「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜

鷹 綾

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第15話 拒絶の言葉 〜土下座の使者と、アリシアの一蹴〜

第15話 拒絶の言葉 ~土下座の使者と、アリシアの一蹴~

ルミナス領の朝陽が、丘の上を優しく照らしていた。  
アリシア・ルナミアは、村の入り口で村人たちに見送られながら、静かに立っていた。  
シルヴァン・レイヴンが隣に立ち、ガレン・ブライトが少し後ろで警護していた。  
王都からの使者が、再び到着した。  
今回は、ただの使者ではなく、ヴァレンティン王太子の直属の騎士団長が率いる一行だった。

騎士団長は、馬から降り、深く頭を下げた。  
彼の背後には、ヴァレンティンからの親書が握られていた。

「アリシア様……王太子殿下より、緊急の使者です。  
王都は魔物に包囲され、崩壊寸前です。  
どうか、助けをお願いいたします」

アリシアは、静かに騎士団長を見据えた。

「条件は、変わりません。  
契約金1000万ゴールドと、謝罪文の全国公開。  
それがなければ、助けられません」

騎士団長は、顔を上げ、震える声で言った。

「殿下は……条件を飲むと仰いました。  
ただ、謝罪文の内容を、少し柔らかく……」

シルヴァンが、冷たく割り込んだ。

「柔らかく? ふざけるな。  
王太子が土下座して、誤りを認める。それが最低条件だ」

騎士団長は、額に汗を浮かべた。

「殿下は……自らお越しになるそうです。  
ルミナス領まで、直接謝罪に」

アリシアの瞳が、わずかに揺れた。  
村人たちが、ざわめく。  
子供の一人が、アリシアの裾を掴んだ。

「アリシアお姉ちゃん、王太子様が来るの?」

アリシアは、優しく子供の頭を撫でた。

「ええ、来るかもね」

その時、遠くから馬の蹄の音が響いた。  
ヴァレンティン王太子本人が、単騎で現れた。  
金髪が乱れ、普段の華やかな衣装ではなく、簡素なマントを羽織っていた。  
彼は馬から降り、アリシアの前に立った。

「アリシア……」

ヴァレンティンの声は、震えていた。  
プライドの高い彼が、こんなに弱々しく見えるのは、初めてだった。

「俺は……間違っていた。  
お前を偽りの聖女と罵り、婚約破棄したのは、俺の誤りだった。  
王都は、もう限界だ。  
助けてくれ……」

アリシアは、静かにヴァレンティンを見つめた。  
かつての婚約者。  
幼い頃から一緒に育った相手。  
でも、今は違う。

「ヴァレンティン様……」

ヴァレンティンは、膝をつき、土下座した。  
額を地面に押しつけ、震える声で続けた。

「謝罪する。  
お前を傷つけたことを、深く後悔している。  
条件はすべて飲む。  
契約金1000万ゴールド、謝罪文の全国公開……すべてだ。  
だから、助けてくれ」

村人たちが、息を呑む。  
ガレンが、拳を握りしめた。  
シルヴァンの瞳が、冷たく光った。

アリシアは、ゆっくりと口を開いた。

「ヴァレンティン様……ありがとうございます。  
土下座までしてくれて」

ヴァレンティンは、顔を上げ、希望の光を瞳に浮かべた。

「なら……」

アリシアは、静かに首を振った。

「でも、結構です」

ヴァレンティンの表情が、凍りついた。

「え……?」

アリシアは、穏やかに続けた。

「私は、もう王都に戻るつもりはありません。  
ここが、私の居場所です。  
みんなと一緒に、生きていくのが、私の幸せ」

ヴァレンティンは、立ち上がろうとしたが、膝が震えて崩れ落ちた。

「アリシア……お前は、俺を許さないのか?」

アリシアは、優しく微笑んだ。

「許すも何も、恨んでいません。  
ただ、私はもう、あなたの聖女ではないの。  
隣国レイヴン帝国の、シルヴァン様の婚約者です」

シルヴァンが、アリシアの肩を抱いた。  
彼の声は、冷徹だった。

「王太子……お前の土下座など、遅すぎた。  
アリシアは、俺のものだ」

ヴァレンティンは、絶望の表情で地面を見つめた。

「そうか……」

アリシアは、ヴァレンティンに背を向け、丘を登り始めた。

「王都の呪いは、解いてあげます。  
でも、遠くから。  
二度と、私に近づかないでください」

ヴァレンティンは、土下座したまま、動けなかった。  
騎士団長が、慌てて彼を支えた。

「殿下……」

ヴァレンティンは、呟いた。

「俺は……すべてを失った」

ルミナス領の空は、青く澄んでいた。  
アリシアは、シルヴァンの胸に寄りかかり、静かに言った。

「これで、終わったわ」

シルヴァンは、アリシアを抱きしめた。

「これから、俺がお前のすべてを守る」

村人たちが、歓声を上げた。  
子供たちが、アリシアに駆け寄る。

王都では、ヴァレンティンが土下座の姿で戻り、国民の嘲笑を浴びていた。  
フィオナは、呪いで醜く変貌し、逃げ惑っていた。

アリシアの心は、穏やかだった。  
新しい人生が、始まろうとしていた。

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