『婚約破棄された令嬢、白い結婚で第二の人生始めます ~王太子ざまぁはご褒美です~』

鷹 綾

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第18話「伯爵家の後ろ盾」



「国王陛下より、書状が届きました」

 そう言って差し出された封筒を手に取ったクリスは、封蝋を確認するなり、ふっと微笑んだ。

「……ようやく“気づいた”か」

 アイザック伯爵家が王都に送った正式抗議文から三日後。
 王家からの返書は、想像以上に“丁重”なものだった。

 そこには、こんな一文が添えられていた。


---

『リオネッタ嬢の身柄および評判を、今後いかなる王家の者も害することはないと、ここに保証する』


---

 国王の直筆による署名。
 これはもはや、“王太子の勝手な行動には責任を持たない”という、実質的な切り離し宣言だった。

「お嬢様、これで……」

 ミーナが目を輝かせる。

「ええ。これで、名実ともに“安全圏”ですわね」

 リオネッタは、紅茶をひと口飲みながら、ほっと息を吐いた。

「王家って、意外と現実的なんですね。もう少し権威とか、情とかで粘ってくると思ってました」

「王家は存続が第一ですから。“愚かな王子”より“信用ある貴族”を選ぶのは当然でしょう」

 クリスは淡々と語った。

 だが、アイザック伯爵家の“信用”とは、単なる国内での立場だけではない。

* * *

 アイザック家は隣国ヴァローデルと強固な交易関係を築いており、
 領地には外国商館も存在し、貿易税収入の規模は王家の懐にも影響を及ぼすほどだ。

 その外交ルートを通じて、王太子にまつわる“評判”や“証拠”が、徐々に国外にも広まりつつあった。

「このまま噂が広まれば、隣国からの婚姻同盟に支障が出かねません。王家としては、リオネッタ様に一切手出しをしないことで、火消しを狙ったのでしょう」

 クリスの説明に、ミーナが肩をすくめる。

「……要するに、“怒らせたくないお家”ってことですね、うち」

「そういうことだね」

 リオネッタはふと、クリスを見つめてつぶやいた。

「なんだか……わたくし、すごい“お家”に嫁ごうとしてるんですのね」

 するとクリスは少し照れくさそうに笑い、カップを傾けた。

「安心していい。君はもう、誰にも利用されないし、傷つけられない」

「……クリス様」

 その一言が、何よりもあたたかくて、胸にしみた。

 アイザック伯爵家――それは、ただの“避難所”ではなく、
 リオネッタが初めて“守られている”と感じられる、本当の居場所だった。


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