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「ぼくのたからもの」作戦
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ーー デーメル side ーー
コリンはチサトを子供扱い、チサトは懐いて遠慮がない。結果……あれは……
オルトも私もそれぞれしか見ていなかったが、気持ちは同じだっただろう。私達を煽っているかのようだった。
家に帰ってチサトを諭すと、あまり納得できていないようだが、頷いたのでもうあんないたずらはしないだろう。
……それにしても、私にも所有痕を付けたいなんて可愛らしい事を言う。挙句、気持ちが盛り上がって下半身を擦り付けてくるなんて……
早く婚姻を結び、縛り付けたい。
チサトが他の誰にも目を奪われないように。
「隊長、昨日何があったんですか?」
「盗品の件か?」
「それじゃなくて副隊長です。いくら新婚だからって漲り過ぎじゃないですか?」
確かに今日のオルトはかなり漲っている。
……昨夜のアレに煽られたのだろう。
「詳しくは知らないが、おそらく聞かない方が良いと思うぞ」
「本人には絶対聞きませんよ!?」
「なら、距離を取っておけ」
「ですが被害者が……」
「分かった」
隊員に怪我人が出始めているのは困るので訓練に割って入った。
ガキィイィンッ!
「随分調子が良さそうだな」
「まぁな! お前もだろう?」
「そうだな。だが今は隊員に怪我をさせるのは困る」
「盗っ、品のっ! 捜索かっ!」
「そうだ。盗難届けの出ている物はともかく、出ていない物は盗まれた事に気付いていない可能性がある。それらを調べて狙われた理由をはっきりさせなければ町の治安維持に支障を来すだろう」
「っっ!地道なっ、聞き込み、っか!」
「分かっていて人手を減らすな」
カッ!
「くっ! 相変わらずスカしやがって……ハァハァ……」
「後から来たんだ。体力に余裕があるのは当然だろう」
「そう言う事にしといてくれ……」
刃を潰した剣だがそれなりに怪我もする。全体的に隊員達の実力の底上げをしたいところだがどうするべきか。
「隊長、助かりました」
「エルマー、隊員の戦闘力を向上させるために何か良い提案はないか?」
「そうですね、やっぱり闘技大会ですかね? 意中の相手に良いとこ見せられるとなれば気合も入るでしょうし」
「収穫祭のあれか」
「えぇ。でも収穫祭だと他にも見るものがあって必ず見てもらえる保証がありませんから、闘技大会だけを単独で開催して他所からも強い参加者を呼んで……」
エルマーには腹案があるようなので盗品の件が落ち着いたら計画書を提出するように言っておいた。
その後の調べで荷車の持ち主は巻き込まれただけの被害者だった事が分かり、犯人に繋がる手がかりはなかった。
盗難届の出ていたものは持ち主に返したがまだ3分の2が残っている。これをこちらから公開すれば関係の無いものが横領しようと名乗り出る可能性がある。しかも盗難届けは隣町やその先からも出ていた。
範囲を広げるにしてもどうすれば良いのか。
「フィール! これ、見て見て!」
迎えに行くととても嬉しそうな顔で文字の練習に使う黒板を持ってきた。見れば絵が描いてある。
「これはチサトか?」
「そう! クーノが描いたの! 上手でしょ!」
線は拙いが特徴を捉えていてちゃんと誰を描いたのかが分かる。これは使えるのでは?
「その子に頼みたい事があるのだが」
翌日、残った盗品の数だけ黒板を発注し、クーノに「宝物」の絵を描いてもらった。
形に心当たりがなければ微笑ましい子供の絵だし、特徴に覚えがあれば無くした事に気づくだろう。
数日後、更に半数近くが持ち主へと返却された。
「色をつけずに描いて詳細を言えた者が持ち主か。なるほどな」
「で、残りのこれは他の町の物である可能性が高い、と」
「盗品と黒板を持って行っても良いが、半分になったから絵を2つずつにして町を分けるか」
「その方が良さそうだ」
残った品の絵を描いてもらい、隣町とその向こうに運ぶ事になった。念のためうちの領主からツィーゲ伯とグンドルフ侯爵に手紙を書いてもらい、隊員2人を商人の護衛につけて運ばせた。
街道沿いの町で縦に繋がっているから戻るのは4~5日後か。ついでに闘技大会の企画案と協力の呼びかけの手紙も添えてある。
……仕事が早いのは良い事だが、張り切りすぎだろう。だがまぁ、応援してやらなくてはな。
それからは賞金と名誉を目標に日々、真剣に鍛えた。
「……ふくたいちょー、もう一丁お願いします……」
「今日はもう終わりだ。見回り行って来い」
「うぅ……了解です!」
隊員達の相手では物足りない様子のオルトと軽く流して訓練を終了。私もまだまだ鍛えたいのだが、なかなか時間が取れない。
私だとてチサトに良いところを見せたいのは同じなのだが。闘技大会まであと3ヶ月。特別招待枠によろず請負人などと言うふざけた職業を自称するエーギンハルトが参加する事となった。
こいつは2度ほど会ったがふざけた行動とは裏腹にこの国で1、2を争う強さを誇る。よくこんな片田舎の催しに出ようと思ったな。
なにか裏があるのかと疑いつつも研鑽を積んだ。
コリンはチサトを子供扱い、チサトは懐いて遠慮がない。結果……あれは……
オルトも私もそれぞれしか見ていなかったが、気持ちは同じだっただろう。私達を煽っているかのようだった。
家に帰ってチサトを諭すと、あまり納得できていないようだが、頷いたのでもうあんないたずらはしないだろう。
……それにしても、私にも所有痕を付けたいなんて可愛らしい事を言う。挙句、気持ちが盛り上がって下半身を擦り付けてくるなんて……
早く婚姻を結び、縛り付けたい。
チサトが他の誰にも目を奪われないように。
「隊長、昨日何があったんですか?」
「盗品の件か?」
「それじゃなくて副隊長です。いくら新婚だからって漲り過ぎじゃないですか?」
確かに今日のオルトはかなり漲っている。
……昨夜のアレに煽られたのだろう。
「詳しくは知らないが、おそらく聞かない方が良いと思うぞ」
「本人には絶対聞きませんよ!?」
「なら、距離を取っておけ」
「ですが被害者が……」
「分かった」
隊員に怪我人が出始めているのは困るので訓練に割って入った。
ガキィイィンッ!
