「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜

鷹 綾

文字の大きさ
19 / 30

第19話 国民の暴動 〜勘違い王子の袋叩きと、完全なるざまぁ〜

しおりを挟む
第19話 国民の暴動 ~勘違い王子の袋叩きと、完全なるざまぁ~

王都オルティアの街は、ようやく魔物の脅威から解放された。  
銀色の光が街全体を包み、呪いの霧が消え去った瞬間、市民たちは歓喜の声を上げた。  
「聖女様……ありがとう!」  
「アリシア様が、救ってくれた!」  
瓦礫の中で、家族を抱き合う人々。  
傷ついた衛兵たちが、互いに支え合いながら立ち上がる。  
しかし、その喜びは、長くは続かなかった。

噂が、瞬く間に広がった。  
「王太子が、アリシア様を偽りの聖女と罵り、婚約破棄した」  
「本物の聖女は、アリシア様だったのに、追放した!」  
「フィオナは偽物で、呪いが跳ね返った!」  
市民たちの怒りが、沸騰した。  
王宮の門前で、群衆が集まり始めた。

「王太子を返せ!」  
「勘違い王子が、国を滅ぼしかけたんだ!」  
「アリシア様を土下座させて、謝罪しろ!」  

ヴァレンティン王太子は、宮殿のバルコニーから、その光景を見ていた。  
彼の顔は、蒼白だった。  
騎士団長が、慌てて駆け寄った。

「殿下……群衆が、宮殿に向かっています。  
暴動が、起きそうです」

ヴァレンティンは、震える声で言った。

「俺が……悪いんだ」

フィオナ・セレナは、宮殿の奥の部屋で、震えていた。  
呪いが解け、体は回復しつつあったが、精神は限界だった。  
彼女は、鏡の前に立ち、自分の醜くなった顔を見つめ、泣き崩れた。

「私……何もかも、失った……」

群衆の怒りは、頂点に達した。  
「王太子を差し出せ!」  
「フィオナを、追い出せ!」  
石が投げられ、宮殿の窓ガラスが割れる。  
衛兵たちが、必死に防衛線を張るが、市民の数は増える一方だった。

ヴァレンティンは、バルコニーに出て、群衆に向かって叫んだ。

「俺が……すべてを認める!  
アリシア様を、誤って追放したのは、俺の誤りだ!  
謝罪する!」

だが、群衆の怒りは収まらない。

「謝罪だけじゃ足りない!」  
「土下座しろ!」  
「勘違い王子が、国を滅ぼしかけたんだ!」  

ヴァレンティンは、膝をつき、バルコニーから土下座した。  
額を地面に押しつけ、声が震える。

「俺は、間違っていた……  
アリシア様を、偽りの聖女と罵り、婚約破棄したのは、俺の過ちだ。  
国民の皆さん……許してくれ」

群衆は、一瞬静まった。  
だが、すぐに怒りが爆発した。

「許さない!」  
「フィオナを、袋叩きにしろ!」  

市民たちが、宮殿に押し寄せた。  
フィオナは、部屋から引きずり出され、群衆の前に立たされた。  
彼女の顔は、恐怖で歪んでいた。

「フィオナ……お前が、偽聖女だ!」  
「アリシア様を、陥れたんだ!」  

石が投げられ、フィオナは悲鳴を上げた。  
衛兵たちが、彼女を庇おうとしたが、群衆の勢いは止まらなかった。

「勘違い王子のせいで、国が滅びかけた!」  
「アリシア様を、追放した罰だ!」  

ヴァレンティンは、土下座したまま、動けなかった。  
彼の背中に、石が当たる。  
痛みより、絶望が胸を刺した。

「俺は……すべてを失った……」

ルミナス領の丘の上。  
アリシアは、遠くの空を見上げていた。  
シルヴァン・レイヴンが、隣に立ち、静かに言った。

「王都の暴動……国民が、王太子を袋叩きにしている」

アリシアは、静かに頷いた。

「みんな、苦しんだわ。  
でも、私は、もう関わらない」

シルヴァンは、アリシアを抱き寄せた。

「よくやった。  
お前は、俺の聖女だ」

ガレンが、丘を駆け上がってきた。

「アリシア様……王都は、救われました。  
ですが、王太子は、国民から永遠に『勘違い王子』と嘲笑されるそうです」

アリシアは、優しく微笑んだ。

「それでいいわ。  
みんなが、笑顔で生きていけるなら」

村人たちが、丘の下で集まり、祈るように見守っていた。  
子供が、アリシアに手を振る。

「アリシアお姉ちゃん、ありがとう!」

アリシアは、手を振り返した。

「みんな、幸せになってね」

王都では、暴動が収まり、市民たちが、謝罪文の公開を要求していた。  
ヴァレンティンは、土下座したまま、静かに泣いていた。

フィオナは、群衆から逃れ、街の外へ消えた。  
彼女の最後の姿は、醜く変貌した亡霊のようだった。

アリシアの光は、王都を完全に救った。  
だが、王太子の心は、永遠に傷ついたままだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約者を奪った妹と縁を切ったので、家から離れ“辺境領”を継ぎました。 すると勇者一行までついてきたので、領地が最強になったようです

藤原遊
ファンタジー
婚約発表の場で、妹に婚約者を奪われた。 家族にも教会にも見放され、聖女である私・エリシアは “不要” と切り捨てられる。 その“褒賞”として押しつけられたのは―― 魔物と瘴気に覆われた、滅びかけの辺境領だった。 けれど私は、絶望しなかった。 むしろ、生まれて初めて「自由」になれたのだ。 そして、予想外の出来事が起きる。 ――かつて共に魔王を倒した“勇者一行”が、次々と押しかけてきた。 「君をひとりで行かせるわけがない」 そう言って微笑む勇者レオン。 村を守るため剣を抜く騎士。 魔導具を抱えて駆けつける天才魔法使い。 物陰から見守る斥候は、相変わらず不器用で優しい。 彼らと力を合わせ、私は土地を浄化し、村を癒し、辺境の地に息を吹き返す。 気づけば、魔物巣窟は制圧され、泉は澄み渡り、鉱山もダンジョンも豊かに開き―― いつの間にか領地は、“どの国よりも最強の地”になっていた。 もう、誰にも振り回されない。 ここが私の新しい居場所。 そして、隣には――かつての仲間たちがいる。 捨てられた聖女が、仲間と共に辺境を立て直す。 これは、そんな私の第二の人生の物語。

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

【完結】婚約破棄はいいのですが、平凡(?)な私を巻き込まないでください!

白キツネ
恋愛
実力主義であるクリスティア王国で、学園の卒業パーティーに中、突然第一王子である、アレン・クリスティアから婚約破棄を言い渡される。 婚約者ではないのに、です。 それに、いじめた記憶も一切ありません。 私にはちゃんと婚約者がいるんです。巻き込まないでください。 第一王子に何故か振られた女が、本来の婚約者と幸せになるお話。 カクヨムにも掲載しております。

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

「誰もお前なんか愛さない」と笑われたけど、隣国の王が即プロポーズしてきました

ゆっこ
恋愛
「アンナ・リヴィエール、貴様との婚約は、今日をもって破棄する!」  王城の大広間に響いた声を、私は冷静に見つめていた。  誰よりも愛していた婚約者、レオンハルト王太子が、冷たい笑みを浮かべて私を断罪する。 「お前は地味で、つまらなくて、礼儀ばかりの女だ。華もない。……誰もお前なんか愛さないさ」  笑い声が響く。  取り巻きの令嬢たちが、まるで待っていたかのように口元を隠して嘲笑した。  胸が痛んだ。  けれど涙は出なかった。もう、心が乾いていたからだ。

婚約破棄された令嬢は、“神の寵愛”で皇帝に溺愛される 〜私を笑った全員、ひざまずけ〜

夜桜
恋愛
「お前のような女と結婚するくらいなら、平民の娘を選ぶ!」 婚約者である第一王子・レオンに公衆の面前で婚約破棄を宣言された侯爵令嬢セレナ。 彼女は涙を見せず、静かに笑った。 ──なぜなら、彼女の中には“神の声”が響いていたから。 「そなたに、我が祝福を授けよう」 神より授かった“聖なる加護”によって、セレナは瞬く間に癒しと浄化の力を得る。 だがその力を恐れた王国は、彼女を「魔女」と呼び追放した。 ──そして半年後。 隣国の皇帝・ユリウスが病に倒れ、どんな祈りも届かぬ中、 ただ一人セレナの手だけが彼の命を繋ぎ止めた。 「……この命、お前に捧げよう」 「私を嘲った者たちが、どうなるか見ていなさい」 かつて彼女を追放した王国が、今や彼女に跪く。 ──これは、“神に選ばれた令嬢”の華麗なるざまぁと、 “氷の皇帝”の甘すぎる寵愛の物語。

才能が開花した瞬間、婚約を破棄されました。ついでに実家も追放されました。

キョウキョウ
恋愛
ヴァーレンティア子爵家の令嬢エリアナは、一般人の半分以下という致命的な魔力不足に悩んでいた。伯爵家の跡取りである婚約者ヴィクターからは日々厳しく責められ、自分の価値を見出せずにいた。 そんな彼女が、厳しい指導を乗り越えて伝説の「古代魔法」の習得に成功した。100年以上前から使い手が現れていない、全ての魔法の根源とされる究極の力。喜び勇んで婚約者に報告しようとしたその瞬間―― 「君との婚約を破棄することが決まった」 皮肉にも、人生最高の瞬間が人生最悪の瞬間と重なってしまう。さらに実家からは除籍処分を言い渡され、身一つで屋敷から追い出される。すべてを失ったエリアナ。 だけど、彼女には頼れる師匠がいた。世界最高峰の魔法使いソリウスと共に旅立つことにしたエリアナは、古代魔法の力で次々と困難を解決し、やがて大きな名声を獲得していく。 一方、エリアナを捨てた元婚約者ヴィクターと実家は、不運が重なる厳しい現実に直面する。エリアナの大活躍を知った時には、すべてが手遅れだった。 真の実力と愛を手に入れたエリアナは、もう振り返る理由はない。 これは、自分の価値を理解してくれない者たちを結果的に見返し、厳しい時期に寄り添ってくれた人と幸せを掴む物語。

妹が私の全てを奪いました。婚約者も家族も。でも、隣国の国王陛下が私を選んでくれました

放浪人
恋愛
侯爵令嬢イリスは美しく社交的な妹セレーナに全てを奪われて育った。 両親の愛情、社交界の評判、そして幼馴染であり婚約者だった公爵令息フレデリックまで。 妹の画策により婚約を破棄され絶望するイリスだが傷ついた心を抱えながらも自分を慕ってくれる使用人たちのために強く生きることを決意する。 そんな彼女の元に隣国の若き国王が訪れる。 彼はイリスの飾らない人柄と虐げられても折れない心に惹かれていく。 一方イリスを捨て妹を選んだフレデリックと全てを手に入れたと思った妹は国王に選ばれたイリスを見て初めて自らの過ちを後悔するがもう遅い。 これは妹と元婚約者への「ざまぁ」と新たな場所で真実の愛を見つける物語。

処理中です...