アイテムマイスター物語〜ゴミスキルで能無し認定された主人公はパーティーから追放され好き勝手に生きる事に決めました

すもも太郎

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最強のFランク

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 その後、ラセル達はギルドに連れて行かれ祝福を受けることになった。

 それというのも、ギルドから大勢のAランク冒険者が魔境に飲まれて戻らぬ人となっていたからだ。

 今のギルドには結果的に魔境に入れなかったBランク冒険者ばかりが残っていた。

 その魔境を打ち壊して解決したラセル達はギルドの英雄に祭り上げられてしまう。

「おめでとう!そして有難う!ラセル様!」

 帝国の中核都市の一つアーテムの東ギルド同盟から感謝状と記念品、金貨を貰い最後に皆の前に出て演説をする羽目になってしまっていた。

 ギルドの建物はとても大きなもので、およそ千人の聴衆が集まっていたが、建物の入り口の外にも見物人が溢れていた。


「これより、英雄ラセル様の口よりこの度の討伐のご報告を頂きたいと思います!みなさま盛大な拍手をお願いします!」

 司会の言葉で拍手喝さいとなる。

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

 「良いぞーー!勇者最高~~~!」

 「ラセル様~~、きゃーステキーー!」

 大観衆から黄色い声と拍手が沸き起こり騒然となるなか、ラセルは急ごしらえの演題にあがり柄にもなく緊張していた。

「え~~、何ていうか~~僕のために本日は有難うございます」

「ラセル様、武勇伝!武勇伝ですよ!」

 司会がラセルに武勇伝を催促する。

「あ、はい、えーとですね、魔境内部にいたデーモンとその亜種を20体ほど切り飛ばして……最後にゲルと名乗るダークエルフを追い詰めたのですが……」

「それで!それで!」

「逃げられました、ごめんなさい……」

「お~~~!お~~~!」

「デーモン20体だって!」

「ダークエルフだってよ!」

「ゲルっていえば、伝説のあれか?」

「はは、まさかな……」

 ラセルの口から次々ととんでもない名前が飛びだして、それでもゲルの名前は聴衆にインパクトを与えたようだ。

「デーモンなんてAランクでも厳しいよな!?」

「20体なんて流石にちょっと盛りすぎなのでは……」

「でもよ、伝説のゲルとやりあったのならそれもあながち嘘とも……」

「あのゲルならな」

 会場はラセルの言葉に大騒ぎになる。

「えー、ラセル殿は外国からいらした冒険者とのお話ですが~~さぞ高ランクなのでしょう?」

 司会の男がラセルを持ち上げようとして余計なことを訊いてきた。

「ご期待に添えず申し訳ありませんが、僕はFランクです……」

 ザワザワザワザワザワ………

 会場はラセルの言葉がいまいち良くわからずにザワついていた。

「サブジョブのFランクの重戦士です……」

「ええええ!サブだって!!」

「嘘ぉおおお!」

「Sだと言って!」

「SSでも驚かねえぞ!」

「いやまて、祖国では一回りしてSの次がFなのでは?」

 会場は大騒ぎになってしまった。

 すでに伝説のダークエルフのゲルの事は
観衆の脳裏から消え去った。

「いやいや、ご冗談が上手いですな!思わぬドッキリでみなびっくり大喜びです!」

「あ……ど、ドッキリですよ!本当はSランクです!」

 面倒くさくなったラセルは司会の言葉にのってSにしておこうと思った。

「あはは、な~んだ良かった!そりゃそうよ!」

「流石!Sランク冒険者!」

「ラ・セ・ル」

「ラ・セ・ル」

「ラ・セ・ル」

 ラセルコールに既視感を覚えつつ、ラセルは観衆に手を振って答えた。

 ……この前もこんなことがあったな。

 その後、お開きとなるはずであったがギルドに酒を持ち込んだ古参のギルメンに囲まれて宴会が始まってしまう。

「勇者様は酒も強えな!!」

 酔っ払った面々から、ラセルはしこたま酒を飲まされていたが相変わらず殆ど酔わなかった。

 周りが酔潰れるなか、一人の男がラセルのテーブルにやってきた。

「貴方に少しお話を聞かせて頂きたいのですが」

「構いませんよ」

「ここではチョット……」

 男はギルドの中ではし難い話だという。

 それでミレーネと共に男の後をついてギルドを出る。

 そこには帝国の王室の紋章が入った大型の馬車が停めてあり、中には入れという事だった。

 馬車の内部はゴージャスの一言で、美しい真っ赤なドレープの生地で覆われ、アチコチにゴールドの装飾が施されてた。

 広い車内の対面の席には、高級軍人のような服装の男女が座っていた。


「どのようなお話でしょうか?」

「お越し頂き有難うございます、こちらは副将軍のミラン様で、隣は副官のサリーです」

「どうぞ宜しく」

 二人が会釈をする姿はとても礼儀正しく感じて、ラセルは好感をもった。

「ラセルです」

「早速ですが、冒険者タグを拝見させて頂いて宜しいでしょうか?」

「はい」

 ラセルはサブジョブのFランクの青銅のタグプレートを胸から取り出して見せる。

「やはり……」

「失礼ですが、あなたをスキャンニングさせて頂いたのですがうまく行かなくて確認させて頂きました」

「そうですか、僕はFランクなのです」

「それは……驚嘆に価します、ですが今回伺ったのはゲルについてのお話です」

「ええ、出会ったダークエルフは確かに自分をゲルであると言っておりました」

「ふむ……それが真実であれば少し厄介なことになりますので一度帝宮のほうまでお越し頂いて宜しいですか?」

「……それは遠いのでしょうか?」

「物理的には遠いですが、ゲートを使いますからここからでも直ぐに着きますよ」

「それは凄いですね……ならば……どうする?」

 ラセルは隣のミレーネに訊いてみた。

「はい、私はラセル様についていきます」

「では決まりですな……これからで?」

「お願いします」

 その、馬のない馬車は魔法動力で自動的に滑らかに動き出した。

 暫く進むと帝国の印の入った大きな建物に入り、内部に設置された「ゲート」へそのまま入っていった。

 ブーーーン……

 鈍い反響音がすると周りの風景は瞬間に変わり、いつの間にか自動馬車は広大な庭園のなかにいた。

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