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ラストケース 人柱:被害状況『山賊』
4-5、二度とお会いする機会がありませんように
しおりを挟む「……ッ!? き、貴様、何をした!」
そう叫ぶマルクダーマ神は、私の力に気が付いたようだ。
こちらを睨む彼に向かって、右手でハサミの形を作ってチョキチョキと動かしてみせる。
「ご縁を切らせていただきました。こういう時のために、私がこの仕事を任せられているのですから」
異世界と異世界との行き来をする為には、互いの世界を繋ぐ門を潜る必要がある。
しかし相手も神である故、幾ら物理的にこちらの世界に来られないように門を閉じても、力技でこじ開けてしまう輩もいる。
そんな時に便利なのが、私の権能の一つである『縁切り』だ。
マルクダーマとの縁を断ち切る事によって、向こうがこちらの世界を感知する事が出来なくなる。門を探す事が難しくなるのだ。
これこそが異世界対策課の最終手段であり、私が課長を任された一番の理由でもある。
「私はあなたのような唯一神ではないので、全知全能の力はありません。ですが、私の得意分野の範疇であるのならば負ける気はしません」
万能ではないけれど、逆に言えば専門分野に特化しているという事でもある。
──だから、幾らあちらが再び縁を結ぼうとしても無駄だ。
そう言って、見守くんの斜め後ろあたりに立っていた茶髪の少女神──協力者であるプリンセス鬼小折さんへと視線を向ける。
「お願いします」
「任せて!」
笑顔で応じた鬼小折さんは、『空想』の権能で私達とマルクダーマ側との間に巨大な扉を創ってみせた。
直接縁を切ったのに加え、世界と世界を繋ぐ場所にもう一つ絶対に開けられない門を創る。
念には念を入れて、徹底的にマルクダーマとの関係を断ち切るのだ。
さあ、別れの挨拶だ。
私は異世界対策課の仲間達と共に、綺麗な礼をする。
「それでは、さようなら。──二度とお会いする機会がありませんように」
私の言葉が終わるのとほぼ同時に、目の前の扉が動き始めた。
隙間からマルクダーマ側が慌ててこちらに攻撃か何かを仕掛けようとしているのが見えるが、もう遅い。
ゴゴゴと大きな音を立てて閉じたドアから、カチャリと鍵が掛かったような音がした。
──それで終わりだった。
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