11 / 40
第11話 教会の召喚状と、街全体の決意
しおりを挟む
### 第11話 教会の召喚状と、街全体の決意
開店から三ヶ月が過ぎ、ルヴェリアの街は私の店を中心にますます活気づいていた。
マジックポッキーは冒険者ギルドの公式推奨アイテムとなり、隣町からも買い付けの商人が来るようになった。
店は手狭になり、隣の空き店舗を借りて工房を拡張した。
従業員として、街の少女二人を雇い、簡単な作業を手伝ってもらっている。
ライアンたちは、ほぼ毎日顔を出し、材料集めや店の警護までしてくれる。
エレナが「私たち、もうアプローズの専属パーティーみたいね!」と笑うほどだ。
この朝、店を開ける準備をしていると、ギルドの使いの少年が慌てて駆け込んできた。
「アプローズさん! 大事な文書が届いてます!」
少年が差し出したのは、豪華な封蝋のついた一通の公式文書。
王国の紋章と、教会の聖印が並んで押されている。
――召喚状。
私は息を飲み、文書を開いた。
『アプローズ・フォン・エルグランドに対し
教会本部およびエルグランド公爵家の連名により、王都への出頭を命ずる。
理由:異端の疑いある回復食の製造・販売、神の奇跡の冒涜、貴族家の名誉棄損。
期日:十日以内。王都大聖堂にて正式審問を行う。
不出頭の場合、教会および王国の名において制裁を加えるものとする。』
召喚状……審問。
ついに、来た。
ライアンがすぐに駆けつけ、文書を読んで顔をしかめた。
「本気だな。教会本部と実家が組んで、お前を引きずり出そうとしてる」
店先に、常連の冒険者たちが集まり始めた。
噂は一瞬で広がった。
「アプローズさんを王都に呼び出すだって?」
「審問? ただの嫌がらせだろ!」
エレナが、拳を握った。
「行く必要なんてないわ! ここで戦う!」
ガレンが、冷静に言った。
「しかし、相手は教会本部と公爵家。王都の決定を無視すれば、この街全体が標的にされる可能性がある」
店内が、重い空気に包まれた。
私は、皆を見回して静かに微笑んだ。
「……みんな、心配してくれてありがとうございます」
ライアンが、強く言った。
「アプローズ、決めるのはお前だ。逃げるか、ここで戦うか――俺たちはどんな選択でもついていく」
私は、深呼吸して答えた。
「審問に出頭します」
店内がどよめいた。
「アプローズさん!?」
「危ないよ! 教会の審問は、異端認定されたら牢入りだぞ!」
私は、穏やかに続けた。
「でも、このまま不出頭だと、ルヴェリアが教会の制裁を受けるかもしれない。みんなに迷惑をかけたくない」
「それに……」
私は、マジックポッキーの箱を手に取った。
淡く輝くチョコの表面。
「私の力を、隠し続ける必要はもうないと思います。王都で、すべてを明かします」
ライアンの目が、驚きと理解で見開かれた。
「お前……聖女の力のことか?」
私は頷いた。
「ええ。証明してみせます。私の触れるものに宿る本物の神の恵みを。そして、アルテアの加護が偽りであることを」
店内が、静まり返った後――歓声が上がった。
「やるぜ! 聖女様の本当の力、見せてくれ!」
「教会の偽りをぶっ潰せ!」
「俺たちが護衛だ! 王都まで一緒に連れてく!」
ギルド支部長も駆けつけ、宣言した。
「ギルドとして、アプローズの護衛を公認する。最強のパーティーを組む」
ライアンが、私の手を握った。
「俺も行く。一緒に、王都で勝とう」
温かな手だった。
十日後、王都へ。
審問の場で、私は真実を明らかにする。
アルテアの阻害、教会の偽り、そして私の真の聖女の力。
甘いクッキーが、王国を変える時が来た。
街全体の決意が、私の背中を押す。
私の反撃が、いよいよ始まる。
開店から三ヶ月が過ぎ、ルヴェリアの街は私の店を中心にますます活気づいていた。
マジックポッキーは冒険者ギルドの公式推奨アイテムとなり、隣町からも買い付けの商人が来るようになった。
店は手狭になり、隣の空き店舗を借りて工房を拡張した。
従業員として、街の少女二人を雇い、簡単な作業を手伝ってもらっている。
ライアンたちは、ほぼ毎日顔を出し、材料集めや店の警護までしてくれる。
エレナが「私たち、もうアプローズの専属パーティーみたいね!」と笑うほどだ。
この朝、店を開ける準備をしていると、ギルドの使いの少年が慌てて駆け込んできた。
「アプローズさん! 大事な文書が届いてます!」
少年が差し出したのは、豪華な封蝋のついた一通の公式文書。
王国の紋章と、教会の聖印が並んで押されている。
