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スカウト?
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ーー チサト side ーー
その日、とても身なりの良い人がお付きの人を連れてやって来た。侍従として子供のうちから育てたいのだそうだ。
孤児院は出て行き方も様々。
成人するまでに職を探して独り立ちしたり、成人前に職人さんに弟子入りしたり、養子になったり。
それで年少組が並んで品定めされた。
3歳のカイ、7歳のギゼラ、10歳のクーノとパウル。
「ぜひ君に来て欲しい! どうだろう?」
お眼鏡にかなったのはギゼラだった。
「あの……じじゅうってなにをするんですか?」
「あぁ、通常なら貴族の子供が就く仕事だ。知らないのも無理はない。明日、実際に私の側で見学して見ないかい?」
身元もはっきりした紳士らしく、院長先生もにこにこしている。あとはギゼラの気持ち次第だ。小さいなりに将来を考えているギゼラは見学に行く事を承諾した。
「ギゼ、緊張する?」
「ん……どんなおしごとかわからないし、それに……」
「?」
「チサトせんせいと はなれちゃう」
「ギゼ!!」
まだまだ先だとちゃんと考えてなかった別れ。電話みたいなのはあるらしいけどお屋敷で使用人がほいほい使える物ではないだろう。寂しい……それでも将来を考えるならこれはチャンスかも知れない。
とにかく見学だけはした方が良いから、今日はたくさん甘やかして明日に備えた。
「侍従の仕事?」
「はい。今日、身なりの良い人が来て、ギゼラに侍従にならないか、って。ギゼラは明日仕事を見学に行く事になったんですけど」
今後、他の子達に説明する必要が出てくる可能性もあるのにどんな仕事か知らずにいるのもね。他の先生たちもよく知らないみたいだったのでデーメルさんに聞く。
「簡単に言えば主人の身の回りの世話をする事だ。衣服の準備、身だしなみを整える、体調管理、客のもてなし……だろうか?」
ずっと主人の側にいて主人が快適に過ごせるよう気を配る。
……難しそう。
「向き不向きがあるだろうな。だがやりがいもあし、給与も高額だ」
「そうか、大変な分、お給料がいいんですね。ギゼがその職業を選ぶなら応援します」
「ところで、言葉はどうだった?」
「あ! はい、今日はちゅーしてませんがまだ喋れます」
「……そうか」
あれ? なんか残念そう?
「たとえ子供でもチサトが他の者と口づけするのは不愉快だ。だが、1回で……その……足りてしまうのは……」
「きゃーーーーー!! きっ、昨日のは忘れてください! お酒のせいです! 実験なんてもうしなくて良いんです! ちゅーでじゅうぶんなんですから!!」
「恋人として他の人間に口づけを委ねたくはないんだが?」
「うぅ……」
「言葉のためだけでなく恋人として求められたい、と言うのは強欲なのだろうか?」
「あぅぅぅ……」
「毎晩でもチサトが欲しい。愛している」
耳元でそんな事、囁かないでぇ~~~~!!
顔から火が出る! 腰が砕ける! あらぬ所に血が集まる!!
おれはチョロインだよ~~~~~~!!
抵抗しないのを是としてシャワーに連れ込まれ、丁寧に洗われてイタズラまでされて、歩けなくなってお姫様抱っこでベッドに運ばれました。
モテないとか言ってたのになんでこんなにえっち上手いの!?
なんの抵抗もできなくて、マグロだけど大トロですよ!!(混乱)
最後には抜いちゃダメとか言っちゃったよ!
男同士なのに何一つ抵抗がないおれって……元々こっちだったのかな? うーん……?
「チサト、愛してる。敬語なんて不要だ。普通に喋ってくれ」
寝落ちする前の最後に聞こえたお願いは、普通に喋って欲しい、だった。ささやか過ぎるお願いに胸が暖かくなった。
「おはよう、チサト。良い朝だね」
「デ……フィール、雨が降ってますよ?」
「あぁ、恵みの雨だ」
良い朝=良い天気=晴れ
だと思ってたけど、こちらの世界では
良い朝=幸せな朝
だそうで……
うん。良い朝です。
それはともかく、今日はギゼの侍従の仕事見学だ。心配だからついて行きたいけどそうもいかないよなー、と孤児院でお迎えを待っていたら馬車がぬかるみで立ち往生したそうで見学は日を改めても良いし、自力で訪ねて来てくれても良いと言われた。
「ギゼ、どうする?」
「んー……いきたい!」
様子を見て邪魔になりそうなら帰って来よう。そう考えて付き添いを買って出て、事故(?)を知らせに来た人に2人でついて行った。
「おや、来てくれたんだね! 嬉しいよ。そちらは?」
「はじめまして。孤児院職員のチサトです。お邪魔になるようなら帰りますが、子供達に侍従の仕事について説明できるようになりたくて一緒に来ました」
「君が職員? 成人しているのかね?」
「16歳です」
「なんと! ……素晴らしい。では2人一緒に勉強しなさい」
「ありがとうございます!」
主人の許可をもらって使用人部屋に連れて行ってもらった。
その日、とても身なりの良い人がお付きの人を連れてやって来た。侍従として子供のうちから育てたいのだそうだ。
孤児院は出て行き方も様々。
成人するまでに職を探して独り立ちしたり、成人前に職人さんに弟子入りしたり、養子になったり。
それで年少組が並んで品定めされた。
3歳のカイ、7歳のギゼラ、10歳のクーノとパウル。
「ぜひ君に来て欲しい! どうだろう?」
お眼鏡にかなったのはギゼラだった。
「あの……じじゅうってなにをするんですか?」
「あぁ、通常なら貴族の子供が就く仕事だ。知らないのも無理はない。明日、実際に私の側で見学して見ないかい?」
身元もはっきりした紳士らしく、院長先生もにこにこしている。あとはギゼラの気持ち次第だ。小さいなりに将来を考えているギゼラは見学に行く事を承諾した。
「ギゼ、緊張する?」
「ん……どんなおしごとかわからないし、それに……」
「?」
「チサトせんせいと はなれちゃう」
「ギゼ!!」
まだまだ先だとちゃんと考えてなかった別れ。電話みたいなのはあるらしいけどお屋敷で使用人がほいほい使える物ではないだろう。寂しい……それでも将来を考えるならこれはチャンスかも知れない。
とにかく見学だけはした方が良いから、今日はたくさん甘やかして明日に備えた。
「侍従の仕事?」
「はい。今日、身なりの良い人が来て、ギゼラに侍従にならないか、って。ギゼラは明日仕事を見学に行く事になったんですけど」
今後、他の子達に説明する必要が出てくる可能性もあるのにどんな仕事か知らずにいるのもね。他の先生たちもよく知らないみたいだったのでデーメルさんに聞く。
「簡単に言えば主人の身の回りの世話をする事だ。衣服の準備、身だしなみを整える、体調管理、客のもてなし……だろうか?」
ずっと主人の側にいて主人が快適に過ごせるよう気を配る。
……難しそう。
「向き不向きがあるだろうな。だがやりがいもあし、給与も高額だ」
「そうか、大変な分、お給料がいいんですね。ギゼがその職業を選ぶなら応援します」
「ところで、言葉はどうだった?」
「あ! はい、今日はちゅーしてませんがまだ喋れます」
「……そうか」
あれ? なんか残念そう?
「たとえ子供でもチサトが他の者と口づけするのは不愉快だ。だが、1回で……その……足りてしまうのは……」
「きゃーーーーー!! きっ、昨日のは忘れてください! お酒のせいです! 実験なんてもうしなくて良いんです! ちゅーでじゅうぶんなんですから!!」
「恋人として他の人間に口づけを委ねたくはないんだが?」
「うぅ……」
「言葉のためだけでなく恋人として求められたい、と言うのは強欲なのだろうか?」
「あぅぅぅ……」
「毎晩でもチサトが欲しい。愛している」
耳元でそんな事、囁かないでぇ~~~~!!
顔から火が出る! 腰が砕ける! あらぬ所に血が集まる!!
おれはチョロインだよ~~~~~~!!
抵抗しないのを是としてシャワーに連れ込まれ、丁寧に洗われてイタズラまでされて、歩けなくなってお姫様抱っこでベッドに運ばれました。
モテないとか言ってたのになんでこんなにえっち上手いの!?
なんの抵抗もできなくて、マグロだけど大トロですよ!!(混乱)
最後には抜いちゃダメとか言っちゃったよ!
男同士なのに何一つ抵抗がないおれって……元々こっちだったのかな? うーん……?
「チサト、愛してる。敬語なんて不要だ。普通に喋ってくれ」
寝落ちする前の最後に聞こえたお願いは、普通に喋って欲しい、だった。ささやか過ぎるお願いに胸が暖かくなった。
「おはよう、チサト。良い朝だね」
「デ……フィール、雨が降ってますよ?」
「あぁ、恵みの雨だ」
良い朝=良い天気=晴れ
だと思ってたけど、こちらの世界では
良い朝=幸せな朝
だそうで……
うん。良い朝です。
それはともかく、今日はギゼの侍従の仕事見学だ。心配だからついて行きたいけどそうもいかないよなー、と孤児院でお迎えを待っていたら馬車がぬかるみで立ち往生したそうで見学は日を改めても良いし、自力で訪ねて来てくれても良いと言われた。
「ギゼ、どうする?」
「んー……いきたい!」
様子を見て邪魔になりそうなら帰って来よう。そう考えて付き添いを買って出て、事故(?)を知らせに来た人に2人でついて行った。
「おや、来てくれたんだね! 嬉しいよ。そちらは?」
「はじめまして。孤児院職員のチサトです。お邪魔になるようなら帰りますが、子供達に侍従の仕事について説明できるようになりたくて一緒に来ました」
「君が職員? 成人しているのかね?」
「16歳です」
「なんと! ……素晴らしい。では2人一緒に勉強しなさい」
「ありがとうございます!」
主人の許可をもらって使用人部屋に連れて行ってもらった。
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