47 / 52
精霊巡りは欠かせない
しおりを挟む
俺はこの頃、楽園で朝起きてミューと南の島の爽やかな潮騒を聴きながら朝食をとってお茶を飲み、マッタリしてから王宮に出向く事が習慣になっていた。
王宮というのは大体どこかに開かずの間という部屋がある。大抵の場合は何か事故があったり、単純に扉の鍵を紛失したりと言う事で使用しなくなった部屋の事なのだが、俺とミューはその部屋を転移ゲートでの移動先に使っていた。
転移してからワンアクションで全土感知で人の気配が無い事を確認し部屋を出て、土魔法で扉の内鍵を閉める。単純な事だったが、これは誰にも教えていないので王ですら2人がどうやって王宮に出入りしているのかを知らない。そして俺たちは神出鬼没の大魔法使いという事になっていた。
その朝も謁見の間に行くと王が2人を待っていて、満面の笑みを浮かべて挨拶をしてくれる。
「おはよう、アキ殿、ミュー殿」
「おはようございます」
「おはよう」
「本日も変わりありませんか?」
「特には、じゃが1つだけお知らせしなければならない事があるのじゃ」
「どんなことでしょう?」
「先日、この国に滞在している剣聖のアギト殿と神仙と言われるブラーフという方が王宮にみえられての」
「剣聖に神仙ですか‥‥‥」
「そのお2人とも、アキ殿とミュー殿に会いたいと言われるのじゃ」
「それは、すこし考えさせてもらいたいですね」
「勿論じゃ、ワシからは貴殿等に会わせる約束などはしておらぬのだが、ただ一つだけ。次回の砦防衛の時に見学を許してあるのじゃ」
「なるほど、それは一向に構いません」
「ほほ、それはありがたい。ワシからは本日は以上じゃ」
「その剣聖と神仙について少し教えてもらえませんか?」
王は、2人について簡単に紹介してくれた。剣聖のアギトは流浪の修剣士で地無双と言われる剣の達人、かつて猿魔獣を撃退したほどの人類最強の剣士だという。そして神仙のブラーフは推定年齢200歳を超える半伝説の人物で、常は大陸の遥か西方にある天門山に住んでいると言われているのだが、先日弟子の夜鷹5人衆を従えてやって来たという。
「それは何時か会える日が楽しみですね‥‥‥ところで以前お願いしてあった、砦強化計画と同盟への作戦参加の依頼は進んで居ますか?」
「勿論進んで居るとも、大丈夫じゃ」
「それは良かった、では我々も今日はこれで」
「また、明日来ますわ」
俺とミューがサヨナラを言うと、王はニコニコとして2人を見送った。
最近の王はずっとニコニコとしていた。それはアキとミューが無敵の強さで魔獣を斃たおし、国内外での国王の評価がうなぎ上りだからだ。同盟諸国の関係者が足しげくやって来ては王に謁見を求め、そして剣聖と伝説の神仙までがやって来た。その2人が王宮にやってきたという事実が更に国王の求心力を高めていたのだ。
つい最近まで帝国に服従しようとしていた敗北主義の弱小国家が急に掌を返して王国になびいた。だが、王は彼らですら鷹揚にして同盟への再参加を認めた。それが更に国王の名声を高めて大陸の西側では既にアルハンドレ3世は稀代の名君と呼ばれるようにさえなっていた。
「何もかもあのお2人のおかげじゃ」
王はその日、伝記専門の文官を呼びつけ2人の事を詳細に記録させた。2人の伝説を後世に永遠に語り継がせたいという決意の現れである。
・
・
・
俺とミューは最近は王宮に出向いて朝の挨拶をした後に東のアンダーク砦に転移して、砦周辺の精霊をさがしては挨拶をして回っていた。
この地に精霊気が満ちているのは単純にここの精霊達のおかげであり、これまで間接的にお世話になっているのだ。そしてこれからもお世話になるのであいさつ回りは欠かせない。
