「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜

鷹 綾

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第18話 土下座の使者 〜王太子の絶望と、条件の再提示〜

第18話 土下座の使者 ~王太子の絶望と、条件の再提示~

王都オルティアの宮殿前広場は、瓦礫と血で染まっていた。  
魔物の猛攻は、シルヴァン・レイヴンの軍勢によってようやく抑え込まれていた。  
銀色の騎士団が、街路を巡回し、残党の魔物を斬り倒していく。  
市民たちは、窓から恐る恐る顔を出し、希望の光を瞳に浮かべていた。

ヴァレンティン王太子は、宮殿の階段に座り込み、土下座の姿勢を崩せずにいた。  
額を地面に押しつけたまま、震える声で呟いていた。

「アリシア……俺は、間違っていた……」

シルヴァンが、馬から降り、ヴァレンティンの前に立った。  
冷徹な銀色の瞳が、王太子を見下ろす。

「王太子……お前の土下座は、受け取った。  
だが、アリシアの条件は、まだ満たされていない」

ヴァレンティンは、ゆっくりと顔を上げた。  
その瞳には、涙が浮かんでいた。

「条件……すべて飲むと言ったはずだ。  
1000万ゴールド、謝罪文の全国公開……」

シルヴァンは、冷たく笑った。

「それだけではない。  
お前が自ら、アリシアの前に跪き、謝罪する。  
そして、二度と彼女に近づかないと、誓う」

ヴァレンティンは、拳を握りしめた。

「俺は……もう、プライドなどない。  
すべてを失った。  
アリシアに、会わせてくれ」

シルヴァンは、首を振った。

「アリシアは、来ない。  
彼女は、ルミナス領にいる。  
お前が土下座の使者として、彼女の元へ行く」

ヴァレンティンは、立ち上がろうとしたが、膝が震えて崩れ落ちた。

「使者として……?」

シルヴァンは、騎士に合図した。  
一人の騎士が、ヴァレンティンの前に跪き、親書を差し出した。

「アリシア様からの返事です。  
『土下座の使者を、受け入れます。  
ですが、条件は変わりません。  
謝罪文を全国に公開し、王太子殿下は二度と私に近づかないこと』」

ヴァレンティンは、親書を震える手で受け取った。  
そこには、アリシアの優しい筆跡で、条件が記されていた。

「アリシア……」

彼は、立ち上がり、馬に跨った。  
騎士団長が、慌てて止めた。

「殿下! 一人で行くのですか?」

ヴァレンティンは、静かに言った。

「俺一人でいい。  
これは、俺の贖罪だ」

馬を駆り、ルミナス領へ向かう。  
背後で、フィオナが宮殿の影から見つめていた。  
彼女の体は、呪いが解け始めていたが、心は砕け散っていた。

「ヴァレンティン様……アリシアに……」

ルミナス領の村入り口。  
アリシアは、村人たちと一緒に立っていた。  
シルヴァンが隣に立ち、ガレンが警護に当たっていた。

遠くから、馬の蹄の音が響いた。  
ヴァレンティンが、埃まみれで現れた。  
彼は馬から降り、アリシアの前に土下座した。

「アリシア……俺は、すべてを認める。  
お前を偽りの聖女と罵り、婚約破棄したのは、俺の誤りだった。  
謝罪する。  
条件はすべて飲む。  
謝罪文を全国に公開し、二度と近づかない。  
だから、王都を……完全に救ってくれ」

アリシアは、静かにヴァレンティンを見つめた。  
かつての婚約者。  
今は、ただの苦しむ男。

「ヴァレンティン様……ありがとうございます。  
土下座までしてくれて」

ヴァレンティンは、顔を上げ、涙を流した。

「なら……」

アリシアは、優しく首を振った。

「でも、結構です」

ヴァレンティンの表情が、凍りついた。

「アリシア……?」

アリシアは、穏やかに続けた。

「私は、王都に戻りません。  
ここが、私の居場所です。  
王都の呪いは、遠くから解きます。  
ですが、謝罪文は、全国に公開してください。  
それが、条件です」

シルヴァンが、冷たく言った。

「王太子……お前の土下座は、受け取った。  
だが、アリシアは、もうお前のものではない。  
俺の婚約者だ」

ヴァレンティンは、地面に額を押しつけ、嗚咽を漏らした。

「俺は……すべてを失った……」

アリシアは、静かに手を翳した。  
銀色の光が、王都へ向かって広がる。  
遠くの空に、光が届き、魔物の残党が消えていく。

「これで、王都は救われます。  
みんな、無事でいてください」

ヴァレンティンは、土下座したまま、動けなかった。

「アリシア……ありがとう……」

アリシアは、背を向け、村へ戻った。  
シルヴァンが、彼女を抱き寄せた。

「よくやった、アリシア。  
お前は、俺の聖女だ」

村人たちが、歓声を上げた。  
子供たちが、アリシアに駆け寄る。

王都では、市民たちが、光に包まれ、涙を流していた。

「聖女様……ありがとう……」

ヴァレンティンは、土下座したまま、静かに泣いていた。  
彼の心は、永遠に傷ついたままだった。
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