【不定期更新】ラッキースケベに憧れて 〜明るく楽しい異世界生活〜

香月ミツほ

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記憶喪失……?

2-23 オープン異世界人

ウィシェールさんの予想通りに試合は進み、迎えた決勝戦は体格差がすごい。これで小柄な方が勝つと大盛り上がりなんだろうけど、オレのウィシェールさんが負けるはずはない!!

「決勝、ウィシェール対ロニー! 始めっ!!」

審判の号令と同時に鋭い攻撃を仕掛けるロニーくん。余裕で躱し、薙ぎ払うも避けられるウィシェールさん。ロニーくんの目にも止まらぬ連撃を軽々といなし、時折り反撃する。反撃されると距離を取り、息を整えているようだ。

他の試合よりかなり長引く。徐々に出血が増え、遠目にも息が上がっているように見えるロニーくんと、ニヤニヤと余裕のウィシェールさん。

かっこよすぎでは!?

そしてロニーくんが痺れを切らしたように叫ぶ。

「いつまで偽名で遊んでるんですか!」
「……偽名?」
「もう休暇は終わってます! 仕事が溜まっています! とっとと帰りますよ!!」
「ロニー、お前さん俺を知ってるのか」
「まだとぼけますか!! あなたはキアトリル王国西方師団師団長ベイセル・フェルンストレームでしょう!!」
「なっ!? あっ……」
「ぐぁっ!!」

うわぁ、ウィシェールさんの拳、というか剣のつかがモロにこめかみに入っちゃったよ。剣を振っていたはずなのにどうしてそんなところが当たるのか謎。

ってそれよりもウィシェールさんがベイセル師団長!? その人ってオレの、旦那様………………?



*******



優勝はウィシェールさんに決まり、当たったお客さん達が歓声を上げる。気を失ったロニーくんは医務室に運び込まれて治療を受ける。少し心配だけどウィシェールさんが大怪我させるとは思えないので、大丈夫だろう。

配当金を受け取る人達で窓口が混んでいる。オレはそこを素通りしてウィシェールさんの元へ急ぐ。常連さん達とは窓口前で別れた。

「ウィシェールさん!」
「お嬢ちゃん、ここは関係者以外立ち入り禁止だよ」
「ご、ごめんなさい! でも、あの、ウィシェールさんに……」
「積極的だねぇ。じゃあ会ってくれるかどうか聞いてくるから待っててね。あ、お名前は?」
「は、はい! タカラです!」
「タカラさんね」

……これはファンと間違えられてる?

いや、合ってる。熱烈なファンです!!



「待たせたな」
「ううん。ねぇ、ロニーくん大丈夫?」
「あぁ、もう目を覚ましているぞ」

それほど時間も経たないうちにウィシェールさん……、ベイセル? が出てきてくれた。話が聞きたいから夕食に誘ったそうで、皆で落ち着けるお店に向かう。ウィシェールさんとオレとロニーくんともう1人。

イケメン増えた!!

「じゃあ、色々分かってるロニー、説明頼む」
「はぁ、分かりました」

居酒屋の個室に4人で入り、注文をしたところで早速本題に。

なんと!!

ウィシェールさんはキアトリル王国の西方師団所属のベイセル師団長で、オレは異世界から転がり込んだベイセルの嫁。魔力で治癒を速めたり水飴の作り方を教えたり、壊血病の予防法を教えたり、天馬を手懐けたりしたらしい。

天馬!?

「それもこれも新婚旅行に行きたいなどとおっしゃったタカラ様が悪いんです!!」
「なんでだよ!!」

急に感情的になり、オレのせいだと言い出す美少年のロニーくん。でも新婚旅行に行きたがっただけで2人まとめて記憶喪失になるものなの?

あ、そんな名所に行ったって?

