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報告と昇格
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すべてが終わって頭が冷えてくると、俺の目の前には、スノウが瀕死の重症で横たわっていた。
俺は今までの経験から理解できた、これは数十分以内に治療しないと助からないということを。
「楽しかったか?」
俺は返答は期待していなかったが、そう問いかける。意外にも、返事が返ってきた。
「…楽しかった…ですよ…」
「驚いたな、その傷でま喋れるのか」
「とてもそのような顔には見えませんね…」
スノウは息絶え絶えで、今にも死にそうな重症なのに優しく微笑んだ。
「生きたくないのか?」
「死にたいわけでは…ありません。ただ、満足して…いる…だけです」
スノウは、息を整えてから、最後の力を振り絞るように、語りだした。
「私は昔から今のような状態になっていました。何かを切りたくて切りたくて仕方がない、でも、いくら切っても満たされない、私の欲求はどんどん溜まっていきました」
そして、俺の方を見ると。
「でも、あなたのおかげでスッキリしました。あなたと剣を交えている時は欲求なんて消えていって、ただ純粋にあなたに勝ちたいという感情で心が一杯になることができました」
俺は何も言うことができなかった。ただ目の前でもうすぐ死ぬであろう悲劇の少女の言葉に耳を傾けることしかできなかったのだ。
「私は最期にお礼を言いたい、あなたは私の空っぽを埋めてくれました。
感謝しています。ごほっ、ごほっ……もうお別れのようですね」
「ああ、そのよ…」
俺が、そのようだな、と言う終わる前にスノウの体がどこからか出現した黒い球体に包まれた。
「ゴスペル……」
スノウはそう言うと、黒い球と共に消えていった。
「空間転移か…」
どうやら俺と同じ空間属性の人間がスノウをどこかに連れ去ってしまったようだ。
行き先は十中八九、王都にある死の団の本部だろうが。
「ああ、疲れた…」
みすみす逃したのはアレだが、後ろから迫ってくる奴らに俺がスノウを倒したところを見られるのは面倒だから、良かったのかもしれないな。
「フォルン、無事か!」
ほら、来た。
「ああ、問題ない。見ての通り手酷くやられたがな」
「こりゃひどい、急いで治療しねえと!」
「そうしましょう」
アレクとカゲミヤが皆に提案し、俺たちは任務をここまでにして、学園に帰ることにした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
理事長室で俺たちは今回のことを余すことなく報告した。魔獣が町に向かおうとしたため撃退したこと、森の中に謎の少女がいたことも全てだ。
「そう、大変だったのね…」
それらを聞いたマーリンズは、そうこぼした。
「まずは感謝するわ、この街を救ってくれて」
「当然のことをしたまでです」
ヴィランズがそう答えると、マーリンが話を続ける。
「あなたたちのことを上に伝えて、昇格に対する審議をしておくわね」
その言葉を聞いて、ヴィランズたちがとても喜んでいる。
実を言うと、Aクラスよりも上のSクラスというものがあり、そのクラスに入り、かつ卒業まで持ち込めた場合、王国騎士団に推薦で入ることができるのだ、ヴィランズたちは、それを狙っているのだろう。
俺たちは一番下のクラスなので、上がったとしても、DかCだろうが、それでもEクラスよりはマシだろう。
「どうした?浮かない顔して」
俺はさっきからずっと黙っているアレクたちに問いかける。
「いや、俺たちが上がれるのか不安でな…」
「私も同じです…」
なるほど、そういうことか。
「大丈夫だ。今回、危険度Dの魔獣を何体も倒して、おまけに証人もいる、お前らが昇格しない訳はないさ」
「そ、そうだよな、考えすぎだった」
「心配しすぎでした」
俺たちが問題を笑い飛ばしていると、マーリンが昇格の有無は、後日連絡するとして、俺たちは解散になった。
「ああ、グレイスくん、君だけ残って」
その言葉を聞いて、俺に対してヴィランズは睨んできて、レイは訝しげな視線を、フラムは訳がわからないといったふうの顔をしている。(アレクたちは、いつものこと、という顔をしていた。)
