婚約破棄されたので回復クッキーでスイーツ店始めました～義妹の阻害を解いて真の聖女覚醒、世界に甘い奇跡を～

第34話 レグナムの謝罪と、祭典準備

第34話　レグナムの謝罪と、祭典準備

帝国アストリアの宿、ロビー。

レグナム王子が、私の前に立っていた。

数年ぶりの再会。

かつての金色の髪は少し色褪せ、青い瞳には深い疲れが宿っている。

華やかな王子服ではなく、シンプルな旅装。

彼は、静かに頭を下げた。

「アプローズ……久しぶりだ」

ライアンが、私の前に一歩出て警戒した。

エリスが、私のドレスを握りしめて隠れた。

私は、穏やかに答えた。

「レグナム殿下……どうして帝国に？」

彼は、苦しげに微笑んだ。

「王位を弟に譲ってから、旅を続けている。様々な国を見て、様々な力を知った。そして、君の噂を……真の聖女の奇跡を、帝国でも聞いた」

レグナムは、ゆっくりと膝をついた。

周囲の宿の客たちが、どよめいた。

「謝罪をさせてくれ。あの舞踏会で、君を婚約破棄したこと。聖女の素養がないと、君を捨てたこと。すべて、僕の間違いだった」

私は、静かに彼を見下ろした。

かつての傷が、少し疼いた。

だが、今は違う。

私の人生は、幸せに満ちている。

「殿下、もう過去のことです。私は、今とても幸せです」

レグナムは、涙を浮かべた。

「君の菓子を、帝国でも食べた。回復効果だけでなく、心まで癒やされる。あの時、君の力を認めていれば……僕の王国は、もっと早く変わっていたのに」

ライアンが、低く言った。

「謝罪は受け取った。もう、立ち上がってくれ」

レグナムは、ゆっくり立ち上がった。

「ありがとう……アプローズ。君の祭典での活躍を、楽しみにしている。帝国の民に、君の奇跡を見せてやってくれ」

彼は、静かに頭を下げ、宿を去っていった。

背中を見送りながら、私は少し胸が軽くなった。

過去の影は、もう私を縛らない。

エリスが、不思議そうに聞いた。

「ママ、あのおじさん、誰？」

私は、娘の頭を撫でた。

「昔の知り合いよ。もう、大丈夫」

ライアンが、私を抱き寄せた。

「よくやったな」

祭典準備は、急ピッチで進んだ。

帝国の宮廷シェフたちと協力し、大量のスイーツを焼く。

新作のファイア・チョコタルトは、帝国の戦士たちに試食させ、大好評。

「これで、魔物討伐が楽になる！」

スターライト・パフェは、貴族令嬢たちに絶賛された。

「心が輝くよう……」

皇帝も、試食に訪れ、満足げに頷いた。

「祭典の目玉にしよう。アプローズ殿の菓子を、帝国の象徴として」

準備の合間、エリスとライアンと三人で帝国の街を散策した。

魔法の市場、浮遊する噴水、ドラゴンが飛ぶ空。

エリスが、目を輝かせて喜ぶ。

「ママ、すごいとこ！」

ライアンが、私の手を握った。

「家族で、世界を回ろう」

私は頷いた。

「ええ。一緒に」

レグナムの謝罪は、過去を完全に清算した。

私の心は、自由だ。

祭典準備は、順調に進む。

帝国の民に、私の甘い奇跡を届ける日が、近づいている。

みんなの笑顔のために。

家族の幸せのために。

帝国の魔法の光が、店を照らす。

私の物語は、最後の大きな舞台へ。

甘いクライマックスが、待っている。