毎朝転移を繰り返し、滝に住んでいる水の精霊、山々に居る土の精霊、旅をしている風の精霊達に次々と挨拶をしていく。初めて彼らに会った時には、風の精霊を連れている2人に皆一様に驚いていた。精霊が見える人すら殆どいないのに、風の精霊をお供として旅をしている人間などと言うものは初めてみたという事なのだ。
山々を巡り、砦を中心にして1つの国がすっぽりと入る位の広さを歩き、飛んで精霊に挨拶をしていく。すると大抵の場合はお土産をどっさりと持たせてくれるのだ。一日の散歩がてらの精霊巡りを終えて楽園に帰る頃には持ちきれないほどの山の幸、川の幸でいっぱいだった。自然の精霊気に満ちたそれらはとても美味しくて、それだけでも満ち足りた日々を過ごしていた。
そんなわけで最近は風の精霊の2人も前以上に元気いっぱいだ。特に俺の風君は大喜びでいう。
「僕はアキと旅が出来て最高だよ!」
「うん、俺も君と旅が出来てうれしい」
「あちこちの精霊達と仲良くなれるなんて、アキはやっぱり特別なんだと思うよ」
「ほんとほんと、でもさー風君はアキに頼り過ぎじゃない?」
「ほ、本当は僕だってもっとアキの役に立ちたいんだもんよ」
「ほんとう?私なんていつもミューちゃんの役に立ってもんね~」
とミューの風っ子も交じってくる。
俺とミューはそれを面白がって眺めていた。この2人はずっと変わらず可愛らしい。
「大丈夫、風君もすごく役立ってくれてるしいつも感謝してるんだよ」
「ほらほら~、アキに感謝されてるんだぞ~」
「う、羨ましくなんかないんだからね」
などといつものように夫婦漫才が始ってしまう。本当に仲のいい2人なのだ。
「2人とも凄く可愛いよ、大好き」
とミューが2人とも褒める。この関係がずっとつづきますようにと祈って、ミューの肩を抱きしめた。
王宮というのは大体どこかに開かずの間という部屋がある。大抵の場合は何か事故があったり、単純に扉の鍵を紛失したりと言う事で使用しなくなった部屋の事なのだが、俺とミューはその部屋を転移ゲートでの移動先に使っていた。
転移してからワンアクションで全土感知で人の気配が無い事を確認し部屋を出て、土魔法で扉の内鍵を閉める。単純な事だったが、これは誰にも教えていないので王ですら2人がどうやって王宮に出入りしているのかを知らない。そして俺たちは神出鬼没の大魔法使いという事になっていた。
その朝も謁見の間に行くと王が2人を待っていて、満面の笑みを浮かべて挨拶をしてくれる。
「おはよう、アキ殿、ミュー殿」
「おはようございます」
「おはよう」
「本日も変わりありませんか?」
「特には、じゃが1つだけお知らせしなければならない事があるのじゃ」
「どんなことでしょう?」
「先日、この国に滞在している剣聖のアギト殿と神仙と言われるブラーフという方が王宮にみえられての」
「剣聖に神仙ですか‥‥‥」
「そのお2人とも、アキ殿とミュー殿に会いたいと言われるのじゃ」
「それは、すこし考えさせてもらいたいですね」
「勿論じゃ、ワシからは貴殿等に会わせる約束などはしておらぬのだが、ただ一つだけ。次回の砦防衛の時に見学を許してあるのじゃ」
「なるほど、それは一向に構いません」
「ほほ、それはありがたい。ワシからは本日は以上じゃ」
「その剣聖と神仙について少し教えてもらえませんか?」
王は、2人について簡単に紹介してくれた。剣聖のアギトは流浪の修剣士で地無双と言われる剣の達人、かつて猿魔獣を撃退したほどの人類最強の剣士だという。そして神仙のブラーフは推定年齢200歳を超える半伝説の人物で、常は大陸の遥か西方にある天門山に住んでいると言われているのだが、先日弟子の夜鷹5人衆を従えてやって来たという。
