「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜

第24話 王都救済の代償 〜遠隔の浄化と、永遠の警告〜

 第24話　王都救済の代償　～遠隔の浄化と、永遠の警告～

レイヴン帝国への道は、穏やかな森と川に囲まれていた。  
アリシア・ルナミアは、シルヴァン・レイヴンの馬の前に座り、彼の胸に寄りかかっていた。  
シルヴァンの腕は、アリシアを優しく、しかし絶対に離さないように抱きしめていた。  
銀色の騎士団が周囲を固め、鷲の旗が風に翻る。  
ガレン・ブライトは、少し後ろの馬で静かに見守っていた。

アリシアは、遠くの空を見上げ、静かに呟いた。

「王都の呪いが、まだ少し残っているわ……  
完全に解くために、もう一度、光を送る」

シルヴァンは、アリシアの髪を優しく撫でた。

「無理をするな。  
お前の体が、疲れている」

アリシアは、微笑んだ。

「大丈夫。  
みんなが苦しまないようにしたいだけ」

彼女は、目を閉じ、手を翳した。  
銀色の光が、アリシアの体から溢れ出し、遠く王都へ向かって飛んでいった。  
光は、王都の空を覆い、残った呪いの霧を吸い込み、浄化していく。  
市民たちは、光に包まれ、歓喜の声を上げた。

「聖女様……また救ってくれた！」  
「アリシア様、ありがとう！」  

ヴァレンティン王太子は、宮殿のバルコニーで、その光を見上げていた。  
彼の瞳には、涙が浮かんでいた。

「アリシア……ありがとう……  
お前は、俺を許してくれなかったけど……国を救ってくれた」

光が完全に消えると、アリシアは息を吐き、シルヴァンの胸に寄りかかった。

「これで、王都は完全に救われたわ。  
もう、呪いは残っていない」

シルヴァンは、アリシアを抱きしめ、額にキスをした。

「よくやった、アリシア。  
お前は、俺の誇りだ」

アリシアは、シルヴァンの胸に顔を埋め、静かに言った。

「シルヴァン様……ありがとう。  
あなたがいてくれて、心強いわ」

シルヴァンの瞳が、激しく輝いた。

「俺がお前を守る。  
永遠に。  
もう、誰にもお前を渡さない」

その時、ガレンが馬を近づけた。

「アリシア様……王都からの感謝の使者が、追いつきました」

使者が、息を切らして近づき、土下座した。

「アリシア様……王太子殿下より、感謝の言葉を。  
『国を救ってくれて、ありがとう。  
二度と、近づかないことを誓います』」

アリシアは、優しく頷いた。

「伝えてください。  
もう、関わりません。  
みんなが幸せに生きられるように」

使者は、頭を下げ、去っていった。

シルヴァンは、アリシアを抱き上げ、馬を進めた。

「これで、すべて終わったな」

アリシアは、シルヴァンの胸に寄りかかり、微笑んだ。

「ええ……新しい始まりね」

道中、シルヴァンはアリシアに囁いた。

「お前は、俺の皇后になる。  
レイヴン帝国で、盛大な結婚式を挙げる。  
お前の力で、帝国も救われる」

アリシアは、頷いた。

「楽しみです……シルヴァン様」

シルヴァンの腕が、さらに強くアリシアを抱きしめた。

「俺はお前を、永遠に愛する。  
お前の笑顔、お前の涙、お前のすべてが、俺のものだ。  
他の男が、お前に触れることなど、許さない」

アリシアは、くすりと笑った。

「シルヴァン様……そんなに、激しく言わなくても……」

シルヴァンは、冷たく笑った。

「激しい？　これでも、まだ足りない。  
お前を傷つけた男は、俺が許さない。  
ヴァレンティンは、もう二度と近づけない。  
だが、もし誰かがお前に近づいたら……俺は、容赦しない」

アリシアは、シルヴァンの首に腕を回し、優しくキスをした。

「ありがとう……シルヴァン様。  
私も、あなたを愛しています」

夕陽が、二人の影を長く伸ばした。  
騎士団の旗が、風に翻る。

王都では、市民たちが、光の奇跡を語り合っていた。

「アリシア様が、遠くから救ってくれた！」  
「勘違い王子は、もう終わりだな！」  

ヴァレンティンは、宮殿の奥で、一人座っていた。  
彼は、静かに呟いた。

「アリシア……お前は、幸せに……」

フィオナは、王都の外れで、ぼろぼろの服を着て座っていた。  
彼女は、空を見上げ、静かに泣いた。

「アリシア……あなたが、勝ったのね……」

アリシアの新しい人生は、シルヴァンと共に、始まっていた。