『婚約破棄された令嬢、白い結婚で第二の人生始めます ~王太子ざまぁはご褒美です~』

鷹 綾

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第24話「王太子の裏金疑惑発覚」

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「これは……一体、どういうことだ?」

 国王の執務室にて、机の上に並べられた複数の帳簿と領収書を前に、アルヴィス王太子の表情が強ばっていた。

「王家予備費から、長期的に“不明瞭な支出”が確認されております」

 宰相ヴェルノン卿が冷静に告げる。

「内装費、楽団の常駐契約、衣装代、宝飾品、娯楽用品……中でも“王太子私室内に常設された香水噴霧器”の代金は、予備費からの直接支払い。ご記憶にございますか?」

「……あれは、リリィの部屋の香りを整えるために……!」

「つまり、王族の私的な好みによる支出ということですな?」

 その場にいた廷臣たちが、じわりと視線を鋭くする。

「他にも、特定商会への発注が“相場の三倍”で継続されておりました。しかも、発注元の名義が“王太子私室”となっております」

 報告書を淡々と読み上げる補佐官の声が響く中、アルヴィスは額に汗を浮かべた。

「そ、それは……! 私は詳細など知らなかった! 側近たちが勝手に……!」

「それでは、こちらの書状は何でしょう?」

 ヴェルノン卿が示したのは、王太子の直筆署名が記された支出承認書だった。

「……!」

「殿下、すでにこれらの疑惑は、複数の商人たちの証言と一致しております。自ら出した命令が“記録に残っている”という事実に、もはや言い逃れの余地はございません」

 冷酷な声が突き刺さる。

 このとき、国王は一言も発さなかった。
 だがその沈黙は、明らかに“処分を見据えた”ものだった。

* * *

 一方、アイザック伯爵邸。

「……ふふ。やっと表に出てきましたわね」

 リオネッタは報告書を手に、静かに笑った。
 その表情に驕りはなく、ただ“終わるべきものが終わろうとしている”安堵があった。

「王家の予算を“愛人の部屋に香水を噴霧するため”に使うとは……」

 クリスが苦笑をこぼしながら、書類に目を通す。

「ある意味で、想像以上の見苦しさですね。王族でなければ、とうに牢の中ですわ」

 ミーナの鋭いコメントに、三人は顔を見合わせて、苦笑いを浮かべた。

* * *

 王宮内では、この裏金疑惑が“政治問題”として認識され始めていた。

「このままでは、王家そのものの信用に関わる……」

「継承権の見直しも視野に入れるべきでは?」

「いや、まだ早――」

「いいえ、もう遅いくらいです!」

 貴族評議会の内部で、議論は日増しに過激になっていく。

 アルヴィス王太子の名は、もはや“王国の汚点”として扱われつつあった。


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