「それは何時か会える日が楽しみですね‥‥‥ところで以前お願いしてあった、砦強化計画と同盟への作戦参加の依頼は進んで居ますか?」
「勿論進んで居るとも、大丈夫じゃ」
「それは良かった、では我々も今日はこれで」
「また、明日来ますわ」
俺とミューがサヨナラを言うと、王はニコニコとして2人を見送った。
最近の王はずっとニコニコとしていた。それはアキとミューが無敵の強さで魔獣を斃たおし、国内外での国王の評価がうなぎ上りだからだ。同盟諸国の関係者が足しげくやって来ては王に謁見を求め、そして剣聖と伝説の神仙までがやって来た。その2人が王宮にやってきたという事実が更に国王の求心力を高めていたのだ。
つい最近まで帝国に服従しようとしていた敗北主義の弱小国家が急に掌を返して王国になびいた。だが、王は彼らですら鷹揚にして同盟への再参加を認めた。それが更に国王の名声を高めて大陸の西側では既にアルハンドレ3世は稀代の名君と呼ばれるようにさえなっていた。
「何もかもあのお2人のおかげじゃ」
王はその日、伝記専門の文官を呼びつけ2人の事を詳細に記録させた。2人の伝説を後世に永遠に語り継がせたいという決意の現れである。
・
・
・
俺とミューは最近は王宮に出向いて朝の挨拶をした後に東のアンダーク砦に転移して、砦周辺の精霊をさがしては挨拶をして回っていた。
この地に精霊気が満ちているのは単純にここの精霊達のおかげであり、これまで間接的にお世話になっているのだ。そしてこれからもお世話になるのであいさつ回りは欠かせない。
毎朝転移を繰り返し、滝に住んでいる水の精霊、山々に居る土の精霊、旅をしている風の精霊達に次々と挨拶をしていく。初めて彼らに会った時には、風の精霊を連れている2人に皆一様に驚いていた。精霊が見える人すら殆どいないのに、風の精霊をお供として旅をしている人間などと言うものは初めてみたという事なのだ。
山々を巡り、砦を中心にして1つの国がすっぽりと入る位の広さを歩き、飛んで精霊に挨拶をしていく。すると大抵の場合はお土産をどっさりと持たせてくれるのだ。一日の散歩がてらの精霊巡りを終えて楽園に帰る頃には持ちきれないほどの山の幸、川の幸でいっぱいだった。自然の精霊気に満ちたそれらはとても美味しくて、それだけでも満ち足りた日々を過ごしていた。
そんなわけで最近は風の精霊の2人も前以上に元気いっぱいだ。特に俺の風君は大喜びでいう。
「僕はアキと旅が出来て最高だよ!」
「うん、俺も君と旅が出来てうれしい」
「あちこちの精霊達と仲良くなれるなんて、アキはやっぱり特別なんだと思うよ」
「ほんとほんと、でもさー風君はアキに頼り過ぎじゃない?」
「ほ、本当は僕だってもっとアキの役に立ちたいんだもんよ」
「ほんとう?私なんていつもミューちゃんの役に立ってもんね~」
とミューの風っ子も交じってくる。
俺とミューはそれを面白がって眺めていた。この2人はずっと変わらず可愛らしい。
「大丈夫、風君もすごく役立ってくれてるしいつも感謝してるんだよ」
「ほらほら~、アキに感謝されてるんだぞ~」
「う、羨ましくなんかないんだからね」
などといつものように夫婦漫才が始ってしまう。本当に仲のいい2人なのだ。
「2人とも凄く可愛いよ、大好き」
とミューが2人とも褒める。この関係がずっとつづきますようにと祈って、ミューの肩を抱きしめた。
22
あなたにおすすめの小説
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる