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愛だけで生きていけると思うなよ
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あの既視感しかない状況になってしまったのは、俺のせいではないが訳がある。
新学期が始まり、初等部2年の学習が本格的に始めようか、という頃の事だ。
「ファルム宛にお城からお手紙ですよ」
ラキアータ聖協会の一室。ノッスと共に箱に詰められた「御子」宛の手紙の仕分け作業をしていると、ルフ様が一通の手紙を持って来た。
ルフ様は前回の聖女騒動で随分とメンタルをやられたらしく「綺麗な花には棘があるんです」と軽い人間不信になってしまった。言っていることはよくわからないが、お仕事はきちんとしてくれるのは助かります。ゆっくり癒していきましょうね。
「ありがとうございます。王城からちゃんとした手紙が来るなんて珍しいですね」
俺は手紙を受け取り、封を切る前に封筒を観察する。
アーデルハイド殿下からの呼び出しは基本使者からの口頭(明日だの今からだの急なことか多いため)だから、アーデルハイド殿下からではないのだろう。王太子は忙しいらしいし、暫く俺で遊ぶ暇ないんじゃないかな?
だとするとアイローチェ様からだろうか。いや、あの方も「お返事を直ぐに頂戴」という方だから、ルフ様が手紙だけ持ってきたことで線が消える。
じゃあ、誰だ?
「開けないの?」
「何か仕掛けがあるかも…」
「え…城からの手紙に罠とかあるの…?」
ノッスがドンと引いている。でも、何があるかわからないのが貴族の世界。用心に越したことはない。
結局剃刀等の仕掛けも何もない、普通のお手紙だった訳なんだが。
手紙を受け取った6日後、学園の制服(自分の)を着た俺は王城の一室で王弟殿下と対面していた。
散々警戒した手紙の主は王弟殿下だった。
会ったことない天上人から「会いたい」って手紙来るとか、普通は思わないでしょ?
来るとしてもアーデルハイド殿下経由だと思ったんだよ。完全にノーマークだった。
「突然呼び出してすまなかったね。楽にしてくれていいよ」
無理です。初対面の王族相手に楽にはできません。アーデルハイド殿下の時は、状況が特殊だっただけです。
出された紅茶の味もよくわからないです…いいやつのはずなのに、もったいない。
理由も聞かされずに社長室に通された平社員の気分です。前世ではそんな状況にならなかったから、想像でしかないけど。
俺だけがピリッと緊張する中、ハロルド殿下(名前で呼んで欲しい、と言われた)
「君がアーデルハイドと上手くやっていると聞いてね。あの子はなかなかに曲者だから、大変だろう?」
そんな始まって早々にどちらも泥沼みたいな質問やめてもらっていいですか?
「はは…ウィー君が間に入ってくれていますからね」
乾いた言い訳しかできませんよ。
ここで「そうですね」と肯定すれば下手すると王太子への不敬と取られるし、「そんなことないですよ」と否定すれば「大変じゃないならこれもできる?」と無茶振りされる未来が見えるし…もうウィー君の素晴らしいもふもふに頼るしかない。
「うん。ウィー君は可愛いよね」
「もふもふは素晴らしいですから」
「でも、アーデルハイドが厄介なのは変わらないよねぇ」
「ははは。その件はこの口からは申し上げられません」
誤魔化しは効かなかった様だ。流石王族。
アーデルハイド殿下に直に「私は面倒臭いからね」と言われたら「そうですね」と即レスできるんだけど…本人のいない所で、しかも初対面のハロルド殿下にラフに返答するのは違うと思うんだ。
だってこれ、本題じゃないからね。無茶振りの前座でしょ?マジ怖い!
「初対面の王族に、警戒しながらも上手く立ち回ろうと画策できるのは良い事だ」
「ありがとう、ございます?」
なんだ?褒められたのか?部屋に入った時から笑顔が崩れないから読めなくて怖いんだよ。ただでさえ空気読むの苦手なのに。
「将来有望な君に、お願いしたい事があってね」
あ、これは「子どもにしては落ち着いてる」と思われてるパターンか。今気づいたぞ。見た目は子ども、頭脳はおじさんってやつだ。前世持ちの特権だな。
「お願い、ですか。私のできる範囲であることを願うばかりですね」
無茶振りは止めてください、と切に願う俺を見ながら、ハロルド殿下は笑顔を崩すことなく言った。
「簡単な事さ。私の娘レニフェルの話を聞いて、悩みを解決してやって欲しい」
……女子の悩みを解決?めちゃくちゃ無茶振りじゃないですか!やだー!
