転生神子は『タネを撒く人』

香月ミツほ

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15.山の上の豊かな町

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いつもは3日くらいで次の町に着くんだけど、険しい上り坂が続いてスピードが落ちている。既に馬車で5日目。

「ご不便をおかけして申し訳ありません」
「明日には着くから、もう少し我慢してくれ」
「おれは平気だよ。2人と……、馬は大丈夫?」

2人も大丈夫だし、馬は美味しい草でいつもより元気らしい。あ、トイレ休憩の後、すぐに移動しないのは馬が万能薬を吸い上げた草を食べてるから?

そしておれが元気なのも、2人の白愛液はくあいえきをもらっているからか。

は、恥ずかしい!

……でもそういうものだもんね。



そして、初めて魔獣が出ました。
いるって言ってたよねー、魔獣。

大きなツノの、大きな山羊。
あれ? 山羊じゃないのかなぁ?

よく分からないけど赤い瞳で鼻息荒く、禍々しい空気を纏っている。大きく弧を描く黒い2本のツノ。ベージュの体毛に焦茶色の毛が混じる。

でね、サイズがね。肩の位置がおれの頭より上って普通?

「この魔獣はだいたいこの大きさで、雑食で馬も食べます」
「アルシャーブ、神子様は任せた」

サバールさんが剣を抜いて走り出す。
道があるとは言っても馬車の幅ギリギリなので、馬車に近いと動きにくいのだろう。

でも、馬車の小さな窓からでは、よく見えなかった。

「あ、あの、アルシャーブさん……。ぬ、抜かないの?」
「サバールなら、すぐに終わりますから大丈夫ですよ」

人に戦わせておいて、自分はいやらしいことしてるなんて申し訳ないでしょう!? しかも、危険だから、って山道に入ってからサバールさんがずっと馭者。

長いのか短いのか分からなかったけど、程なくしてサバールさんから倒した事を告げられた。肉が美味しい魔獣だから、捌くために休憩にしようって。

やっと抜いてもらえる!!

いや、気持ちよくて断れないおれが悪いんだけどね。

「サバールさん、の……、飲んで?」
「ありがたい」

ニヤリと笑って吸い付かれ、背面座位で揺すられながら愛(液体)を捧げた。

あれ?
サバールさんの胸の下あたりが光ってる?

「怪我をしたのですか」
「バレたか」
「けが!? だ、大丈夫……?」

足場が悪くて不意を突かれ、肋骨が折れたらしい。この程度の魔獣に手こずるのは恥だ、と隠そうとしたらしい。でも神子の白愛液はくあいえきで完治したので大丈夫だって。



「魔獣と動物はどう違うの?」
「凶暴さですね。動物が邪気を溜め込むと凶暴化して魔獣になります」
「え? じゃあこの魔獣、動物の時もこの大きさ?」
「はい。大きさは変わりません」

何を食べたらあんなに大きくなるんだろう? 小動物とか? ……怖い想像をしてしまった。

山羊肉、美味しかったです。



*******



そこから町まではそれほどかからなかった。

山に寄り添うようにいくつもの家が並ぶ。白い壁とオレンジのとんがり屋根が可愛らしい。

「神子様、ようこそおいで下さいました」
「神子様がご降臨なされたと聞き、到着を待ち侘びておりました」

今度の町の神官長と町長さんは、とても背が高い。ここは他の町から遠いので領主様はいなくて、王様の直轄地扱いだそうです。だから町長さん。身長2メートルくらいの、ひょろりとしたそっくりな2人。

「そっくりだな」
「はい、私たちは同じ実から生まれた双子です」
「この町には多いのですよ」

サバールさんが気になっていた事をさらりと聞いてくれた。そして双子が多いんだ。

やっぱりそれぞれの生命樹の特色があるんだな。

そして山羊の肉をお土産に渡すと、とても感謝された。

「このモンテカブラはこの辺りのボスだったのですが、最近魔獣になってしまいまして、討伐隊を組む相談をしていたところです。これをお1人で倒すとは、さすが月のお方ですね」
「魔獣となってからは人の血を啜るようになりまして、すでに6人も被害に遭っておりました」

それなんてチュパカブラ?
あの大きな山羊が人の血を啜るの!?

