「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜

鷹 綾

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第21話 王太子の土下座 〜完全なる屈服と、アリシアの最終拒否〜

第21話 王太子の土下座 ~完全なる屈服と、アリシアの最終拒否~

ルミナス領の村は、穏やかな朝を迎えていた。  
アリシア・ルナミアは、丘の上に立ち、村人たちと一緒に朝食の準備を手伝っていた。  
子供たちが笑いながら花を編み、老婆がスープを温め、農夫たちが畑から戻ってくる。  
すべてが、平和だった。

シルヴァン・レイヴンが、アリシアの隣に立っていた。  
彼の銀色の瞳が、遠くの道を見つめていた。

「アリシア……王都から、また使者が来る」

アリシアは、静かに頷いた。

「ヴァレンティン様が……自ら来るのね」

その時、遠くから馬の蹄の音が響いた。  
ヴァレンティン王太子本人が、単騎で現れた。  
彼の姿は、埃まみれで、かつての華やかな王太子の面影はなかった。  
簡素なマントを羽織り、顔は憔悴しきっていた。

ヴァレンティンは、馬から降り、アリシアの前に土下座した。  
額を地面に押しつけ、震える声で言った。

「アリシア……俺は、すべてを認める。  
お前を偽りの聖女と罵り、婚約破棄したのは、俺の誤りだった。  
王都を救ってくれたことに、感謝する。  
だが、それだけでは足りない。  
俺は……お前に、婚約を復活させてほしい」

村人たちが、息を呑む。  
ガレン・ブライトが、警戒するように前に出た。  
シルヴァンの瞳が、冷たく光った。

アリシアは、静かにヴァレンティンを見つめた。

「ヴァレンティン様……土下座までしてくれて、ありがとう」

ヴァレンティンは、顔を上げ、涙を浮かべて続けた。

「俺は、もうプライドなどない。  
国民から『勘違い王子』と嘲笑され、すべてを失った。  
お前がいなければ、王都は滅びていた。  
だから……もう一度、俺の婚約者になってくれ。  
お前の力で、国を救ってほしい」

アリシアは、ゆっくりと首を振った。

「結構です」

ヴァレンティンの表情が、凍りついた。

「アリシア……?」

アリシアは、穏やかに続けた。

「私は、もう王都に戻りません。  
ここが、私の居場所です。  
みんなと一緒に、笑って生きていくのが、私の幸せ」

ヴァレンティンは、地面に額を再び押しつけた。

「俺は……お前を傷つけた。  
だから、許してくれないのは、当然だ。  
でも、せめて……」

シルヴァンが、冷たく割り込んだ。

「王太子……お前の土下座は、受け取った。  
だが、アリシアは、もうお前のものではない。  
俺の婚約者だ。  
二度と、近づくな」

ヴァレンティンは、震える手で地面を掴んだ。

「シルヴァン……お前が……」

シルヴァンは、アリシアの肩を抱き寄せた。

「アリシアは、俺の聖女だ。  
お前のような勘違い王子に、渡さない」

アリシアは、ヴァレンティンに優しく言った。

「ヴァレンティン様……ありがとう。  
王都は、もう救われました。  
謝罪文は、全国に公開されたわね。  
それで、十分です」

ヴァレンティンは、土下座したまま、嗚咽を漏らした。

「俺は……本当に、すべてを失った……」

アリシアは、静かに手を翳した。  
銀色の光が、ヴァレンティンの体を包む。  
彼の心に残る呪いの残渣が、完全に消え去った。

「これで、あなたも解放されます。  
もう、苦しまないで」

ヴァレンティンは、ゆっくりと顔を上げた。  
涙で濡れた瞳に、感謝と絶望が混ざっていた。

「アリシア……ありがとう……」

彼は、立ち上がり、馬に跨った。  
背中を丸め、ゆっくりと王都へ戻る。

「俺は……永遠に、お前を忘れない」

アリシアは、ヴァレンティンの後ろ姿を見送った。  
心に、わずかな痛みが残ったが、すぐに消えた。

シルヴァンは、アリシアを抱きしめた。

「よくやった、アリシア。  
お前は、俺のものだ」

アリシアは、シルヴァンの胸に寄りかかり、微笑んだ。

「ええ……シルヴァン様」

村人たちが、歓声を上げた。  
子供たちが、アリシアに駆け寄る。

「アリシアお姉ちゃん、王太子様はもう来ないの?」

アリシアは、優しく頷いた。

「ええ。  
もう、来ないわ。  
これからは、みんなで幸せに生きましょう」

丘の下では、ガレンが静かに微笑んでいた。

「アリシア様……おめでとうございます」

アリシアは、ガレンに微笑み返した。

「ありがとう、ガレン」

王都では、謝罪文が全国に張り出され、市民たちが笑い声を上げていた。

「勘違い王子、土下座したんだって!」  
「アリシア様が、婚約を拒否したらしいぞ!」  

ヴァレンティンは、宮殿の奥で、一人座っていた。  
彼の瞳には、涙が乾いていた。

「アリシア……俺は、永遠に、お前を愛していた……」

だが、アリシアは、もう振り返らなかった。  
彼女の心は、シルヴァンと、ルミナス領の未来に向いていた。

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