名前にときめくってことは好きだったのかな。……なら会いたいかも。それに赤い石、ってことは赤毛だよね。赤目じゃないよね? そしてこの大きな指輪! きっと身体も大きいよね!!

ウィシェールさんのような美丈夫を期待しちゃうなぁ。でへへへへ……。

オレはぎゅっと指輪を握り、まだ見ぬ(?)旦那様への期待を膨らませた。

失くさないように、とルバが細いのに丈夫な蔓を指輪に通してくれたのでうっかり外れないようにチョーカーのように短くしてつけた。

ちなみに赤い石が赤琥珀で黒い石は黒琥珀だろうと教えてもらった。これは大陸の東の方でとれる宝石なので名前の読み方も東国風にベイセルと判断したそうだ。ヤンて物知りだな。

手がかりも手に入ったので次の仕事がそっちだと良いなー、と船長に言ったら文字は大陸共通だから別の国の可能性もあるし、いろんな読み方がある、と言われてしまった。

でもこの読み方がしっくりくるから、きっと合ってる!!

と思ってもこの島から大陸の東に行くには一度途中まで戻らないと危険だとかでどのくらいかかるかは分からない。また凪にハマる可能性もあるし、嵐にあうかも知れないし。

それでも手がかりに好印象を持てたのは嬉しい。

ガン達に別れを告げ、朝日を背に小舟で船に運んでもらい、乗り込んだ。




感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

ストーカーから逃げ切ったのも束の間、転移後はヤンデレ騎士団に殺されかけている現実!

由汰のらん
ファンタジー
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった。しかしハルの血が特殊だと知ったダンピールはハルを連れ帰って? いっそ美味しい『血』(治癒)と『体液』(バフ)と『癒し』を与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

魔王(よしこ62歳)と勇者パーティ

歩人
ファンタジー
保育園を定年退職した田中よしこ(62歳・大阪)が目覚めると、異世界の魔王になっていた。討伐に来た勇者パーティは全員ボロボロの少年少女——よしこの目には、ごはんも食べていない、ろくに眠れていない「要保護児童」にしか映らない。「まずお手て洗おうね(^^)」から始まる、世界で一番やさしい魔王の物語。魔王軍の幹部も勇者も、みんなまとめて面倒を見る。だって元保育士やもん。剣でも魔法でもなく、「ちゃんと見てあげること」が最強の武器だった——ごはんと「えらいな」で世界を変える、おばちゃん魔王の子育てファンタジー。

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。