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そーだったのか!
ーー ちさとside ーー
子供達全員と順番に寝てみたけど、やっぱりカイと寝た時しか喋れない。カイとセットで引き取ってもらう、のは無理か。おれが働く間、カイを1人にしておく訳にはいかないし……。
そう悩むおれに転機が訪れた。
小柄な男の人が赤ちゃんを抱っこしてやって来た。
院長先生と挨拶を交わし、赤ちゃんを院長先生に抱かせているところへ子供達が近づく。知り合いのようで交代で赤ちゃんを抱っこさせてもらっている。……おれも赤ちゃんに興味津々で近づいた。
「%♪€○々〆☆?」
何か言われたけど相変わらず理解できない。でも周りの子達がわちゃわちゃと説明してくれているみたい。
周りに頷いてからおれと目を合わせ、にっこり笑って赤ちゃんを差し出した。抱っこさせてくれるの!? おれは喜んで受け取り、大事に横抱きした。
小さな握りこぶしをちゅぱちゅぱしている、ミルクの香りのする温かくて小さな温もりが心地よい。目を合わせるとじぃぃっと見つめられた。かわいいぃ~~~~!!
うっとりと見つめているとふいに赤ちゃんが手を振り回し、ヨダレまみれの手がおれの口に触れた。と言うか突っ込まれた。
「あがが……」
「*◇☆○%•んなべたべたな手で! ごめんね!」
「……あ」
「……え?」
「言葉、分かる!」
「「「「えぇーっ!?」」」」
なんで突然?
赤ちゃん抱っこしてヨダレまみれの手を口に入れられ……
そう言えばカイと寝ると朝、口の周りがベタベタしてるけど、まさか!
「カイ! おれと寝てる時、おれに……何かしてた?」
「ちしゃと、おちてー、って、ちゅーしたよ?」
「何で!?」
「しゅちなひとは、ちゅーで おこしゅの」
眠り姫か!!
……こっちにもそんな物語があるのかな?
「それで朝起きると口の周りがベタベタしてて、話ができるようになってたのか」
「チサトって言うの? 急に喋れるようになるとか、不思議な子だね」
「この子のお陰です。ありがとうございます!」
と、お礼を言ったけど、顔にはてなマークが浮かんで見えた。
「ギゼ、も……あの……」
「ぼくもしてあげても良いよ?」
「おれもしてやるから、いつでも言えよ」
おれは予想外に人気(?)で、年少組みんながちゅーしてくれるそうで嬉しい。
いや、戸惑ってるけどね?
でも、つまり恋人が出来て一緒に暮らせば言葉に不自由しない、って事……かな? でも夕方には時間切れ……。
ずっと一緒にいられる職業の人だと良いな。
赤ちゃんを連れてきた人はおれの事を面白がりつつ、帰って行った。ここの産休中の先生で、子供が生まれた報告に来たんだって。
……恋人ができるまではここに居させてもらおう。ちび達がちゅーしてくれるから!
「院長先生、この子達と……その、ちゅー……しても大丈夫、ですか?」
「本人が嫌がらなければ構いませんよ。むしろしたがってますからね。みんなを可愛がってあげて下さい」
もしかしてこの世界、ちゅーは挨拶、なのか……?
ベロチューなのに……。
助かるけど。
でもこれで、デーメルさんに改めてお礼が言えるなー、って考えてたら来てくれた!
「デーメルさん!」
「チサト、今日は喋れるんだね」
「はい! 喋れるようになる方法が分かったんです!」
「方法が?」
おれは説明しようとして急に恥ずかしくなった。
「あの……まだ条件の確認というか何と言うか……確実になったら言います」
「そうなのか? 私で力になれる事があったら何でも言ってくれ」
「あ、ありがとうございます……」
年齢制限があったり相性があったりするとここを離れられないし。
デーメルさんは気を取り直しておれの前に跪いた。
「チサト、もう院長から聞いているかも知れないが、改めて言わせてくれ。私と一緒に暮らさないか?」
「……え? でもデーメルさん、家族とか恋人とかは?」
「家族は離れて暮らしているし、恋人もいない。宿舎に部外者を泊める事はできなくて……。身元の分からない子供は一度、孤児院に預けて戸籍を作らなければ引き取る事も出来ないから、ここに預けたんだ。説明できなくてすまない」
そう言う事だったのか!
