18 / 62
沼の戦い
しおりを挟む「それは本当ですか?」
そんなウソをつく理由はないとは思うが信じられなかったのだ。折角巨大な柵を作って完全に封鎖したのに‥‥。
住人の一人がその街道に消えていく子供と、手を引いている真っ黒のローブ姿の怪しい男の後ろ姿をみたというのだ。
「お願いします、うちの子を助けてください」
「分かりました、皆で探しましょう」
僕は少々心細かったが大勢で気をつけていけば沼に嵌る事もないだろうと考え、一応は3人1グループでまとまって探すように注意をあたえ捜索を開始した。
昼間に作った柵を見ると一部壊されていて人が一人何とか通れる大きさに穴があけられていた。イノシシなどの野生動物が開けた可能性もあるが、やはり誘拐犯か‥‥でもなぜわざわざあんな薄気味悪いところに行くのだろう?
不思議に思いながらも皆で柵のなかに入り松明をともして子供の名前を呼んだ。
「おーい、イシター!おーい!」
静まり帰って不気味な旧街道も大勢で大きな声をあげると恐怖は感じない。これなら大丈夫だと確信して少しずつ進みながら毒の沼までやってきた。
何もない‥‥誰も居ない。困惑していると、突然沼の中央に人影のようなものが薄暗い月明かりの中、浮いて見える。
「は!?な‥‥に?」
僕が驚いているとそいつは何かぶつぶつと話し始めた。
「うるさいうるさいうるさいうるさい‥‥」
煩いと言っているように聞こえる。
「黙れ黙れ黙れ‥‥サイレンス」
その瞬間大勢の声が聞こえなくなり、沈黙の魔法を掛けられたのだと気が付く。そいつは明らかに死霊系のモンスターだった。
「モンスターだ!みんな逃げろ!!」
異変に気が付いた捜索隊は一斉に逃げ出す。
「来い!悪魔!」
僕は魔法剣を抜いて前に掲げる。今は魔法剣が両手の前で美しく七色に光るのが心強かった。
「お前!よくも我が夫をやってくれたな」
「‥‥」
何か知らないが僕が殺人鬼だというのだろうか?いや、あの秘魔の洞窟のエルダーリッチの事を言っているのだと直感した。
「あの骸骨の事か?」
「お前、なぜ話せる」
「え?‥‥あ」
自分でも分からないが僕自身にサイレンスの魔法は掛かっていないようだ。
「そ、そんなことはどうでもいい!こどもを誘拐したのはお前だな!」
「子供‥‥これのことか?」
そういうとそいつは瞬時に子供の骸骨を手にぶら下げていた。
「イシター!」
「あっはっはっはっは、これがイシターにみえるのか」
「なに?」
考えてみたら僕はイシターを見たことがない。
「う‥‥ん、解らん」
「分からないのに来たというのか、愚か者め」
「まぁ、それはその通りだな」
次の瞬間その手から子供の骸骨は消えた。
「は?何を‥‥」
「知りたいか?知りたければこっちに来て確かめよ」
「ん‥‥」
思わず一歩踏み込もうとして沼に片足をつっこんでしまう。
「あ、しまった」
と言ったと同時に沼から骸骨の手が生えてきて僕の足首をガッチりと掴む。
「うわぁ!」
バシュ!
一瞬焦ったが、すぐに冷静さを取り戻しその骸骨の手を魔法剣で斬り払う。
「おい!ずるいぞ!そこから出てこっちに来い!」
「あはははははは」
「‥‥何がおかしい?」
「周りをよくみよ」
ふと後ろを振り返ると沢山の骸骨に囲まれていた。
「おお!武技、閃迅!」
ガシャァアアアアン!
思わず武技を発動して骸骨の群れのなかに飛び込んでしまう。骸骨の群れは一撃で粉砕して消滅していく。
「武技、乱舞」
バシュ!ババババババシュ!
少し落ち着きを取り戻して、改めて適切な武技を発動し残りの骸骨の軍団を斬り刻んだ。
「よくも‥‥よくも‥‥」
「良いからこっちにきて勝負しろ」
「レベル3マディ!」
その瞬間、僕の周囲の地面が泥濘になり、どんどん足が沈んでいく。
「おい!汚いぞ!」
僕自身には魔法が効かなくても地面を変化させることはできるのだ。
「あっはっはっはっはっは」
その骸骨の女が高笑いしているのがムカついたが、それどころではない。もう胸まで埋まってしまっている。
「クソ、こんなバカな!」
27
あなたにおすすめの小説
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
悪役貴族に転生したから破滅しないように努力するけど上手くいかない!~努力が足りない?なら足りるまで努力する~
蜂谷
ファンタジー
社畜の俺は気が付いたら知らない男の子になっていた。
情報をまとめるとどうやら子供の頃に見たアニメ、ロイヤルヒーローの序盤で出てきた悪役、レオス・ヴィダールの幼少期に転生してしまったようだ。
アニメ自体は子供の頃だったのでよく覚えていないが、なぜかこいつのことはよく覚えている。
物語の序盤で悪魔を召喚させ、学園をめちゃくちゃにする。
それを主人公たちが倒し、レオスは学園を追放される。
その後領地で幽閉に近い謹慎を受けていたのだが、悪魔教に目を付けられ攫われる。
そしてその体を魔改造されて終盤のボスとして主人公に立ちふさがる。
それもヒロインの聖魔法によって倒され、彼の人生の幕は閉じる。
これが、悪役転生ってことか。
特に描写はなかったけど、こいつも怠惰で堕落した生活を送っていたに違いない。
あの肥満体だ、運動もろくにしていないだろう。
これは努力すれば眠れる才能が開花し、死亡フラグを回避できるのでは?
そう考えた俺は執事のカモールに頼み込み訓練を開始する。
偏った考えで領地を無駄に統治してる親を説得し、健全で善人な人生を歩もう。
一つ一つ努力していけば、きっと開かれる未来は輝いているに違いない。
そう思っていたんだけど、俺、弱くない?
希少属性である闇魔法に目覚めたのはよかったけど、攻撃力に乏しい。
剣術もそこそこ程度、全然達人のようにうまくならない。
おまけに俺はなにもしてないのに悪魔が召喚がされている!?
俺の前途多難な転生人生が始まったのだった。
※カクヨム、なろうでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる