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1章 転生勇者は追放される
第九話:背信の対価
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「プランBだ! 急げ!」
ゼノスの鋭い号令が響いた直後、アルスは耳を疑う光景を目にした。
勇者候補生たちがデビルワームへ突撃すると思いきや、彼らは一斉にゼノスの周囲へと固まったのだ。ゼノスの手には、紫の光を放つ『帰還魔法石』が握られていた。
「——なっ!?」
アルスが声を上げるより早く、ゼノスの手が横に伸びた。そのターゲットは、アルスの隣で硬直していたリィンだった。
「……アルス君、悪く思わないでくれたまえ。私はリィン君を保護しなければならないのでね」
「待て、ゼノス! 貴様ッ何を!!」
アルスが手を伸ばすが、一瞬遅い。
魔法石が砕け、眩い転移の光がリィンとゼノス、そして冷笑を浮かべる勇者候補生たちを包み込む。
「アルスさん!!」
リィンの悲痛な叫びが、光の渦の中に消えた。
次の瞬間、そこに残されたのは、続々と地響きと土煙を上げて地中から躍り出るデビルワームの群れと、一人取り残されたアルスだけだった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「……あの、野郎……ッ!!」
(裏切られた!)その思いが一瞬脳裏に浮かんだが、実際には初めから仕向けられていたのだと悟る。
激昂がアルスの理性を焼き切る。だが、目前の怪物は待ってはくれない。
アルスは反射的に重剣を抜き魔力を込め、最前列で突進してくるデビルワームの顎を叩き上げた。
ズゥゥゥンッ! という衝撃が腕を伝う。しかし、リィンのブーストがない今、黒鉄の剣は本来の輝きを失い、ただの重い鉄塊に感じる。
その時、風に舞った一枚の紙切れがアルスの足元に落ちた。
ゼノスが去り際、意図的に落としていったノートの切れ端だ。
『君の体質は、一体を呼べば終わるような生易しいものではないはずだ。幸運を祈る』
「ちぃ!」
一つ、二つ、三つ……。
砂煙の中から、デビルワームの巨大な頭部が次々と姿を現した。
一体ですらキングクラスに匹敵する災厄が、アルスの「呼び寄せ」の体質に引きずられ、文字通りの『群れ』となって現れたのだ。
ゼノスは初めからこれを予見していたのだ。この道を通ればこうなる事を。
「……やってやるさ」
アルスはセリフと共に唾を吐き捨てた。
リィンを奪われ、化け物の巣の中に生贄として放り出された。かつてギルドを追放された時以上の、底冷えするような絶望と怒りが、逆に彼の感覚を研ぎ澄ませていく。
「ギギィィィッ!!」
三体同時に襲いかかる。アルスは重剣を横に薙ぎ、一体の皮膚を裂くが、その隙に別の個体が背後から大鎌のような牙を突き立てる。
魔力の供給源を失った今、この数のキングクラスを正面から相手にするのは自殺行為だ。
(ここで死ぬわけにはいかない……。リィンを、あの眼鏡の野郎から引きずり戻すまでは!)
アルスは一瞬の隙を突き、死角にある岩場へと跳んだ。
背後では、大地が文字通り捕食され、地形が変わり果てていく。
「リィン、少し待っててくれ……」
彼は自分に言い聞かせるように独りごちた。
ゼノスの鋭い号令が響いた直後、アルスは耳を疑う光景を目にした。
勇者候補生たちがデビルワームへ突撃すると思いきや、彼らは一斉にゼノスの周囲へと固まったのだ。ゼノスの手には、紫の光を放つ『帰還魔法石』が握られていた。
「——なっ!?」
アルスが声を上げるより早く、ゼノスの手が横に伸びた。そのターゲットは、アルスの隣で硬直していたリィンだった。
「……アルス君、悪く思わないでくれたまえ。私はリィン君を保護しなければならないのでね」
「待て、ゼノス! 貴様ッ何を!!」
アルスが手を伸ばすが、一瞬遅い。
魔法石が砕け、眩い転移の光がリィンとゼノス、そして冷笑を浮かべる勇者候補生たちを包み込む。
「アルスさん!!」
リィンの悲痛な叫びが、光の渦の中に消えた。
次の瞬間、そこに残されたのは、続々と地響きと土煙を上げて地中から躍り出るデビルワームの群れと、一人取り残されたアルスだけだった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「……あの、野郎……ッ!!」
(裏切られた!)その思いが一瞬脳裏に浮かんだが、実際には初めから仕向けられていたのだと悟る。
激昂がアルスの理性を焼き切る。だが、目前の怪物は待ってはくれない。
アルスは反射的に重剣を抜き魔力を込め、最前列で突進してくるデビルワームの顎を叩き上げた。
ズゥゥゥンッ! という衝撃が腕を伝う。しかし、リィンのブーストがない今、黒鉄の剣は本来の輝きを失い、ただの重い鉄塊に感じる。
その時、風に舞った一枚の紙切れがアルスの足元に落ちた。
ゼノスが去り際、意図的に落としていったノートの切れ端だ。
『君の体質は、一体を呼べば終わるような生易しいものではないはずだ。幸運を祈る』
「ちぃ!」
一つ、二つ、三つ……。
砂煙の中から、デビルワームの巨大な頭部が次々と姿を現した。
一体ですらキングクラスに匹敵する災厄が、アルスの「呼び寄せ」の体質に引きずられ、文字通りの『群れ』となって現れたのだ。
ゼノスは初めからこれを予見していたのだ。この道を通ればこうなる事を。
「……やってやるさ」
アルスはセリフと共に唾を吐き捨てた。
リィンを奪われ、化け物の巣の中に生贄として放り出された。かつてギルドを追放された時以上の、底冷えするような絶望と怒りが、逆に彼の感覚を研ぎ澄ませていく。
「ギギィィィッ!!」
三体同時に襲いかかる。アルスは重剣を横に薙ぎ、一体の皮膚を裂くが、その隙に別の個体が背後から大鎌のような牙を突き立てる。
魔力の供給源を失った今、この数のキングクラスを正面から相手にするのは自殺行為だ。
(ここで死ぬわけにはいかない……。リィンを、あの眼鏡の野郎から引きずり戻すまでは!)
アルスは一瞬の隙を突き、死角にある岩場へと跳んだ。
背後では、大地が文字通り捕食され、地形が変わり果てていく。
「リィン、少し待っててくれ……」
彼は自分に言い聞かせるように独りごちた。
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