「おれ、デーメルさんが引き取ってくれたら嬉しいのに、って考えてました。でもここに連れて来られて、それは無理なんだろうと。……それに、また喋れなくなるかも知れないんですよ?」
「喋れないチサトもかわ……時々でも喋れるなら文字を教えれば筆談できるだろう。私は宿舎を出てチサトと暮らしたいんだ。返事を聞かせて欲しい」
「おれ、この世界の事何にも知らないし、デーメルさんが仕事に行っちゃったら喋れないのに1人で留守番?」
「それならここへ通って下さい」
「院長!」
俺たちの会話を聞いていたイーヴァイン先生が提案してくれた。
さっきの赤ちゃんを連れた人の産休が開けるのが1年後なので、それまで臨時職員として来て欲しい、と言ってくれた。そして子供達と一緒に文字も勉強すれば良い、って。
ここで働くならこのまま住み込みでも良くない?
「ここは国の施設で生活の援助が目的ですから住めるのは院長と料理長だけなんです。他の先生は交代で泊まっています」
自立を促すのか。うん、なら仕方ない。
その代わり、給料をもらえるらしい。
時間のかかってるおれの戸籍問題も喋れるなら少しは早くなるだろうか?
……ここにいる分には戸籍なくても問題無いんだけど。
「なら私たちの家もここの近くを探そう」
「良いんですか?」
「もちろん。他に希望があれば何でも言ってくれ。それに明日は休みなんだ。一緒に家を見に行こう」
院長もデーメルさんも良い人すぎる!!
翌日のお手伝いシフトを調整してもらって、お出かけの予定を立てた。と言っても朝食と朝の洗濯が終わったら、と言うざっくりとしたものだ。おれは何にも知らないし、ぜ~んぶデーメルさんにお任せだけどね。
子供達全員と順番に寝てみたけど、やっぱりカイと寝た時しか喋れない。カイとセットで引き取ってもらう、のは無理か。おれが働く間、カイを1人にしておく訳にはいかないし……。
そう悩むおれに転機が訪れた。
小柄な男の人が赤ちゃんを抱っこしてやって来た。
院長先生と挨拶を交わし、赤ちゃんを院長先生に抱かせているところへ子供達が近づく。知り合いのようで交代で赤ちゃんを抱っこさせてもらっている。……おれも赤ちゃんに興味津々で近づいた。
「%♪€○々〆☆?」
何か言われたけど相変わらず理解できない。でも周りの子達がわちゃわちゃと説明してくれているみたい。
周りに頷いてからおれと目を合わせ、にっこり笑って赤ちゃんを差し出した。抱っこさせてくれるの!? おれは喜んで受け取り、大事に横抱きした。
小さな握りこぶしをちゅぱちゅぱしている、ミルクの香りのする温かくて小さな温もりが心地よい。目を合わせるとじぃぃっと見つめられた。かわいいぃ~~~~!!
うっとりと見つめているとふいに赤ちゃんが手を振り回し、ヨダレまみれの手がおれの口に触れた。と言うか突っ込まれた。
「あがが……」
「*◇☆○%•んなべたべたな手で! ごめんね!」
「……あ」
「……え?」
「言葉、分かる!」
「「「「えぇーっ!?」」」」
なんで突然?
赤ちゃん抱っこしてヨダレまみれの手を口に入れられ……
そう言えばカイと寝ると朝、口の周りがベタベタしてるけど、まさか!
「カイ! おれと寝てる時、おれに……何かしてた?」
「ちしゃと、おちてー、って、ちゅーしたよ?」
「何で!?」
「しゅちなひとは、ちゅーで おこしゅの」
眠り姫か!!
……こっちにもそんな物語があるのかな?