「そ、その、ご冥福を……」
「生きておりますので、ご安心ください。血が足りなくて10日ほど起き上がれなくなるだけです」

10日寝込むだけで済むならよかった!!
けど10日も起き上がれないのは割と酷くない? お見舞いに行ってもいいかな?

「それは喜びます。では用意をしてお迎えにあがりますので、まずはお部屋でお休みください」

素直に案内されて部屋で一休みして、半刻ほどで迎えが来た。

神殿の近くに施療院があり、そこに3人入院しているという。あと3人はすでに退院している。

「こちらです」
「ありがとうございます」

病気ではないので3人とも同じ部屋に集められている。そこに年齢にしたら60代~80代の3人が、ベッドの上で虚空を見つめていた。

「この方達は町の外で襲われたのですよね?」
「そうです。冬に向けて忙しいこの時期に、働き盛りの彼らが10日も動けないのは、痛手です」
「働き盛り……、なのですか?」
「彼らは30代ですから」
「えっ!?」

呪いとか、やっぱり病気とか?

「神子様、私達は体液が足りなくなると皆、萎びますよ」
「オレだってそうだ。今は神子様と共にいるから、萎びる事はないだろうがな」

普通なの?
じゃあ、もしかしてキスしたらシャキーンと治る?

好奇心がムクムクと湧き出し、60代に見える人にキスさせてもらった。治療です!!

「んちゅ……、ちゅ、ちゅう……」
「……ん、はっ、はむっ」

効果は劇的に現れた。少し舌を絡めただけで意識を取り戻し、口内を熱烈に蹂躙される。するといつものように身体が光って、30代前半の姿になった。

山で鍛えられたナチュラルな筋肉はワイルドで、褐色の肌に深緑の瞳。まさに男盛り!! 地味めな顔立ちだけど、整っていて優しそうだ。

「あ……、俺は……?」
「あなたは3日前、モンテカプラに血を啜られ、倒れていたところを発見されてこの施療院に運ばれたのです。そして今日到着した神子様がご心配くださり、治療してくれたのです」
「みっ、神子様!?」
「初めまして。あなたの許可も得ずに口づけしたことをお許しください」
「口づけ! いやっ、その、恐縮です!!」

真っ赤になって慌てている。
ちょっとキュンとした。

続いて70代に見える人、80代に見える人を治療した。彼らも最初の人と同じような反応で嬉しくなる。気持ち悪いとか言われなくて良かった。



*******


禊をして夕食をいただき、町の様子を聞く。

この町は小型の山羊を飼い、段々畑で作物を育て、山で狩りをしたり採集したりして暮らしているという。

宝石や岩塩も採れるし、宝石の実と呼ばれるカラフルな指先ほどの硬い実が、磨くと艶が出るので集めてアクセサリーに加工して販売しているらしい。

豊かな町だなぁ。
でも山道が険しいから、昔ながらの素朴な生活を守っているんだって。





ピューーーーピュイピュイピュー……

外から笛のような音が聞こえた。

「なんの音ですか?」
「渡り鳥がきたことを知らせる口笛です。冬の蓄えとして貴重な鳥です。2日後、ここから南に旅立つ時に狩ります」

一斉に飛び立つ時に狩ると、この場所が危険だと記憶されず、また来年もやってくる。

狩りの様子を見せてもらえるようお願いして部屋に戻った。




「お前は飲まなくてもいいんじゃないか?」
「ならば貴方が飲みますか?」
「……いや、注ぐ」

なんの話か分かるかな?
分かるよね。

ずっと馬車の中だったアルシャーブさんは元気が出るおれの白愛液はくあいえきを飲まなくてもいいんじゃないか、とサバールさんが言う。それならサバールさんに飲む方にするかと問えば注ぎたい、つまりおれに入れたいと言う。

そんな訳でサバールさんに抱き抱えられて、アルシャーブさんからご奉仕を受けています。

今日もぐっすり眠れそうです。


────────────────

魔獣はヘラジカサイズのアイベックスをイメージしています。
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