ほんのちょっと言語チート、くっださーいな!

香月ミツほ

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注目の的

ーー デーメルside ーー

チサトからパーティーの話を聞き、うちの部隊にも慰労パーティーの知らせが来たが、まさかチサトがツィーゲ伯爵のパートナーとして会場内に連れ込まれるとは考えていなかった。

花を飾った黒髪のカツラをつけ、少し胸元の開いた薔薇色のドレスを身に纏い、化粧を施した顔は別人のようだった。やりすぎだ。あんな厚化粧ではチサトの可愛らしさが半減する。ギゼに気づくまでチサトだと分からなかったくらいだからな。

だが、周りの者達はかわいいかわいいと囁き合い、あわよくば近づこうとしていた。

責任者として最初に挨拶をしに行ったおかげで、チサトの救出に成功したのは幸運だった。ツィーゲ伯から解放された時、無防備に晒した素足を皆に見られたのは腹立たしかったが。

その後転んでカツラが外れ、大笑いするオルトや笑いを堪える周りの者達を見回して真っ赤になっていたが、オルトに髪を整えられて落ち着いたようだ。

「こちらの方がチサトらしくて好きだ」

思わず本音をこぼすと首まで真っ赤になって可愛らしさが増してしまった。あぶない。こんな顔を人に見せたくない。本音を封印しよう。

「チサトくん、か~わいい!」
「チサトくん、って副隊長見て泣いた、あの?」
「確かに大きさはあのくらいだったけど子供だったろ?」

こっちへ来てすぐに挨拶させた者達とエルマーが好き勝手言っている。だが目配せするとエルマーが頷き、皆を誘導して隊員目当ての者達の方へと移動した。

「チサト! 紹介するぞ。俺の婚約者のコリンだ。仲良くしてやってくれ」
「えっ!? は、はい! 孤児院の職員のチサトです。よろしくお願いします!」
「はじめまして。僕はコリン。その……オルトの……ごにょ……婚約者、です……」
「はぁ……。そこは自信満々に言って欲しいんだがな……チサトも隊長の恋人です、って言ってやれ」

チサトも私の恋人だとは言ってくれないから、オルトの気持ちがよく分かる。
だがチサトが真っ赤になって可愛さが増すから無理に言わせなくて良い。

そんな空気をギゼが変えてくれた。

「せんせい、ごはんたべよ?」
「あ、うん! どれが良いなか?」
「あのね、これとこれ美味しいよ」

コリンが2人を案内してくれる。3人とも可愛らしいのでせっかく散らした視線がまた集まってしまう。オルトと2人で睨みを利かせた。

それにしても、支えがないと歩けないチサトは堪らなく可愛い。

「あの……フィール。この服、コルセットが苦しくて……少し緩めたいんですけど……」
「それなら休憩室を借りて弛めよう」

ギゼをオルトとコリンに任せ、休憩室に行く。背中のボタンを外してコルセットを緩めるとチサトはほっとしたようだ。

「姫って大変なんですね」
「……だが、この姿はとても……煽情的だ」
「!! こんなところで何言ってるんですか! 早く戻ってもっと食べたいです!」
「……残念だ」

服を整え、腕に掴まらせて会場へ戻った。

「早かったな」

オルトに揶揄われたがチサトは気づかず、料理に釘付けだ。
すでに仲良くなったギゼラとコリンに誘われているが、歩けないのでテーブル席に座らせて給仕に料理を運んでくれるよう頼んだ。

3人で仲良く喋りながら食べている。
そこへ隊員数名が料理を持って話しかけてきた。

「お前達、気が利くな」
「「「副隊長!」」」
「お前達にも紹介しよう。副隊長の婚約者のコリンと私の恋人のチサト、それからツィーゲ伯爵が目をつけているギゼラだ」
「副隊長の……」
「隊長の……」
「伯爵の……」
「丁重にな」
「「「はいぃ!!」」」

照れる2人と料理に夢中なギゼラ。私たちも席に座って飲食を楽しんだ。



美味しかった料理を給仕に告げ、帰りは私とチサトとギゼだけ馬車で孤児院まで送ってもらった。ギゼは途中で眠ってしまった。

「ありがとうございます」
「いや、院長から礼を言われるような事は何も」
「ギゼが幸せそうです。最近のギゼは欲しい物をはっきりと主張できるようになったし、カイとチサトを取り合うのも楽しそうで生き生きとしてるんです。隊長がチサトを連れて来てくれたおかげです」
「それは……あなたと監査官が懇意にしていると知った上で利用したんだ」
「そうですか。では利害の一致ですね。それにしてもチサトの可愛らしい事」

チサトの顔を見にきた院長にドレス姿を見られ、恥ずかしがるチサト。私たちは家まで馬車で送ってもらった。

「歩けます! 掴まらせてもらえれば歩けますから!!」
「伯爵に返すドレスを汚してはいけないだろう? 大人しくしていなさい」

本当は抱きたいだけだが、貴族の屋敷ではないので玄関までのアプローチは磨き上げてはいない。大人しくなったチサトをまっすぐ寝室に連れ込んだのも先ほど見た扇情的な姿が頭から離れなかったからだ。

「あの! 部屋で着替えます!!」
「1人では脱げないだろう?」

背中のボタンもコルセットも1人では着脱できない仕様になっている。髪に添えた花を外し、ベッドに運んで背中のボタンを外し、コルセットを緩めるとコルセットが食い込んだ跡がうっすらと赤く色づいていた。
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