「それで朝起きると口の周りがベタベタしてて、話ができるようになってたのか」
「チサトって言うの? 急に喋れるようになるとか、不思議な子だね」
「この子のお陰です。ありがとうございます!」
と、お礼を言ったけど、顔にはてなマークが浮かんで見えた。
「ギゼ、も……あの……」
「ぼくもしてあげても良いよ?」
「おれもしてやるから、いつでも言えよ」
おれは予想外に人気(?)で、年少組みんながちゅーしてくれるそうで嬉しい。
いや、戸惑ってるけどね?
でも、つまり恋人が出来て一緒に暮らせば言葉に不自由しない、って事……かな? でも夕方には時間切れ……。
ずっと一緒にいられる職業の人だと良いな。
赤ちゃんを連れてきた人はおれの事を面白がりつつ、帰って行った。ここの産休中の先生で、子供が生まれた報告に来たんだって。
……恋人ができるまではここに居させてもらおう。ちび達がちゅーしてくれるから!
「院長先生、この子達と……その、ちゅー……しても大丈夫、ですか?」
「本人が嫌がらなければ構いませんよ。むしろしたがってますからね。みんなを可愛がってあげて下さい」
もしかしてこの世界、ちゅーは挨拶、なのか……?
ベロチューなのに……。
助かるけど。
でもこれで、デーメルさんに改めてお礼が言えるなー、って考えてたら来てくれた!
「デーメルさん!」
「チサト、今日は喋れるんだね」
「はい! 喋れるようになる方法が分かったんです!」
「方法が?」
おれは説明しようとして急に恥ずかしくなった。
「あの……まだ条件の確認というか何と言うか……確実になったら言います」
「そうなのか? 私で力になれる事があったら何でも言ってくれ」
「あ、ありがとうございます……」
年齢制限があったり相性があったりするとここを離れられないし。
デーメルさんは気を取り直しておれの前に跪いた。
「チサト、もう院長から聞いているかも知れないが、改めて言わせてくれ。私と一緒に暮らさないか?」
「……え? でもデーメルさん、家族とか恋人とかは?」
「家族は離れて暮らしているし、恋人もいない。宿舎に部外者を泊める事はできなくて……。身元の分からない子供は一度、孤児院に預けて戸籍を作らなければ引き取る事も出来ないから、ここに預けたんだ。説明できなくてすまない」
そう言う事だったのか!
「おれ、デーメルさんが引き取ってくれたら嬉しいのに、って考えてました。でもここに連れて来られて、それは無理なんだろうと。……それに、また喋れなくなるかも知れないんですよ?」
「喋れないチサトもかわ……時々でも喋れるなら文字を教えれば筆談できるだろう。私は宿舎を出てチサトと暮らしたいんだ。返事を聞かせて欲しい」
「おれ、この世界の事何にも知らないし、デーメルさんが仕事に行っちゃったら喋れないのに1人で留守番?」
「それならここへ通って下さい」
「院長!」
俺たちの会話を聞いていたイーヴァイン先生が提案してくれた。
さっきの赤ちゃんを連れた人の産休が開けるのが1年後なので、それまで臨時職員として来て欲しい、と言ってくれた。そして子供達と一緒に文字も勉強すれば良い、って。
ここで働くならこのまま住み込みでも良くない?
「ここは国の施設で生活の援助が目的ですから住めるのは院長と料理長だけなんです。他の先生は交代で泊まっています」
自立を促すのか。うん、なら仕方ない。
その代わり、給料をもらえるらしい。
時間のかかってるおれの戸籍問題も喋れるなら少しは早くなるだろうか?
……ここにいる分には戸籍なくても問題無いんだけど。
「なら私たちの家もここの近くを探そう」
「良いんですか?」
「もちろん。他に希望があれば何でも言ってくれ。それに明日は休みなんだ。一緒に家を見に行こう」
院長もデーメルさんも良い人すぎる!!
翌日のお手伝いシフトを調整してもらって、お出かけの予定を立てた。と言っても朝食と朝の洗濯が終わったら、と言うざっくりとしたものだ。おれは何にも知らないし、ぜ~んぶデーメルさんにお任せだけどね。
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