神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎

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 その後、僕は商業ギルトに出向いて建物の修繕やら、執事や使用人の手配をした。

「やぁ、アリアさんこんにちわ」 
「あら!軍師様!」

 既にここまで僕が軍師に就任したという話が浸透していた。

「ニースで良いですよ」

 僕はなんとなく照れてそういう。

「ええ~そうですか」

 アリアは少し残念そうに言った。僕を軍師と呼ぶことを楽しみにしていたのだろうか。

「それで今日は仕事を依頼しに来たのだ」
「どういった事でしょう?」

 アリアに石工職人組合と人材派遣組合を紹介してもらう。

「では、後程お屋敷の方に向かうように手配いたしますね」
「あ、来てくれるのか」
「ええ、勿論」

 何か急に自分が偉くなった気分がして不思議だ。

 それだけで話は終わりアリアに別れを告げて隣の冒険者ギルドに入る。

「リジーさんこんにちわ」
「ニース様!」

 リジーは急に恥ずかしそうに顔を両手で覆って赤面していた。

「どうかしました?」
「この前の事、凄く反省してます……」

 悪酔いして僕に絡んだ事を言っているのだと感じたが、別に僕は気にしていなかった。

「良いのですよ、それにリジーさんの別の面が知れて面白かったですし」
「ええ~~!やめて!お願いですから忘れてください!」

 リジーは更に赤面して小さくなっていた。それが妙に可愛らしく僕の胸を打つ。

「はは、もう忘れました、ところで今日は仕事を依頼しに来たのですが」
「はは……本当にごめんなさいね……それでお仕事というのは?」

 僕は信頼できる諜報員を雇う事にしたのだ。

「そういう事でしたら、あたしの弟が居ますけど」
「え!?」
「Aランクのスカウトで腕もそこそこ、あたしの命令には逆らいませんので信頼もできます」
「ははは、それは有難い」
「それでは後程お屋敷の方に面接に行かせますね」

 本人の同意無しにリジーは決定事項のようにして言う。

 リジーさんは何気におっかない人なのではないかと思い直した。

「それじゃ後程」

 僕は両ギルドで用事を済ますと一旦屋敷に戻り、自室からバルコニーに出て王宮を眺めた。

 それで一つ忘れていた事を思い出して目の前の王宮に向かう。



「王子、僕引っ越しました」
「おお?」
「あれ、そこのスタンリーさんの屋敷を貰い受けてたのですよ」
「それは良い!今度遊びに行っても良いかい?」
「勿論」

 王子は僕の引っ越しを喜んでくれた。

 それでその後、屋敷に戻るとセスが挨拶にやってきた。

「お引越しされたと聞いて参上しました」
「やぁ、どうぞ」

 入口でかたくなっているセスに言い中に招く。

「今後は王宮との連絡も密にしたいとおもうので、僕の所からスカウトが通う事もあると思う」
「それは良いですね」

 一緒に3階のバルコニーから王宮を眺めながら話す。

「今はまだ使用人すらいないけど、じきに体制が整ったらまた連絡しますね」
「恐れ入ります」

「それでなのだけど、この屋敷の地下が王宮と繋がっているのをセスさんは知ってますか?」 
「え!そうなのですか?」

 セスは本気で驚いていた。

「僕が調べた限りでは繋がっているようだよ、まぁ今は壁があるので行き来は出来ないけれど」
「……なるほど、スタンリー邸には秘密があると以前に聞いてはおりましたが」
「はは、今後開通するような事になったらまた知らせるよ」
「ありがとうございます」

 セスは仕事中ですので、と言って直ぐに王宮に帰っていってしまう。

 するとセスと入れ違いでカッツ達がやってきて大きな荷物を馬車から降ろし始めた。

 愈々新生活が始まるのだなとそれで実感が湧いてきた。



 翌日、早速商業ギルドから組合員が複数訊ねてきて1階の応接室で面談を行う。

「初めましてニース様、我々は人材派遣組合の者です」

 改めてそこで自己紹介をして5人と面接をする。
 そこで握手の時に全員を鑑定して、帝国とのつながりがない事を確認した。

 皆それぞれ特技が違っていて、料理や掃除が得意な人や庭の植木の職人も居た。
 初めは3人程度と考えていたけどその5人を全員雇うことにする。

「良かった、我々全員を雇用していただけるとは!ありがとうございます」

 執事担当のトーマスが言う。

 その後、屋敷の中を一通り案内しながらそれぞれの持ち場、担当を順に割り振って行く。
 細かいルールなどはトーマスに一任して僕は彼等に支度金を手渡した。

「ではあとは宜しく頼みますね」
「はい!ニース様!」

 それで彼等も一度ギルドに帰っていった。

「お、来た来た」

 バルコニーから眺めていると門の所にリジーの弟のサムが馬で来ているのが見える。
 門に書いてあるスタンリー邸の銅板の表札を見て首を傾げていた。

「おーい」

「ニース様ですか?」 

 バルコニーから手を振るとサムが答える。

「中にどうぞ」

 大声で言うと馬に乗ってやって来た。

 下に降りると開けっ放しの扉の所でサムは帽子をとり、立っている。

「やぁサムさんだね?どうぞ中へ」
「初めまして、サムです姉に言われて来ました」 

 サムはリジーが怖いのだろうか、子供っぽく挨拶をした。実年齢は僕より少し年下のようだ。

「お姉さんから聞いてると思うけど、この屋敷での隠密をして欲しいのだ」
「はい……」

 お茶もない応接室でサムと面接をする。姉からは何も聞かされていないようだった。

「やってくれますか?」
「はい、軍師様の為であれば」

 僕にはそれは姉の為と聞こえていた。

 それで即決し、彼の仮住まいの小部屋を決めて支度金をあげた。

「ありがとうございます、では後程」

 そういうとサムはギルドに戻っていった。

 最後に、夕方になると一仕事を終えた石工職人が5人程やってきて面談となる。

 そこで屋敷の中を案内して、雨漏れ個所の修繕やら設計を依頼し、表札を作りかえる事を頼んだ。

 彼等はベテランの職人であるらしく、図面などを見なくてもすぐに構造を理解して「出来ます」と答えた。

 前金として10金を手渡して依頼が完了する。


「ふぅ……」

 これで今日の仕事は一通り終わり、安堵して職人を見送った。

「お疲れ様ですね」

 振り向くと時折顔を見せていたミニーがそう言った。

「ははは、あとで皆で酒場にでも行こうかな?」
「はい」

 その後、僕はエアホースでミニーと飛び、元のアパートの鍵を不動産屋に返してその足ですぐそばの酒場に向かった。
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