追放されたおっさんは最強の精霊使いでした

すもも太郎

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精霊巡りは欠かせない

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俺はこの頃、楽園で朝起きてミューと南の島の爽やかな潮騒を聴きながら朝食をとってお茶を飲み、マッタリしてから王宮に出向く事が習慣になっていた。


 王宮というのは大体どこかに開かずの間という部屋がある。大抵の場合は何か事故があったり、単純に扉の鍵を紛失したりと言う事で使用しなくなった部屋の事なのだが、俺とミューはその部屋を転移ゲートでの移動先に使っていた。


 転移してからワンアクションで全土感知で人の気配が無い事を確認し部屋を出て、土魔法で扉の内鍵を閉める。単純な事だったが、これは誰にも教えていないので王ですら2人がどうやって王宮に出入りしているのかを知らない。そして俺たちは神出鬼没の大魔法使いという事になっていた。


 その朝も謁見の間に行くと王が2人を待っていて、満面の笑みを浮かべて挨拶をしてくれる。


 「おはよう、アキ殿、ミュー殿」

 「おはようございます」

 「おはよう」


 「本日も変わりありませんか?」

 「特には、じゃが1つだけお知らせしなければならない事があるのじゃ」


 「どんなことでしょう?」

 「先日、この国に滞在している剣聖のアギト殿と神仙と言われるブラーフという方が王宮にみえられての」


 「剣聖に神仙ですか‥‥‥」

 「そのお2人とも、アキ殿とミュー殿に会いたいと言われるのじゃ」


 「それは、すこし考えさせてもらいたいですね」

 「勿論じゃ、ワシからは貴殿等に会わせる約束などはしておらぬのだが、ただ一つだけ。次回の砦防衛の時に見学を許してあるのじゃ」


 「なるほど、それは一向に構いません」

 「ほほ、それはありがたい。ワシからは本日は以上じゃ」


 「その剣聖と神仙について少し教えてもらえませんか?」


 王は、2人について簡単に紹介してくれた。剣聖のアギトは流浪の修剣士で地無双と言われる剣の達人、かつて猿魔獣を撃退したほどの人類最強の剣士だという。そして神仙のブラーフは推定年齢200歳を超える半伝説の人物で、常は大陸の遥か西方にある天門山に住んでいると言われているのだが、先日弟子の夜鷹5人衆を従えてやって来たという。



 「それは何時か会える日が楽しみですね‥‥‥ところで以前お願いしてあった、砦強化計画と同盟への作戦参加の依頼は進んで居ますか?」

 「勿論進んで居るとも、大丈夫じゃ」


 「それは良かった、では我々も今日はこれで」

 「また、明日来ますわ」


 俺とミューがサヨナラを言うと、王はニコニコとして2人を見送った。


 最近の王はずっとニコニコとしていた。それはアキとミューが無敵の強さで魔獣を斃たおし、国内外での国王の評価がうなぎ上りだからだ。同盟諸国の関係者が足しげくやって来ては王に謁見を求め、そして剣聖と伝説の神仙までがやって来た。その2人が王宮にやってきたという事実が更に国王の求心力を高めていたのだ。


 つい最近まで帝国に服従しようとしていた敗北主義の弱小国家が急に掌を返して王国になびいた。だが、王は彼らですら鷹揚にして同盟への再参加を認めた。それが更に国王の名声を高めて大陸の西側では既にアルハンドレ3世は稀代の名君と呼ばれるようにさえなっていた。


 「何もかもあのお2人のおかげじゃ」


 王はその日、伝記専門の文官を呼びつけ2人の事を詳細に記録させた。2人の伝説を後世に永遠に語り継がせたいという決意の現れである。







 俺とミューは最近は王宮に出向いて朝の挨拶をした後に東のアンダーク砦に転移して、砦周辺の精霊をさがしては挨拶をして回っていた。


 この地に精霊気が満ちているのは単純にここの精霊達のおかげであり、これまで間接的にお世話になっているのだ。そしてこれからもお世話になるのであいさつ回りは欠かせない。


 毎朝転移を繰り返し、滝に住んでいる水の精霊、山々に居る土の精霊、旅をしている風の精霊達に次々と挨拶をしていく。初めて彼らに会った時には、風の精霊を連れている2人に皆一様に驚いていた。精霊が見える人すら殆どいないのに、風の精霊をお供として旅をしている人間などと言うものは初めてみたという事なのだ。


 山々を巡り、砦を中心にして1つの国がすっぽりと入る位の広さを歩き、飛んで精霊に挨拶をしていく。すると大抵の場合はお土産をどっさりと持たせてくれるのだ。一日の散歩がてらの精霊巡りを終えて楽園に帰る頃には持ちきれないほどの山の幸、川の幸でいっぱいだった。自然の精霊気に満ちたそれらはとても美味しくて、それだけでも満ち足りた日々を過ごしていた。


 そんなわけで最近は風の精霊の2人も前以上に元気いっぱいだ。特に俺の風君は大喜びでいう。


 「僕はアキと旅が出来て最高だよ!」

 「うん、俺も君と旅が出来てうれしい」


 「あちこちの精霊達と仲良くなれるなんて、アキはやっぱり特別なんだと思うよ」

 「ほんとほんと、でもさー風君はアキに頼り過ぎじゃない?」

 「ほ、本当は僕だってもっとアキの役に立ちたいんだもんよ」

 「ほんとう?私なんていつもミューちゃんの役に立ってもんね~」


 とミューの風っ子も交じってくる。

 俺とミューはそれを面白がって眺めていた。この2人はずっと変わらず可愛らしい。


 「大丈夫、風君もすごく役立ってくれてるしいつも感謝してるんだよ」

 「ほらほら~、アキに感謝されてるんだぞ~」

 「う、羨ましくなんかないんだからね」


 などといつものように夫婦漫才が始ってしまう。本当に仲のいい2人なのだ。


 「2人とも凄く可愛いよ、大好き」


 とミューが2人とも褒める。この関係がずっとつづきますようにと祈って、ミューの肩を抱きしめた。


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