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始まりは断罪の目撃から
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「さて、皆にウィー君の素晴らしさを見てもらった訳だが」
早々にこちらのメインを端に置いたな。
もしかしてどころじゃなく、アーデルハイド殿下はウィー君を見せびらかしに来たんだろう。「盛大にお披露目したい」って言ってたのは聞き流したけど、今がお披露目の機会だとしたらドンと引く。
…もっといい機会設けてあげて。
「うさちゃんラブが全く衰えておられませんわね」
「もふもふしたいわぁ」
「陛下のお言葉と彼らの処遇の発表はついで扱いなのね」
「………どういう状況なの?」
ご令嬢方はアーデルハイド殿下の行動をすんなり受け入れているのに対し、ルーベンス殿下の婚約者として交流があるはずのアイローチェ様が若干慌てている。何故かな?
「アーデルハイド殿下はアイローチェ様の前では「乙女の理想の王子様」を崩したことがないそうよ」
義姉上がすっと耳打ちしてくれた。納得。
俺はウィー君にデロデロな姿を至近距離で見せられたのが出会いだったから「そんなもんか」って思えたけど、普段しっかり王子してる姿しか見てないなら確かに混乱するかもしれない。
ルーベンス殿下も困惑しているところを見ると、完璧王子な兄の姿しか見ていないのかもな。繕うのうますぎだな。ウィー君で崩壊したけど。
「まずはこの場の主役であるべき、マッチェレル学園を卒業する若人たちへ祝詞を。おめでとう」
そうだ。茶番長すぎて忘れてたけど、今卒業パーティ中だった。
「そして、第二王子ルーベンスを筆頭に起こした騒動について。生涯一度であろう晴れの舞台を汚してしまったことを本人達に代わり、謝罪を。申し訳ない」
会場がザワつく。王族のやらかしについてここまではっきりとした謝罪は初めてだ。
貴族ってほら、権威上等主義っていう隠蔽体質じゃん?基本何かあったら「無かったことになりませんかねぇ?」って水面下で交渉が始まるわけよ。
それがやらかしてる最中に、こんなにはっきり「すまんかった」って実兄(しかも親公認)が発するのは異例中の異例だろう。
更に言うと、王族がパーティ等人が集まる場所で謝罪すること自体が記録にもほぼない。過去資料を掘り起こしたら見つかるかもしれないけど、まだ見たことも聞いたこともない。
それくらいとんでもないことだから、全員動揺してもおかしくない。正直俺もビビっている。すげぇのぶっ込んできたな。
アーデルハイド殿下が見ている巻物に何て書いてあるのか気になる。見たいな。アレ。
「あ……兄上…」
ルーベンス殿下が紙みたいに白い顔になってる。一度もぶった事ない父親から「お前間違ってんぞ」ってビンタされる以上の衝撃だろう。気持ちはよくわからんが、同情は(ちょっとだけ)するよ。
「俺が…王族に…相応しくない…と……」
「陛下も私も「我が身を省みること」「王族として恥じぬ行いを」と何度も釘を刺したつもりだったのだけどね。私がこの場に立つことになった事は残念としか言いようがない」
ルーベンス殿下の震える声に、アーデルハイド殿下が本当に残念そうな表情を添えて答える。
我が国の最高権力者が刺した釘が通らないとか、そりゃ俺らの言葉が通じないわけだ。もう少し早く気づいていたら、ダメージ少なくて済んだのにな。
「もう少し早くウィー君に出会えていたら、ルーベンスも救われたろうに」
勿体なかったねー。と、ウィー君と目を合わせて微笑む。キラキラの破壊力は凄まじいけど、出始めていた緊張感が台無しだよ!一気に緩んだよ!
「聖女と節度ある交流するのは良しとしよう」
節度ある、に力を入れたな。
王族を筆頭に、貴族は特定の勢力に力を入れすぎないように幼少期より教育される。表面的には。
家門によってその辺の度合いは違うのだろうが、メロディアス家は俺が聖協会預りになったとはいえ、立場的には中立なので「広く浅く」という付き合い方を教えられた。
まあ我が家はいいとして、王族はパワーバランスに貴族以上に気を配りましょう。って話だ。
だから王子・王女は幼少期に歳の近しい貴族子息を集めて側近選抜戦(パワーバランス、能力、相性等を審査する機会)があるんだよな。
あんなに(俺との時間が削られるからという理由で)渋った兄上の姿を見ておきながら、それでも側近に決めたということは重度のブラコンでも構わないと言わせるものがあったのだろう。流石兄上。
「家の定めた婚約者を無下に扱うことや、家門の力を振りかざす事は認められない」
はい。これも「節度ある行動」に含みます。テストに出すまでもない基礎教養です。
「問題行動があった際、調査機関または第三者を交えての事実確認を行わず一方的に断ずることはあってはならない」
その通りです。冤罪、ダメ!絶対!
このタイミングでアーデルハイド殿下がちらりとこちらを見た。
あ、これは「追い打ちをかけたい?」って聞いてきてますね?