とある海の民に伝わる言い回しで、記憶を失うことを『思い出を海神様に貸す』と言う。海だから海難事故も多く、そこそこ頻繁に記憶を失った人が流れ着くらしい。でも大体が1週間~1ヶ月で記憶を取り戻すので『思い出を貸す』という言い回しになるのだとか。一時的な記憶の混乱というやつだな。

その近くの断崖絶壁の景勝地に旅行に行き、風に煽られて落ちたオレを助けようとしてベイセルも落ちた。海流が複雑で地元の人に聞いた流れつきやすい場所を探したけど見つからず、そのまま探し続けていた。そしてベイセルの友人で情報屋のモーゼスからタカラを見かけたと知らせが入り……。

駆けつけてみればベイセルが名を変えて場末の闘技場で暴れていたのか……。

「師団長ともあろうお方が素人相手に武器を振るうなど!!」
「俺ぁ覚えてねぇんだ。仕方ないだろう」
「言葉遣い!! 直して下さい!!」

美少年ロニーくんが小型犬みたいになってるな。オレはイケメンくんとお話ししよう。

「えっと、覚えてなくて申し訳ないんだけどバルトサールくんは……」
「おれのこともロニーのことも呼び捨てでお願いします。おれはロニーと学園の騎士科の同期で現在は2人でベイセル師団長閣下とタカラ様の護衛を拝命しております」
「そうなのか。なんか、ごめんね?」
「お気遣い無用です」

堅物感溢れる子だけどおっとりしてて優しい大型犬ぽい。微笑みも優しげでキュンとするよ。

「バルトサールはロニーとどんな関係?」
「清い関係です」
「ん……?」
「成人するまでは、と待っていました。そして後数日、と言うところでお二方が行方不明に……」
「うわぁぁぁっ!! ごめん! そりゃあロニーも怒るよね」
「そんな理由で怒ってません!!」

おっと、聞こえていたのか。
でもいよいよって時に上司のミスで初夜がお預けとか呪ってやりたくならない?

まぁ、話は分かったので明日、船長とアニタさんに説明してキアトリル王国への旅の準備だなー。浄化プラグも受け取りに行かなきゃだけど、できてるかなぁ? ベルトのバックルもだ。

それから船長やみんなにお礼がしたい。いくらくらいが相場だろうか。

「船長には師団長が支払うべきでは?」
「でもベイセルも雇われてるんだよ?」
「それはそれ、これはこれだ。俺のかわいいタカラを保護して守ってくれてたんだ。しっかり礼をしないとな」
「師団長、言葉遣い!」

そういうもん?

まぁ、オレそんなにお金ないし、お願いしようか。……お金?

あっ!!

「配当金!」
「明日でも受け取れるぞ。一緒に顔を出しに行こうな」
「うん!」

そして話し合いを終え、宿に戻るとロニー達も同じ宿だった。これは、初夜っ!? 若者達の初夜!!

「国に帰るまで気が気じゃありませんから」
「おれも焦ってないんで」

若いのにストイックな2人に驚くばかり。
ポーズだよね?

気にするオレをウィシェールさんが引っ張って部屋に入る。あ、ベイセルだった。

「ウィ……、ベイセル! シャワー浴びる?」
「あぁ、俺は試合の後に浴びたから大丈夫だ」
「うん、じゃあ入ってくるね」

ここは島ではないからシャワーのお湯が足りなくなることはない。でも気が急いてしまい、最速で身を清めた。

そしてウィ……、ベイセルに近づき、見つめ合うひととき。はぁ、幸せ……。

と、幸せに浸っていたらくるりと立ち位置を変えられ、ドアから隠すような感じになる。ウィ……、ベイセルの筋肉から緊張が伝わる。

ガチャ

ぞくり

「え……?」
「ぅおっ!? な、なん……、だぁ?」

ノックもなく扉を開け、船長が入ってきた。その途端ウィ……、ベイセルから溢れ出す殺気。今度は殺気だって分かったよ! だってゾクゾクしてきゅんきゅんして、感じちゃうから。

どMじゃないはずだけどなぁ。

「おいおいウィシェールよう。そんなに囲い込んでこいつの旦那が迎えにきたらどうする気だ」
「俺が旦那だ。問題ない」
「……そういうやつだったのか?」
「船長、ちょっと待って!!」

何か誤解している!
殺気出しながら『俺が旦那だ』とか言うと喧嘩上等に聞こえるもんね。ウィシェールさん、ちゃんと説明しないと!!

まずは座ってもらい、ロニーから聞いた話を伝える。そしてウィ……、ベイセルの指輪を外して見せた。


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