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第二章
side一縷 ㊺
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蒼のいる部屋に入ると、蒼は毛布を被ってこちらを見ようともしなかった。
「あお?」
これだけしか声をかけていないのに蒼はすごくビクついていた。
「いち、やっぱり僕はいちと一緒にいるべきじゃないよ…」
「どうして?」
「僕は飯田に体を弄ばれたから汚れてしまったの」
「それで?」
「この体に触れていいのはいちだけだと思ってたからもう…」
「それはあおの考えだよな?」
「そうだけど…」
「んじゃぁ、次は俺の考え言ってもいいか?」
「……うん」
「確かにあおは飯田とセックスしてしまった。それは事実だ」
「………」
「だからってあおの体が汚れたと俺は思ってない」
「………」
「むしろ俺の方が汚れているくらいだしな」
「…どういうこと?いちは汚れてない…」
「いいや。それはあおが知らないだけで俺はすごく汚れている」
「………」
「あおがΩって判ってからあおのこと性的に見てる奴多かったの知ってるか?」
「…知らない」
「だよな。全員俺がボコボコにしてたから」
「…えっ」
「殴り過ぎて相手を流血、病院送りにして警察に呼ばれたこともあるくらいだしな」
「そんなの知らない」
「だって、あおには絶対に教えるなって周りに忠告していたから」
「どうしてそこまでしてくれるの?」
「それだけあおのことを愛してるってことだよ」
「いち…」
「だから飯田に抱かれたあおだとしても俺はそれを含めてあおを愛してるよ」
「………」
「あおの方こそ、こんな血で汚れた俺の側にいていいのか?」
「いちの側にいたい。いちじゃなきゃダメなんだっ!」
蒼は大粒の涙を零しながら抱きついてきた。
「ごめんなさい。ごめんなさい…」
「何に謝ってるんだ?」
「僕の不注意で今回こんなことになったから…」
「それはそうだな。俺が近くにいないとあおは危なっかしいから」
「そうだね。ずっと近くでいてよ、いち」
「死んでも離してやるもんか」
力いっぱい蒼を抱きしめてやった。
キスは――――しなかった。
きっと蒼は性的な行動を今は恐怖に感じるだろう。
飯田の話を始めた途端、体の震えが酷くなったくらいだから。
蒼の心の傷が完全に回復するまではキス以上の行動は控えた方がよさそうだ。
忘年会の記憶を取り戻してから蒼は以前のように起きていられるようになった。
主治医の見解では、精神的なストレスが大幅に軽減したことによるのではないかと言われた。
それから、蒼は会社を辞めた。
蒼一人養うくらいどうってことはない。
それよりも、蒼が辛い思いをするくらいなら外に出ずにやれることをやっててもらいたかった。
今は家事全般をやってもらっている。
家に帰ったら蒼が待っててくれる。
そう思うだけで仕事がすこぶる捗っていることは蒼には内緒だ。
「あお?」
これだけしか声をかけていないのに蒼はすごくビクついていた。
「いち、やっぱり僕はいちと一緒にいるべきじゃないよ…」
「どうして?」
「僕は飯田に体を弄ばれたから汚れてしまったの」
「それで?」
「この体に触れていいのはいちだけだと思ってたからもう…」
「それはあおの考えだよな?」
「そうだけど…」
「んじゃぁ、次は俺の考え言ってもいいか?」
「……うん」
「確かにあおは飯田とセックスしてしまった。それは事実だ」
「………」
「だからってあおの体が汚れたと俺は思ってない」
「………」
「むしろ俺の方が汚れているくらいだしな」
「…どういうこと?いちは汚れてない…」
「いいや。それはあおが知らないだけで俺はすごく汚れている」
「………」
「あおがΩって判ってからあおのこと性的に見てる奴多かったの知ってるか?」
「…知らない」
「だよな。全員俺がボコボコにしてたから」
「…えっ」
「殴り過ぎて相手を流血、病院送りにして警察に呼ばれたこともあるくらいだしな」
「そんなの知らない」
「だって、あおには絶対に教えるなって周りに忠告していたから」
「どうしてそこまでしてくれるの?」
「それだけあおのことを愛してるってことだよ」
「いち…」
「だから飯田に抱かれたあおだとしても俺はそれを含めてあおを愛してるよ」
「………」
「あおの方こそ、こんな血で汚れた俺の側にいていいのか?」
「いちの側にいたい。いちじゃなきゃダメなんだっ!」
蒼は大粒の涙を零しながら抱きついてきた。
「ごめんなさい。ごめんなさい…」
「何に謝ってるんだ?」
「僕の不注意で今回こんなことになったから…」
「それはそうだな。俺が近くにいないとあおは危なっかしいから」
「そうだね。ずっと近くでいてよ、いち」
「死んでも離してやるもんか」
力いっぱい蒼を抱きしめてやった。
キスは――――しなかった。
きっと蒼は性的な行動を今は恐怖に感じるだろう。
飯田の話を始めた途端、体の震えが酷くなったくらいだから。
蒼の心の傷が完全に回復するまではキス以上の行動は控えた方がよさそうだ。
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それよりも、蒼が辛い思いをするくらいなら外に出ずにやれることをやっててもらいたかった。
今は家事全般をやってもらっている。
家に帰ったら蒼が待っててくれる。
そう思うだけで仕事がすこぶる捗っていることは蒼には内緒だ。
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