いいでしょう。やろうじゃないか。
すっ、と視線をアリナ嬢に固定する。アリナ嬢がビクッと肩を跳ねさせた。
「お聞きしたいことはいくつかございますが…聖女様、何故お力を示されなかったのですか?」
「な…何?力を示す、って何よ!」
おい、しっかりしろ聖女(仮)
「聖女として召喚された貴女様は、御身に宿りし神の光を人々の安寧のために行使されることを期待されておりました」
ストレートに言うのもアレかな?って儀式風(偏見)な言い回しをしたのだが、よく分かってない顔をされた。
うん、まあそうだろうな。
早々にこちらのメインを端に置いたな。
もしかしてどころじゃなく、アーデルハイド殿下はウィー君を見せびらかしに来たんだろう。「盛大にお披露目したい」って言ってたのは聞き流したけど、今がお披露目の機会だとしたらドンと引く。
…もっといい機会設けてあげて。
「うさちゃんラブが全く衰えておられませんわね」
「もふもふしたいわぁ」
「陛下のお言葉と彼らの処遇の発表はついで扱いなのね」
「………どういう状況なの?」
ご令嬢方はアーデルハイド殿下の行動をすんなり受け入れているのに対し、ルーベンス殿下の婚約者として交流があるはずのアイローチェ様が若干慌てている。何故かな?
「アーデルハイド殿下はアイローチェ様の前では「乙女の理想の王子様」を崩したことがないそうよ」
義姉上がすっと耳打ちしてくれた。納得。
俺はウィー君にデロデロな姿を至近距離で見せられたのが出会いだったから「そんなもんか」って思えたけど、普段しっかり王子してる姿しか見てないなら確かに混乱するかもしれない。
ルーベンス殿下も困惑しているところを見ると、完璧王子な兄の姿しか見ていないのかもな。繕うのうますぎだな。ウィー君で崩壊したけど。
「まずはこの場の主役であるべき、マッチェレル学園を卒業する若人たちへ祝詞を。おめでとう」
そうだ。茶番長すぎて忘れてたけど、今卒業パーティ中だった。
「そして、第二王子ルーベンスを筆頭に起こした騒動について。生涯一度であろう晴れの舞台を汚してしまったことを本人達に代わり、謝罪を。申し訳ない」
会場がザワつく。王族のやらかしについてここまではっきりとした謝罪は初めてだ。
貴族ってほら、権威上等主義っていう隠蔽体質じゃん?基本何かあったら「無かったことになりませんかねぇ?」って水面下で交渉が始まるわけよ。
それがやらかしてる最中に、こんなにはっきり「すまんかった」って実兄(しかも親公認)が発するのは異例中の異例だろう。
更に言うと、王族がパーティ等人が集まる場所で謝罪すること自体が記録にもほぼない。過去資料を掘り起こしたら見つかるかもしれないけど、まだ見たことも聞いたこともない。
それくらいとんでもないことだから、全員動揺してもおかしくない。正直俺もビビっている。すげぇのぶっ込んできたな。
アーデルハイド殿下が見ている巻物に何て書いてあるのか気になる。見たいな。アレ。
「あ……兄上…」
ルーベンス殿下が紙みたいに白い顔になってる。一度もぶった事ない父親から「お前間違ってんぞ」ってビンタされる以上の衝撃だろう。気持ちはよくわからんが、同情は(ちょっとだけ)するよ。
「俺が…王族に…相応しくない…と……」
「陛下も私も「我が身を省みること」「王族として恥じぬ行いを」と何度も釘を刺したつもりだったのだけどね。私がこの場に立つことになった事は残念としか言いようがない」
ルーベンス殿下の震える声に、アーデルハイド殿下が本当に残念そうな表情を添えて答える。
我が国の最高権力者が刺した釘が通らないとか、そりゃ俺らの言葉が通じないわけだ。もう少し早く気づいていたら、ダメージ少なくて済んだのにな。
「もう少し早くウィー君に出会えていたら、ルーベンスも救われたろうに」
勿体なかったねー。と、ウィー君と目を合わせて微笑む。キラキラの破壊力は凄まじいけど、出始めていた緊張感が台無しだよ!一気に緩んだよ!
「聖女と節度ある交流するのは良しとしよう」
節度ある、に力を入れたな。
王族を筆頭に、貴族は特定の勢力に力を入れすぎないように幼少期より教育される。表面的には。
家門によってその辺の度合いは違うのだろうが、メロディアス家は俺が聖協会預りになったとはいえ、立場的には中立なので「広く浅く」という付き合い方を教えられた。
まあ我が家はいいとして、王族はパワーバランスに貴族以上に気を配りましょう。って話だ。
だから王子・王女は幼少期に歳の近しい貴族子息を集めて側近選抜戦(パワーバランス、能力、相性等を審査する機会)があるんだよな。
あんなに(俺との時間が削られるからという理由で)渋った兄上の姿を見ておきながら、それでも側近に決めたということは重度のブラコンでも構わないと言わせるものがあったのだろう。流石兄上。
「家の定めた婚約者を無下に扱うことや、家門の力を振りかざす事は認められない」
はい。これも「節度ある行動」に含みます。テストに出すまでもない基礎教養です。
「問題行動があった際、調査機関または第三者を交えての事実確認を行わず一方的に断ずることはあってはならない」
その通りです。冤罪、ダメ!絶対!
このタイミングでアーデルハイド殿下がちらりとこちらを見た。
あ、これは「追い打ちをかけたい?」って聞いてきてますね?
いいでしょう。やろうじゃないか。
すっ、と視線をアリナ嬢に固定する。アリナ嬢がビクッと肩を跳ねさせた。
「お聞きしたいことはいくつかございますが…聖女様、何故お力を示されなかったのですか?」
「な…何?力を示す、って何よ!」
おい、しっかりしろ聖女(仮)
「聖女として召喚された貴女様は、御身に宿りし神の光を人々の安寧のために行使されることを期待されておりました」
ストレートに言うのもアレかな?って儀式風(偏見)な言い回しをしたのだが、よく分かってない顔をされた。
うん、まあそうだろうな。
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