「随分調子が良さそうだな」
「まぁな! お前もだろう?」
「そうだな。だが今は隊員に怪我をさせるのは困る」
「盗っ、品のっ! 捜索かっ!」
「そうだ。盗難届けの出ている物はともかく、出ていない物は盗まれた事に気付いていない可能性がある。それらを調べて狙われた理由をはっきりさせなければ町の治安維持に支障を来すだろう」
「っっ!地道なっ、聞き込み、っか!」
「分かっていて人手を減らすな」
カッ!
「くっ! 相変わらずスカしやがって……ハァハァ……」
「後から来たんだ。体力に余裕があるのは当然だろう」
「そう言う事にしといてくれ……」
刃を潰した剣だがそれなりに怪我もする。全体的に隊員達の実力の底上げをしたいところだがどうするべきか。
「隊長、助かりました」
「エルマー、隊員の戦闘力を向上させるために何か良い提案はないか?」
「そうですね、やっぱり闘技大会ですかね? 意中の相手に良いとこ見せられるとなれば気合も入るでしょうし」
「収穫祭のあれか」
「えぇ。でも収穫祭だと他にも見るものがあって必ず見てもらえる保証がありませんから、闘技大会だけを単独で開催して他所からも強い参加者を呼んで……」
エルマーには腹案があるようなので盗品の件が落ち着いたら計画書を提出するように言っておいた。
その後の調べで荷車の持ち主は巻き込まれただけの被害者だった事が分かり、犯人に繋がる手がかりはなかった。
盗難届の出ていたものは持ち主に返したがまだ3分の2が残っている。これをこちらから公開すれば関係の無いものが横領しようと名乗り出る可能性がある。しかも盗難届けは隣町やその先からも出ていた。
範囲を広げるにしてもどうすれば良いのか。
「フィール! これ、見て見て!」
迎えに行くととても嬉しそうな顔で文字の練習に使う黒板を持ってきた。見れば絵が描いてある。
「これはチサトか?」
「そう! クーノが描いたの! 上手でしょ!」
線は拙いが特徴を捉えていてちゃんと誰を描いたのかが分かる。これは使えるのでは?
「その子に頼みたい事があるのだが」
翌日、残った盗品の数だけ黒板を発注し、クーノに「宝物」の絵を描いてもらった。
形に心当たりがなければ微笑ましい子供の絵だし、特徴に覚えがあれば無くした事に気づくだろう。
数日後、更に半数近くが持ち主へと返却された。
「色をつけずに描いて詳細を言えた者が持ち主か。なるほどな」
「で、残りのこれは他の町の物である可能性が高い、と」
「盗品と黒板を持って行っても良いが、半分になったから絵を2つずつにして町を分けるか」
「その方が良さそうだ」
残った品の絵を描いてもらい、隣町とその向こうに運ぶ事になった。念のためうちの領主からツィーゲ伯とグンドルフ侯爵に手紙を書いてもらい、隊員2人を商人の護衛につけて運ばせた。
街道沿いの町で縦に繋がっているから戻るのは4~5日後か。ついでに闘技大会の企画案と協力の呼びかけの手紙も添えてある。
……仕事が早いのは良い事だが、張り切りすぎだろう。だがまぁ、応援してやらなくてはな。
それからは賞金と名誉を目標に日々、真剣に鍛えた。
「……ふくたいちょー、もう一丁お願いします……」
「今日はもう終わりだ。見回り行って来い」
「うぅ……了解です!」
隊員達の相手では物足りない様子のオルトと軽く流して訓練を終了。私もまだまだ鍛えたいのだが、なかなか時間が取れない。
私だとてチサトに良いところを見せたいのは同じなのだが。闘技大会まであと3ヶ月。特別招待枠によろず請負人などと言うふざけた職業を自称するエーギンハルトが参加する事となった。
こいつは2度ほど会ったがふざけた行動とは裏腹にこの国で1、2を争う強さを誇る。よくこんな片田舎の催しに出ようと思ったな。
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