AT LONG LAST

伊崎夢玖

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第二章

side蒼 ㊵

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一縷と同居し始めていくつかの季節が廻り、冬になった。
年の瀬も近い師走。
一縷は年末の追い込みとかで毎日残業で忙しいみたい。
僕の方は毎日研究で、相変わらず帰れない日々を過ごしていた。
そんな十二月の半ば。
一縷は営業課の面々と、僕は会社全体の忘年会が開催されると通達があった。
正直行くつもりなかったんだけど、当日になって会社のトップが大勢出席するとかで行かざるを得なくなってしまった。
一縷の方はきっと一次会だけで帰ってくるだろうから、久々にゆっくり一緒に過ごせる休日が迎えられるはずだった。
(なんでこんな時に会社のトップとか出てくるんだよ…)
グチグチ言っても始まらない。
とりあえず一旦帰宅してドレスコードに合った服装に替えなくては…。
帰宅してシャワーを浴び、スーツに腕を通す。
フォーマルな服装ってどうも息が詰まる感じがして好きなれない。
会社の忘年会の会場は老舗ホテルの大宴会場で行われるらしい。
スーツだけでも息が詰まるのに、更に老舗ホテルって…。
会社は僕を窒息させたいのだろうか。
タクシーを拾って、会場まで行く。
タクシーに乗っていると、携帯のバイブが鳴った。
通知を見ると、一縷からだった。

【俺の方は一次会だけで帰るから、ゆっくりして来いよ。家で待ってる。 一縷】

簡潔なメールだった。
それだけなのに、さっきまで嫌で仕方なかった気持ちが和らいだ感じがした。
到着すると、既に部長がいた。
「遅くなってしまってすみません」
『いやいや、急に会社のトップが大勢出席とか言われたら困るよね』
「そうですね」
『本当は君は欠席だったのに、出席させることになってすまないね』
「いえいえ、大丈夫です。予定は空いていたので」
『せめて、おいしい物が出てくるはずだから心行くまで堪能してくれ』
「ありがとうございます」
出てくる料理はどれも美味しかった。
入れ替わり立ち代わりで会社のトップ達がやって来て、なかなか解放されそうになかった。
(これじゃ帰るのもっと遅くなるかもしれないなぁ…)
そう思って一縷にメールしておいた。

【今頃楽しく飲んでる頃かな?僕の方は社長やらCEOやらトップの面々が来ていて、なかなか帰れそうにないよ。適当な所で切り上げて、なるべく早く帰るね。日付を跨ぐ前に帰りたいとは思ってる。また帰る時に電話します。 蒼】
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