俺はそれらに、気にせず行け、と言ってその場を治め、
俺は一人、理事長室に残った。
俺は今までの経験から理解できた、これは数十分以内に治療しないと助からないということを。
「楽しかったか?」
俺は返答は期待していなかったが、そう問いかける。意外にも、返事が返ってきた。
「…楽しかった…ですよ…」
「驚いたな、その傷でま喋れるのか」
「とてもそのような顔には見えませんね…」
スノウは息絶え絶えで、今にも死にそうな重症なのに優しく微笑んだ。
「生きたくないのか?」
「死にたいわけでは…ありません。ただ、満足して…いる…だけです」
スノウは、息を整えてから、最後の力を振り絞るように、語りだした。
「私は昔から今のような状態になっていました。何かを切りたくて切りたくて仕方がない、でも、いくら切っても満たされない、私の欲求はどんどん溜まっていきました」
そして、俺の方を見ると。
「でも、あなたのおかげでスッキリしました。あなたと剣を交えている時は欲求なんて消えていって、ただ純粋にあなたに勝ちたいという感情で心が一杯になることができました」
俺は何も言うことができなかった。ただ目の前でもうすぐ死ぬであろう悲劇の少女の言葉に耳を傾けることしかできなかったのだ。
「私は最期にお礼を言いたい、あなたは私の空っぽを埋めてくれました。
感謝しています。ごほっ、ごほっ……もうお別れのようですね」
「ああ、そのよ…」
俺が、そのようだな、と言う終わる前にスノウの体がどこからか出現した黒い球体に包まれた。
「ゴスペル……」
スノウはそう言うと、黒い球と共に消えていった。
「空間転移か…」
どうやら俺と同じ空間属性の人間がスノウをどこかに連れ去ってしまったようだ。
行き先は十中八九、王都にある死の団の本部だろうが。
「ああ、疲れた…」
みすみす逃したのはアレだが、後ろから迫ってくる奴らに俺がスノウを倒したところを見られるのは面倒だから、良かったのかもしれないな。
「フォルン、無事か!」
ほら、来た。
「ああ、問題ない。見ての通り手酷くやられたがな」
「こりゃひどい、急いで治療しねえと!」
「そうしましょう」
アレクとカゲミヤが皆に提案し、俺たちは任務をここまでにして、学園に帰ることにした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
理事長室で俺たちは今回のことを余すことなく報告した。魔獣が町に向かおうとしたため撃退したこと、森の中に謎の少女がいたことも全てだ。
「そう、大変だったのね…」
それらを聞いたマーリンズは、そうこぼした。
「まずは感謝するわ、この街を救ってくれて」
「当然のことをしたまでです」
ヴィランズがそう答えると、マーリンが話を続ける。
「あなたたちのことを上に伝えて、昇格に対する審議をしておくわね」
その言葉を聞いて、ヴィランズたちがとても喜んでいる。
実を言うと、Aクラスよりも上のSクラスというものがあり、そのクラスに入り、かつ卒業まで持ち込めた場合、王国騎士団に推薦で入ることができるのだ、ヴィランズたちは、それを狙っているのだろう。
俺たちは一番下のクラスなので、上がったとしても、DかCだろうが、それでもEクラスよりはマシだろう。
「どうした?浮かない顔して」
俺はさっきからずっと黙っているアレクたちに問いかける。
「いや、俺たちが上がれるのか不安でな…」
「私も同じです…」
なるほど、そういうことか。
「大丈夫だ。今回、危険度Dの魔獣を何体も倒して、おまけに証人もいる、お前らが昇格しない訳はないさ」
「そ、そうだよな、考えすぎだった」
「心配しすぎでした」
俺たちが問題を笑い飛ばしていると、マーリンが昇格の有無は、後日連絡するとして、俺たちは解散になった。
「ああ、グレイスくん、君だけ残って」
その言葉を聞いて、俺に対してヴィランズは睨んできて、レイは訝しげな視線を、フラムは訳がわからないといったふうの顔をしている。(アレクたちは、いつものこと、という顔をしていた。)
俺はそれらに、気にせず行け、と言ってその場を治め、
俺は一人、理事長室に残った。
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