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第6話 届いた一通の書状
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第6話 届いた一通の書状
それは、あまりにも簡潔な書状だった。
装飾は最低限。
言葉も、感情も、余計な修辞もない。
――それなのに。
「……不思議ですわね」
エテルナは、何度目かになる書状を読み返しながら、そう呟いた。
読みやすい。
理解しやすい。
そして、何より――無駄がない。
(この方……書状の時点で、もう人柄が分かりますわ)
伯爵家の書斎で、紅茶を飲みながら、エテルナは内容を頭の中で整理する。
・婚姻は、両家の安定を目的とする
・感情的な役割の強要はしない
・白い結婚を前提とする
・必要であれば、協力関係を築く
・不要であれば、干渉しない
――条件としては、これ以上なく明確だった。
「冷徹、ですか」
世間の評価を思い出し、小さく息を吐く。
だが、エテルナにとっては、
感情論で振り回される相手より、
よほど信頼できる。
「……お父様」
エテルナは、向かいに座る伯爵に視線を向けた。
「この方、無駄なことをなさらない方ですね」
「ああ」
伯爵は即答した。
「グレイヴ公爵セーブル。
結果を出すためなら、遠回りを嫌う男だ」
「王宮とは、正反対ですわね」
「だからこそだ」
伯爵は、静かに言葉を続ける。
「彼は、エテルナ。
“可愛げ”ではなく、“能力”を条件にしてきた」
その言葉に、エテルナの胸が、わずかに鳴った。
(……それだけで、十分です)
同情も、慰めも、
「可哀想だ」という視線も、もう要らない。
必要なのは――
正当な評価だけ。
「……直接、お会いすることは可能でしょうか」
エテルナがそう言うと、伯爵は少しだけ目を細めた。
「すでに、先方は準備を整えている」
「早いですわね」
「無駄を嫌う男だと言っただろう」
その日の午後。
エテルナは、自室で最低限の荷を整えていた。
豪華なドレスも、宝石も、必要ない。
――必要なのは、自分自身だけ。
(久しぶりですわね。
“期待されない場”に行くのは)
そう思うと、
不思議と心が軽くなる。
――一方、その頃。
隣国グレイヴ公爵領。
「……婚約破棄、か」
執務机に向かうセーブルは、淡々と報告書を読み終えた。
「王子は、能力を切り捨てた」
それだけ言って、書類を閉じる。
側近が、慎重に口を開く。
「……よろしいのですか?
世間では“可哀想な令嬢”という扱いですが」
「問題ない」
即答だった。
「感情で選ぶ必要はない。
私は――結果を出せる相手が欲しい」
セーブルは、ペンを取り、短く記す。
条件に合致。問題なし。
「……会って判断する」
それ以上の言葉はなかった。
だがその沈黙の中には、
確かな決断が宿っていた。
そして数日後。
エテルナのもとに、
正式な招待状が届く。
差出人は――
隣国公爵 セーブル・グレイヴ。
封を切りながら、エテルナは静かに微笑んだ。
(……静かに暮らす予定でしたのに)
どうやら。
次の舞台は、想像以上に“居心地が良さそう”だった。
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それは、あまりにも簡潔な書状だった。
装飾は最低限。
言葉も、感情も、余計な修辞もない。
――それなのに。
「……不思議ですわね」
エテルナは、何度目かになる書状を読み返しながら、そう呟いた。
読みやすい。
理解しやすい。
そして、何より――無駄がない。
(この方……書状の時点で、もう人柄が分かりますわ)
伯爵家の書斎で、紅茶を飲みながら、エテルナは内容を頭の中で整理する。
・婚姻は、両家の安定を目的とする
・感情的な役割の強要はしない
・白い結婚を前提とする
・必要であれば、協力関係を築く
・不要であれば、干渉しない
――条件としては、これ以上なく明確だった。
「冷徹、ですか」
世間の評価を思い出し、小さく息を吐く。
だが、エテルナにとっては、
感情論で振り回される相手より、
よほど信頼できる。
「……お父様」
エテルナは、向かいに座る伯爵に視線を向けた。
「この方、無駄なことをなさらない方ですね」
「ああ」
伯爵は即答した。
「グレイヴ公爵セーブル。
結果を出すためなら、遠回りを嫌う男だ」
「王宮とは、正反対ですわね」
「だからこそだ」
伯爵は、静かに言葉を続ける。
「彼は、エテルナ。
“可愛げ”ではなく、“能力”を条件にしてきた」
その言葉に、エテルナの胸が、わずかに鳴った。
(……それだけで、十分です)
同情も、慰めも、
「可哀想だ」という視線も、もう要らない。
必要なのは――
正当な評価だけ。
「……直接、お会いすることは可能でしょうか」
エテルナがそう言うと、伯爵は少しだけ目を細めた。
「すでに、先方は準備を整えている」
「早いですわね」
「無駄を嫌う男だと言っただろう」
その日の午後。
エテルナは、自室で最低限の荷を整えていた。
豪華なドレスも、宝石も、必要ない。
――必要なのは、自分自身だけ。
(久しぶりですわね。
“期待されない場”に行くのは)
そう思うと、
不思議と心が軽くなる。
――一方、その頃。
隣国グレイヴ公爵領。
「……婚約破棄、か」
執務机に向かうセーブルは、淡々と報告書を読み終えた。
「王子は、能力を切り捨てた」
それだけ言って、書類を閉じる。
側近が、慎重に口を開く。
「……よろしいのですか?
世間では“可哀想な令嬢”という扱いですが」
「問題ない」
即答だった。
「感情で選ぶ必要はない。
私は――結果を出せる相手が欲しい」
セーブルは、ペンを取り、短く記す。
条件に合致。問題なし。
「……会って判断する」
それ以上の言葉はなかった。
だがその沈黙の中には、
確かな決断が宿っていた。
そして数日後。
エテルナのもとに、
正式な招待状が届く。
差出人は――
隣国公爵 セーブル・グレイヴ。
封を切りながら、エテルナは静かに微笑んだ。
(……静かに暮らす予定でしたのに)
どうやら。
次の舞台は、想像以上に“居心地が良さそう”だった。
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