アイテムマイスター物語〜ゴミスキルで能無し認定された主人公はパーティーから追放され好き勝手に生きる事に決めました

すもも太郎

文字の大きさ
12 / 52

真の目的

しおりを挟む
 魔人城への道のりは、それ自体険しいものであった。

 途中からは断崖を通るので馬車は捨て、馬を降りていかなければならない。

 元々は有力貴族の所有する砦であるため険しい立地であるが、今は誰も整備をしないためアクセスする道のりすら荒れ放題だ。

 所々崖が崩壊していて馬ですら通れない。

「こんな所まできてもまだ感じるか」

 そのしつこい監視の目がどこまで付いてくるのかラセルには興味があった。

 指輪を外してしまえば感じることは無くなるので、眠るときはある意味安心できる。

 しかし、装着すると途端に監視されている事を感じるのでそれがストレスになっている。

 その監視の限度や範囲を知ることが今回の目的の一つでもある。

 それが解決の糸口になれば……とラセルは考えていたのだ。

 もう一つの目的はアイテム収集である。

 最高難度のクエストともなれば低階層の雑魚からでも結構なお宝をドロップ出来るからだ。

「それが何であれ、今の僕には宝になるに違いない」

 ろくな装備を持っていない今のラセルには金かアイテムのどちらかが必要だが。

「両方手に入れようというのは虫が良い話だろうか」

 だが、指輪の力で陽気になっている今のラセルにはそのどちらも手に入るものとして目に映っていた。

「少なくとも1000金は稼がないと」

 一応そのラインが彼の目標であった。



 何とか馬を引いて魔人城にたどり着くとそこは異様な雰囲気だ。

 空は晴天であるのに城の周りだけ暗く淀んでいる。

 馬の手綱を手前の柱に括り付けて荒れ果てた魔人城に踏み入ると、途端に濃厚な魔瘴気に包まれるが、今のラセルには何とも無かった。

 手で触れるのでは無いかと思われるほどの濃厚な魔瘴気は、体力のない町人なら数分で卒倒するレベルである。

 だが、ラセルの周りは薄っすらと光輝いていて、魔瘴気を身体から遠ざけ明暗のコントラストを作っていた。

 ザザザ……ガシャガシャガシャガシャ……

「早速出たね」

 城に踏み入れて数歩でアンデッドナイトがワラワラと走ってくる。

 バシュバシュバシュ!

 ラセルはニコニコしながらギルマスから借りた炎の剣で薙ぎ払った。 

 アンデッド達は一撃で吹き飛んで城の奥へ燃えながら消えていく。

 その剣はアンデッドナイトにヒットする毎に火炎を発して付加効果を発揮していた。

 アンデッド達は吹き飛びながら大きな松明の様に燃えて真っ暗な城の中を照らしてくれる。


 バシュバシュバシュバシュバシュバシュバシュ……

 ドスン……ドスン……ドスドスドス!

 無限に続くかのようなアンデッドナイトの群れの最後にはアンデッドオーガが登場した。

 炎の剣を振り回すラセル目掛けて巨体で地響きを鳴らし迫り、巨大な石斧を振り降ろし襲い掛かる。

 以前のラセルならその姿に畏怖を覚えて身構えるのだが、今の彼はリラックスしていた。

 ブオン!

 ガキィ!

 アンデッドオーガが振り降ろす石斧を剣で受け止めて楽々と振り払う。

 身長差は3倍ほどもあるオーガの石斧を武技も使わず素振りのみで弾き飛ばした。

「ハイ終わり」

 ドヒュ!ザン!

 少し勢いを付けてオーガを縦に切り裂くと、オーガの残骸は燃えながら消し飛んでいった。

「なんだ、簡単じゃないか」

 まるで散歩がてら小石を蹴飛ばすような気楽さでオーガを吹き飛ばし、彼の中で何かが変わった。

 これまでも白の牙でアンデッドオーガとやり合った経験からして、自分が異常に強くなっていると実感する……以前ならタイマンでは相当に苦戦したはずである。

 素振りで楽勝という体感はラセルから物怖じするという感覚を失わせるに十分であった。

 ……今の自分なら魔人すら余裕で倒せるのでは無いか?


 そんな不遜とも言える自信がラセルを包み始める。

「おっと、魔石魔石」

 モンスターの襲撃が一段落したのを確認して松明に火を移し、落ちている魔石を集めた。

「大量大量、ははは」

 低階層で既にかなりの量の魔石を手に入れてラセルは嬉しくなり独りごちる。

「おっと……これは、オーガハートではないか」

 それは強化アイテムとして使える魔石に似たレアドロップ品である。

 主に武器や防具などに装着してショック耐性を高める事ができる宝石だ。

 統計上は数百体に一つドロップするかどうかのレアアイテムだ。

 鍛冶屋に持ち込み装備に付け加える事で、とても高値で売れる。

 素材としても高価だ。



 ふと気がつくと、いつも感じていた監視の目の感覚は消滅していた。

「ふ~ん、なるほどね」

 それで一つ判ったことは、あくまでもこれは人為的な監視魔法の類いであるという事だ。

「魔族からの監視ならここで途切れることも無いだろうし……僕を見ているのはこの国の誰かさんてことだ」

 監視の目が無くなると思うとさらに気分は晴れ晴れとしてくる。

 陰惨な魔人城でここまでニコニコ出来るのはラセルだけであった。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...