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第二十四話 併呑という選択
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第二十四話 併呑という選択
王太子女就任の公示は、王都を震わせた。
歓声は少ない。
安堵が多い。
だが。
王家の延命を望む者と、制度国家を望む者。
その境目は曖昧だった。
私は王城の執務室に座る。
“王太子女”。
だが机の上に置くのは王家の紋章ではない。
司法監査院の印。
徴税透明法の改正案。
軍制再編の計画書。
「王家の歳入は?」
「三割減のまま」
財務官が答える。
「補填は公爵領よりの一時的融資」
国王は沈黙する。
私は静かに言う。
「これは融資でございます」
「救済ではございません」
国王は理解している。
王家は借りる側。
公爵家は貸す側。
力の位置は明白だ。
だが、それはまだ形式上“協力”。
ここからが本題。
私は国王に一枚の書面を差し出す。
「国家再編最終案」
国王が目を通す。
最初は平静。
次に、わずかに目が細まる。
「王家の財務権を国家監査下へ?」
「はい」
「軍制は統合司令部へ?」
「はい」
「徴税は中央と地方の二重承認制?」
「はい」
一拍。
「王家は象徴機関へ移行」
沈黙。
重い沈黙。
「つまり」
国王がゆっくりと言う。
「王家は統治権を失う」
「統治は制度へ」
「象徴は王家へ」
私は視線を逸らさない。
「併呑でございます」
国王の手が止まる。
「併呑……」
「王家を潰すのではございません」
「国家機能を一体化するだけ」
一拍。
「王家が制度に併呑される」
国王はしばらく黙り、やがて小さく笑った。
「結局、そこまで来たか」
「愚策が寿命を削りました」
「延命では足りぬ」
「構造転換が必要」
国王は立ち上がる。
窓の外、王都を見下ろす。
痩せた城下。
空いた倉庫。
減った旗。
「そなたが奪ったのではない」
低い声。
「我らが削ったのだ」
私は答えない。
責任を押し付けるつもりはない。
だが回避もさせない。
「王家は残るか」
国王が問う。
「象徴として」
「制度に従う象徴として」
一拍。
「民はそれを望みます」
長い沈黙。
やがて。
「……承認する」
その一言。
王国は変わった。
三日後。
貴族議会。
王家統治権の国家制度移管が正式に可決。
反対は少数。
旧王太子派はすでに力を失っている。
私は壇上に立つ。
「王家は存続します」
「国家は再編されます」
一拍。
「支配ではなく、責任の共有」
王城の旗は降ろされない。
だが。
統治命令は司法監査院経由。
軍令は統合司令部経由。
税は透明法下。
王家は象徴。
国家は制度。
併呑は、宣戦ではない。
吸収。
静かに。
確実に。
終わった。
戦わずして。
王家は潰れていない。
だが。
もう、王家が国を動かすことはない。
私は王太子女の席を立つ。
「陛下」
一礼する。
「国家は守られました」
国王は静かに頷く。
「そなたが守った」
「制度が守りました」
私は微笑む。
愚策は寿命を削った。
だが。
寿命を延ばすのではなく。
構造を変えた。
それが結末。
王国併呑。
王家を殺さず、王家を超える。
王太子女就任の公示は、王都を震わせた。
歓声は少ない。
安堵が多い。
だが。
王家の延命を望む者と、制度国家を望む者。
その境目は曖昧だった。
私は王城の執務室に座る。
“王太子女”。
だが机の上に置くのは王家の紋章ではない。
司法監査院の印。
徴税透明法の改正案。
軍制再編の計画書。
「王家の歳入は?」
「三割減のまま」
財務官が答える。
「補填は公爵領よりの一時的融資」
国王は沈黙する。
私は静かに言う。
「これは融資でございます」
「救済ではございません」
国王は理解している。
王家は借りる側。
公爵家は貸す側。
力の位置は明白だ。
だが、それはまだ形式上“協力”。
ここからが本題。
私は国王に一枚の書面を差し出す。
「国家再編最終案」
国王が目を通す。
最初は平静。
次に、わずかに目が細まる。
「王家の財務権を国家監査下へ?」
「はい」
「軍制は統合司令部へ?」
「はい」
「徴税は中央と地方の二重承認制?」
「はい」
一拍。
「王家は象徴機関へ移行」
沈黙。
重い沈黙。
「つまり」
国王がゆっくりと言う。
「王家は統治権を失う」
「統治は制度へ」
「象徴は王家へ」
私は視線を逸らさない。
「併呑でございます」
国王の手が止まる。
「併呑……」
「王家を潰すのではございません」
「国家機能を一体化するだけ」
一拍。
「王家が制度に併呑される」
国王はしばらく黙り、やがて小さく笑った。
「結局、そこまで来たか」
「愚策が寿命を削りました」
「延命では足りぬ」
「構造転換が必要」
国王は立ち上がる。
窓の外、王都を見下ろす。
痩せた城下。
空いた倉庫。
減った旗。
「そなたが奪ったのではない」
低い声。
「我らが削ったのだ」
私は答えない。
責任を押し付けるつもりはない。
だが回避もさせない。
「王家は残るか」
国王が問う。
「象徴として」
「制度に従う象徴として」
一拍。
「民はそれを望みます」
長い沈黙。
やがて。
「……承認する」
その一言。
王国は変わった。
三日後。
貴族議会。
王家統治権の国家制度移管が正式に可決。
反対は少数。
旧王太子派はすでに力を失っている。
私は壇上に立つ。
「王家は存続します」
「国家は再編されます」
一拍。
「支配ではなく、責任の共有」
王城の旗は降ろされない。
だが。
統治命令は司法監査院経由。
軍令は統合司令部経由。
税は透明法下。
王家は象徴。
国家は制度。
併呑は、宣戦ではない。
吸収。
静かに。
確実に。
終わった。
戦わずして。
王家は潰れていない。
だが。
もう、王家が国を動かすことはない。
私は王太子女の席を立つ。
「陛下」
一礼する。
「国家は守られました」
国王は静かに頷く。
「そなたが守った」
「制度が守りました」
私は微笑む。
愚策は寿命を削った。
だが。
寿命を延ばすのではなく。
構造を変えた。
それが結末。
王国併呑。
王家を殺さず、王家を超える。
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