「わ、私よりもアイローチェ様の方が適任、では?」
「そのアイローチェからの推薦でね。君なら自信を持って推せる、と言うのだよ」
お断りしようとしたら、即潰された!アイローチェ様、何してくれてるんですか!
「叔父上と会ったんだってね。変わった方だったろう?」
「何方と比べたらよろしいのでしょう?」
ハロルド殿下との面接を辞したすぐ後、俺はアーデルハイド殿下(withウィー君)に捕まっていた。足元、ふらついてませんよね?
結局レニフェル様の話を聞く会は開催となった。笑顔で押し切られた。どうやって断れというんだあんなの。
そしてアーデルハイド殿下、会って早々に答えにくい質問をぶつけないで頂きたい。それは血筋ですか?よく似ておられますね。
「レニフェル?うん。あの姉妹はね、話し始めると止まらなくなるから、自分の用件を先に伝えて速やかに離れるのがおすすめの付き合い方だよ。餌を与えたら更に長引くから、日常会話とかしちゃダメだよ」
「思いっきり相反してますが…」
ハロルド殿下との会話を掻い摘んで話した後、レニフェル様の人となりを聞いたらとんでもない答えが返ってきた。
依頼は「話を聞いてやって欲しい」なんですよ、アーデルハイド殿下…
「…ウィー君、連れてく?」
思いっきり「行きたくない」と表情に出てしまったのだろう。アーデルハイド殿下が渋々提案してきた。
ご自身が付き添うと言わない辺り、察するものがあります。
「ありがとうございます!」
手離したくないオーラ全開だったが、そこは気づかなかった振りをして、俺は最強の緩衝材ウィー君をゲットした。
これで勝つるかは判らないが、心のバランスは保たれそうだ。
新学期が始まり、初等部2年の学習が本格的に始めようか、という頃の事だ。
「ファルム宛にお城からお手紙ですよ」
ラキアータ聖協会の一室。ノッスと共に箱に詰められた「御子」宛の手紙の仕分け作業をしていると、ルフ様が一通の手紙を持って来た。
ルフ様は前回の聖女騒動で随分とメンタルをやられたらしく「綺麗な花には棘があるんです」と軽い人間不信になってしまった。言っていることはよくわからないが、お仕事はきちんとしてくれるのは助かります。ゆっくり癒していきましょうね。
「ありがとうございます。王城からちゃんとした手紙が来るなんて珍しいですね」
俺は手紙を受け取り、封を切る前に封筒を観察する。
アーデルハイド殿下からの呼び出しは基本使者からの口頭(明日だの今からだの急なことか多いため)だから、アーデルハイド殿下からではないのだろう。王太子は忙しいらしいし、暫く俺で遊ぶ暇ないんじゃないかな?
だとするとアイローチェ様からだろうか。いや、あの方も「お返事を直ぐに頂戴」という方だから、ルフ様が手紙だけ持ってきたことで線が消える。
じゃあ、誰だ?
「開けないの?」
「何か仕掛けがあるかも…」
「え…城からの手紙に罠とかあるの…?」
ノッスがドンと引いている。でも、何があるかわからないのが貴族の世界。用心に越したことはない。
結局剃刀等の仕掛けも何もない、普通のお手紙だった訳なんだが。
手紙を受け取った6日後、学園の制服(自分の)を着た俺は王城の一室で王弟殿下と対面していた。
散々警戒した手紙の主は王弟殿下だった。
会ったことない天上人から「会いたい」って手紙来るとか、普通は思わないでしょ?
