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エッチなフェロモン
しおりを挟む「ミミは何故あの熊が変身したのか知っているかい?」
やっぱり気になるのでミミに訊いてみる。
「知ってるけど‥‥」
「ん?」
ミミが少し恥ずかしそうにする。
「えっとね、興奮して発情するとなるの」
「‥‥は?」
つまり、なんらかしらの原因であの熊は発情したという事らしい。
「う~ん‥‥まさか僕に発情するわけはないだろうし」
「多分あたし」
「‥‥」
ロリコン親父だったという事だろうか‥‥。
目の前にある角からの香りが少し強くなった気がした。これはある種のフェロモンなのだろうか‥‥そうだとすると、この子の持つ独特の香水は獣人族にとって媚薬なのかもしれない、と。
「それでか」
酒場で熊が変に忠告したり、マスターがヒソヒソ教えてくれたり。現に今僕はミミが手放せなくなっている‥‥。僕は昔読んだ魔族の伝記を思い出していた。魔族の種類にも色々とあり、知的なのから暴力的なのや性的なのまでいると。もしかして、ミミはサキュバス系なのではないか‥‥?
それは訊きたくても訊けない質問だった。
仮にミミがサキュバス系魔族だとしても荒野に放置して行けるのだろうか?それは出来そうもなかった。ミミとの関係は、初めは保護欲のようなものだったが今は手放せない大事な何かになってしまっている。
それが性的なものではないとは言い切れないのが自分でも悩ましかった。
こんな事で少しでも悩んでいるのをアリーに見られたらどうなるのか‥‥多分絶対に許してくれないだろうし、絶交されるかもしれない。いや、アリーは優しいからきっと許してくれるだろう、侮蔑の目で僕を見つつ‥‥。
「ふぅ‥‥」
ダメだ、どんどん悪いほうに妄想が膨らんでいく。このままではいけない方向に突っ走っていってしまうかもしれない‥‥。何か、手はないだろうか? そうだ!
「ミミ、お願いがあるんだけど聞いてくれるかな?」
「え~、いいよ」
「ミミの角は少し‥‥危険なので帽子を被って欲しい」
「いいよ」
良かった、凄く素直に聞いてくれている。
いや、いくらなんでも理由も訊きもせず素直すぎやしないだろうか?まぁでも一応それで安心なのだから‥‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕らは次の町に寄った時にミミの服を新調するのと併せて帽子を買った。
服と言っても冒険者らしい皮の服で、女の子らしさは一気に消し飛んでしまう。そして厚皮の帽子を被ると完璧にホルモンの香りはしなくなった。初めは物々しい格好に抵抗があったようだけど、暫くすると男達が寄ってこないというメリットを理解して喜んだ。
僕はいつものように酒場に行きカウンターの席に陣取り、酒を注文した。
「なぁ、マスターこの町で人族の噂はないかい?」
「ないな」
いつもと同じそっけない返事を聞いてため息をつく。
「やっぱり世界は広いからなぁ‥‥」
「お兄ちゃんはなんで人族を探しているの?」
珍しくミミが質問した、多分それが初めての質問だったと思う。
「そうだな、うん、ミミにだけは教えておこう」
僕はミミに大方を端折って説明した。
「この世界に人族が紛れ込んでいるんだけど、彼らを元の世界に帰してやらないといけないんだよ」
「その人達はお兄ちゃんの大切な人なの?」
「ま、そういう事だな」
「ふ~~~~ん」
なんとなく長い返事に思えたがそれはあまり気にしない事にした。
だが、その夜僕はミミが帽子を被るのを二つ返事で了解した理由を理解した。
ホテルの部屋に入りミミが帽子を取ると、ミミの圧倒的な芳香が部屋に充満して僕はメロメロになってしまったのだ。
「ああ、これはミミ、ダメなやつだ‥‥」
「お兄ちゃん、いいの‥‥これで」
やっぱり、僕はミミが手放せなくなり添い寝をしてしまう。‥‥こんな姿をアリーに見られたら僕は終わりだ、そんな風に考えたがミミの物理的な芳香に圧倒されて気絶した。
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