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第二十二話 王都から逃げる者たち
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第二十二話 王都から逃げる者たち
最初に動いたのは、商人だった。
移住制限令が出た翌週、王都の大商会三家が“破産”を申告した。
だが実態は違う。
帳簿は空。
倉庫も空。
資産はすでに西へ移動している。
「形式上の倒産です」
財務官が淡々と報告する。
「王都に残ったのは看板だけ」
私は頷く。
「罰金も凍結も意味がない」
「はい。財産は既に公爵領内」
王家は怒った。
残された商人に対し、さらなる徴税。
だがそれは“残った者”への追い打ち。
翌月。
王都の税収は二割減。
さらに三割減。
兵糧の調達が滞る。
王都の市場で、穀物が不足する。
「価格は?」
「西部の倍」
「冬を越えられません」
騎士団長が低く言う。
そして。
ついに起きた。
貴族の亡命。
南部伯爵家の次男が、正式に領地を公爵領へ移すと宣言。
続いて子爵家。
伯爵家の分家。
「理由は」
「王都の徴税が維持不能」
「司法不信」
「暴動の不安」
私は静かに聞く。
誰も“公爵家に忠誠”とは言わない。
ただ。
「安定を求める」
それだけ。
王都の街門で、馬車の列が止まらない。
貴族の旗。
家財。
家族。
王城の塔から見れば、それは明白だった。
王都が痩せている。
王城の会議室。
国王は報告を受け、机を叩いた。
「なぜ止まらぬ!」
「陛下、力で止めれば暴動」
「ならば交渉を」
「信用が……」
言葉が続かない。
信用はすでに削られている。
王家は“縛る側”になった。
公爵領は“選ばれる側”。
その差は大きい。
私は執務室で新たな命令書に署名する。
「亡命貴族の受け入れ条件」
「特権なし」
「監査対象」
「軍事権は持たせない」
財務官が小さく笑う。
「甘くありませんな」
「甘くする必要はありません」
一拍。
「守るのは秩序」
騎士団長が報告する。
「王都の兵の脱走が増えています」
「行き先は?」
「西部二州半」
私は目を閉じる。
兵まで流れ始めた。
それは国家の危険信号。
王都の夜。
王城の灯はまだ輝く。
だが城下は暗い。
商人が減り。
工房が減り。
貴族が減る。
王都経済は臨界点に近づいている。
「我らが動かねば、王国そのものが崩れます」
騎士団長が言う。
私は静かに答える。
「崩させるつもりはございません」
一拍。
「だが延命のための愚策には、加担いたしません」
亡命貴族の馬車が、次々と公爵邸へ入る。
彼らは頭を下げる。
忠誠ではない。
選択。
王家は気づいた。
重心が移っただけではない。
王都そのものが空洞化している。
そして。
ついに王城から正式な使者が来る。
夜半。
密かに。
王命。
内容は一文。
『国家再編の協議を求む』
私は書状を閉じる。
遅い。
だが。
まだ間に合う。
王国の寿命は削られた。
だが完全には尽きていない。
私は立ち上がる。
「会います」
騎士団長が問う。
「条件は」
「対等」
一拍。
「王家の延命ではなく、国家の再設計」
王都が崩れる前に。
枠組みを変える。
それが最後の仕事になるかもしれない。
最初に動いたのは、商人だった。
移住制限令が出た翌週、王都の大商会三家が“破産”を申告した。
だが実態は違う。
帳簿は空。
倉庫も空。
資産はすでに西へ移動している。
「形式上の倒産です」
財務官が淡々と報告する。
「王都に残ったのは看板だけ」
私は頷く。
「罰金も凍結も意味がない」
「はい。財産は既に公爵領内」
王家は怒った。
残された商人に対し、さらなる徴税。
だがそれは“残った者”への追い打ち。
翌月。
王都の税収は二割減。
さらに三割減。
兵糧の調達が滞る。
王都の市場で、穀物が不足する。
「価格は?」
「西部の倍」
「冬を越えられません」
騎士団長が低く言う。
そして。
ついに起きた。
貴族の亡命。
南部伯爵家の次男が、正式に領地を公爵領へ移すと宣言。
続いて子爵家。
伯爵家の分家。
「理由は」
「王都の徴税が維持不能」
「司法不信」
「暴動の不安」
私は静かに聞く。
誰も“公爵家に忠誠”とは言わない。
ただ。
「安定を求める」
それだけ。
王都の街門で、馬車の列が止まらない。
貴族の旗。
家財。
家族。
王城の塔から見れば、それは明白だった。
王都が痩せている。
王城の会議室。
国王は報告を受け、机を叩いた。
「なぜ止まらぬ!」
「陛下、力で止めれば暴動」
「ならば交渉を」
「信用が……」
言葉が続かない。
信用はすでに削られている。
王家は“縛る側”になった。
公爵領は“選ばれる側”。
その差は大きい。
私は執務室で新たな命令書に署名する。
「亡命貴族の受け入れ条件」
「特権なし」
「監査対象」
「軍事権は持たせない」
財務官が小さく笑う。
「甘くありませんな」
「甘くする必要はありません」
一拍。
「守るのは秩序」
騎士団長が報告する。
「王都の兵の脱走が増えています」
「行き先は?」
「西部二州半」
私は目を閉じる。
兵まで流れ始めた。
それは国家の危険信号。
王都の夜。
王城の灯はまだ輝く。
だが城下は暗い。
商人が減り。
工房が減り。
貴族が減る。
王都経済は臨界点に近づいている。
「我らが動かねば、王国そのものが崩れます」
騎士団長が言う。
私は静かに答える。
「崩させるつもりはございません」
一拍。
「だが延命のための愚策には、加担いたしません」
亡命貴族の馬車が、次々と公爵邸へ入る。
彼らは頭を下げる。
忠誠ではない。
選択。
王家は気づいた。
重心が移っただけではない。
王都そのものが空洞化している。
そして。
ついに王城から正式な使者が来る。
夜半。
密かに。
王命。
内容は一文。
『国家再編の協議を求む』
私は書状を閉じる。
遅い。
だが。
まだ間に合う。
王国の寿命は削られた。
だが完全には尽きていない。
私は立ち上がる。
「会います」
騎士団長が問う。
「条件は」
「対等」
一拍。
「王家の延命ではなく、国家の再設計」
王都が崩れる前に。
枠組みを変える。
それが最後の仕事になるかもしれない。
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