来るとしてもアーデルハイド殿下経由だと思ったんだよ。完全にノーマークだった。
「突然呼び出してすまなかったね。楽にしてくれていいよ」
無理です。初対面の王族相手に楽にはできません。アーデルハイド殿下の時は、状況が特殊だっただけです。
出された紅茶の味もよくわからないです…いいやつのはずなのに、もったいない。
理由も聞かされずに社長室に通された平社員の気分です。前世ではそんな状況にならなかったから、想像でしかないけど。
俺だけがピリッと緊張する中、ハロルド殿下(名前で呼んで欲しい、と言われた)
「君がアーデルハイドと上手くやっていると聞いてね。あの子はなかなかに曲者だから、大変だろう?」
そんな始まって早々にどちらも泥沼みたいな質問やめてもらっていいですか?
「はは…ウィー君が間に入ってくれていますからね」
乾いた言い訳しかできませんよ。
ここで「そうですね」と肯定すれば下手すると王太子への不敬と取られるし、「そんなことないですよ」と否定すれば「大変じゃないならこれもできる?」と無茶振りされる未来が見えるし…もうウィー君の素晴らしいもふもふに頼るしかない。
「うん。ウィー君は可愛いよね」
「もふもふは素晴らしいですから」
「でも、アーデルハイドが厄介なのは変わらないよねぇ」
「ははは。その件はこの口からは申し上げられません」
誤魔化しは効かなかった様だ。流石王族。
アーデルハイド殿下に直に「私は面倒臭いからね」と言われたら「そうですね」と即レスできるんだけど…本人のいない所で、しかも初対面のハロルド殿下にラフに返答するのは違うと思うんだ。
だってこれ、本題じゃないからね。無茶振りの前座でしょ?マジ怖い!
「初対面の王族に、警戒しながらも上手く立ち回ろうと画策できるのは良い事だ」
「ありがとう、ございます?」
なんだ?褒められたのか?部屋に入った時から笑顔が崩れないから読めなくて怖いんだよ。ただでさえ空気読むの苦手なのに。
「将来有望な君に、お願いしたい事があってね」
あ、これは「子どもにしては落ち着いてる」と思われてるパターンか。今気づいたぞ。見た目は子ども、頭脳はおじさんってやつだ。前世持ちの特権だな。
「お願い、ですか。私のできる範囲であることを願うばかりですね」
無茶振りは止めてください、と切に願う俺を見ながら、ハロルド殿下は笑顔を崩すことなく言った。
「簡単な事さ。私の娘レニフェルの話を聞いて、悩みを解決してやって欲しい」
……女子の悩みを解決?めちゃくちゃ無茶振りじゃないですか!やだー!
「わ、私よりもアイローチェ様の方が適任、では?」
「そのアイローチェからの推薦でね。君なら自信を持って推せる、と言うのだよ」
お断りしようとしたら、即潰された!アイローチェ様、何してくれてるんですか!
「叔父上と会ったんだってね。変わった方だったろう?」
「何方と比べたらよろしいのでしょう?」
ハロルド殿下との面接を辞したすぐ後、俺はアーデルハイド殿下(withウィー君)に捕まっていた。足元、ふらついてませんよね?
結局レニフェル様の話を聞く会は開催となった。笑顔で押し切られた。どうやって断れというんだあんなの。
そしてアーデルハイド殿下、会って早々に答えにくい質問をぶつけないで頂きたい。それは血筋ですか?よく似ておられますね。
「レニフェル?うん。あの姉妹はね、話し始めると止まらなくなるから、自分の用件を先に伝えて速やかに離れるのがおすすめの付き合い方だよ。餌を与えたら更に長引くから、日常会話とかしちゃダメだよ」
「思いっきり相反してますが…」
ハロルド殿下との会話を掻い摘んで話した後、レニフェル様の人となりを聞いたらとんでもない答えが返ってきた。
依頼は「話を聞いてやって欲しい」なんですよ、アーデルハイド殿下…
「…ウィー君、連れてく?」
思いっきり「行きたくない」と表情に出てしまったのだろう。アーデルハイド殿下が渋々提案してきた。
ご自身が付き添うと言わない辺り、察するものがあります。
「ありがとうございます!」
手離したくないオーラ全開だったが、そこは気づかなかった振りをして、俺は最強の緩衝材ウィー君をゲットした。
これで勝つるかは判らないが、心のバランスは保たれそうだ。
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