――召喚状。
私は息を飲み、文書を開いた。
『アプローズ・フォン・エルグランドに対し
教会本部およびエルグランド公爵家の連名により、王都への出頭を命ずる。
理由:異端の疑いある回復食の製造・販売、神の奇跡の冒涜、貴族家の名誉棄損。
期日:十日以内。王都大聖堂にて正式審問を行う。
不出頭の場合、教会および王国の名において制裁を加えるものとする。』
召喚状……審問。
ついに、来た。
ライアンがすぐに駆けつけ、文書を読んで顔をしかめた。
「本気だな。教会本部と実家が組んで、お前を引きずり出そうとしてる」
店先に、常連の冒険者たちが集まり始めた。
噂は一瞬で広がった。
「アプローズさんを王都に呼び出すだって?」
「審問? ただの嫌がらせだろ!」
エレナが、拳を握った。
「行く必要なんてないわ! ここで戦う!」
ガレンが、冷静に言った。
「しかし、相手は教会本部と公爵家。王都の決定を無視すれば、この街全体が標的にされる可能性がある」
店内が、重い空気に包まれた。
私は、皆を見回して静かに微笑んだ。
「……みんな、心配してくれてありがとうございます」
ライアンが、強く言った。
「アプローズ、決めるのはお前だ。逃げるか、ここで戦うか――俺たちはどんな選択でもついていく」
私は、深呼吸して答えた。
「審問に出頭します」
店内がどよめいた。
「アプローズさん!?」
「危ないよ! 教会の審問は、異端認定されたら牢入りだぞ!」
私は、穏やかに続けた。
「でも、このまま不出頭だと、ルヴェリアが教会の制裁を受けるかもしれない。みんなに迷惑をかけたくない」
「それに……」
私は、マジックポッキーの箱を手に取った。
淡く輝くチョコの表面。
「私の力を、隠し続ける必要はもうないと思います。王都で、すべてを明かします」
ライアンの目が、驚きと理解で見開かれた。
「お前……聖女の力のことか?」
私は頷いた。
「ええ。証明してみせます。私の触れるものに宿る本物の神の恵みを。そして、アルテアの加護が偽りであることを」
店内が、静まり返った後――歓声が上がった。
「やるぜ! 聖女様の本当の力、見せてくれ!」
「教会の偽りをぶっ潰せ!」
「俺たちが護衛だ! 王都まで一緒に連れてく!」
ギルド支部長も駆けつけ、宣言した。
「ギルドとして、アプローズの護衛を公認する。最強のパーティーを組む」
ライアンが、私の手を握った。
「俺も行く。一緒に、王都で勝とう」
温かな手だった。
十日後、王都へ。
審問の場で、私は真実を明らかにする。
アルテアの阻害、教会の偽り、そして私の真の聖女の力。
甘いクッキーが、王国を変える時が来た。
街全体の決意が、私の背中を押す。
私の反撃が、いよいよ始まる。
8
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
悪役令嬢は手加減無しに復讐する
田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。
理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。
婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。
彼女の離縁とその波紋
豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
幼馴染以上、婚約者未満の王子と侯爵令嬢の関係
紫月 由良
恋愛
第二王子エインの婚約者は、貴族には珍しい赤茶色の髪を持つ侯爵令嬢のディアドラ。だが彼女の冷たい瞳と無口な性格が気に入らず、エインは婚約者の義兄フィオンとともに彼女を疎んじていた。そんな中、ディアドラが学院内で留学してきた男子学生たちと親しくしているという噂が広まる。注意しに行ったエインは彼女の見知らぬ一面に心を乱された。しかし婚約者の異母兄妹たちの思惑が問題を引き起こして……。
顔と頭が良く性格が悪い男の失恋ストーリー。
※流血シーンがあります。(各話の前書きに注意書き+次話前書きにあらすじがあるので、飛ばし読み可能です)
【書籍化決定】憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新
7月31日完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる