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第40話(最終話) 選び続ける夫婦
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第40話(最終話) 選び続ける夫婦
朝は、変わらずやってきた。
窓から差し込む光も、
廊下に響く足音も、
昨日までと何一つ違わない。
――それでいい、と
エテルナは思った。
(……終わったのではなく、
続いているのですわね)
白い結婚は、
いつの間にか
物語の外へ消えていた。
壊れたのではない。
忘れられたのでもない。
役目を終えただけ。
朝食の席。
「おはよう」
「ええ。
おはようございます」
声は穏やかで、
視線は自然だった。
特別な言葉も、
宣言もない。
だが。
(……昨日までとは、
同じではありません)
隣にいることが、
説明不要になった。
午前。
二人は並んで執務をこなす。
判断は速く、
確認は最小限。
互いの考えを、
もう推測する必要がなかった。
それは、
信頼というより――
習慣に近い。
昼。
領民代表が挨拶に訪れる。
「公爵様、
奥方様」
その呼び方は、
もう誰も迷わない。
「お二人がいらっしゃると、
この領地は落ち着きます」
エテルナは、
小さく微笑んだ。
(……落ち着く、ですか)
それは、
劇的な愛よりも
ずっと嬉しい言葉だった。
午後。
中庭を歩く。
並んだ歩幅。
同じ速度。
触れないまま、
離れもしない。
「……結局、
私たちは
何も変えなかったな」
セーブルが、
ぽつりと呟く。
「いいえ」
エテルナは、
首を横に振った。
「たくさん、
選び直しましたわ」
一日ごとに。
一歩ごとに。
越えないことも、
待つことも、
終わらせることも。
すべて、
自分たちで選んだ。
「……それで、
よかった」
セーブルの声は、
低く、確かだった。
夕刻。
邸へ戻る。
扉の前で立ち止まる。
「……今日は」
エテルナが、
少しだけ間を置いて言う。
「同じ部屋で
お茶を飲みません?」
誘いは、
ささやかだった。
だが、
意味は大きい。
「……ああ」
セーブルは、
迷わず頷いた。
それだけで、
十分だった。
夜。
灯りの下、
向かい合って座る。
距離は、
ほんの少し近い。
だが、
急がない。
越えるかどうかは、
もう問題ではない。
選び続けている
という事実が、
すでに答えだった。
「……私」
エテルナは、
静かに言った。
「あなたとなら、
変わってもいいと
思えます」
セーブルは、
何も言わずに
その言葉を受け取る。
それでいい。
言葉を重ねる必要はない。
白い結婚は終わった。
猶予も終わった。
けれど、
物語は終わらない。
これからも、
選ぶ。
迷う。
選び直す。
――それを、
二人で続けていく。
それが、
エテルナとセーブルの
夫婦の形だった。
派手ではない。
だが、確か。
今日もまた、
互いを選んだ。
それだけで、
十分だった。
---
朝は、変わらずやってきた。
窓から差し込む光も、
廊下に響く足音も、
昨日までと何一つ違わない。
――それでいい、と
エテルナは思った。
(……終わったのではなく、
続いているのですわね)
白い結婚は、
いつの間にか
物語の外へ消えていた。
壊れたのではない。
忘れられたのでもない。
役目を終えただけ。
朝食の席。
「おはよう」
「ええ。
おはようございます」
声は穏やかで、
視線は自然だった。
特別な言葉も、
宣言もない。
だが。
(……昨日までとは、
同じではありません)
隣にいることが、
説明不要になった。
午前。
二人は並んで執務をこなす。
判断は速く、
確認は最小限。
互いの考えを、
もう推測する必要がなかった。
それは、
信頼というより――
習慣に近い。
昼。
領民代表が挨拶に訪れる。
「公爵様、
奥方様」
その呼び方は、
もう誰も迷わない。
「お二人がいらっしゃると、
この領地は落ち着きます」
エテルナは、
小さく微笑んだ。
(……落ち着く、ですか)
それは、
劇的な愛よりも
ずっと嬉しい言葉だった。
午後。
中庭を歩く。
並んだ歩幅。
同じ速度。
触れないまま、
離れもしない。
「……結局、
私たちは
何も変えなかったな」
セーブルが、
ぽつりと呟く。
「いいえ」
エテルナは、
首を横に振った。
「たくさん、
選び直しましたわ」
一日ごとに。
一歩ごとに。
越えないことも、
待つことも、
終わらせることも。
すべて、
自分たちで選んだ。
「……それで、
よかった」
セーブルの声は、
低く、確かだった。
夕刻。
邸へ戻る。
扉の前で立ち止まる。
「……今日は」
エテルナが、
少しだけ間を置いて言う。
「同じ部屋で
お茶を飲みません?」
誘いは、
ささやかだった。
だが、
意味は大きい。
「……ああ」
セーブルは、
迷わず頷いた。
それだけで、
十分だった。
夜。
灯りの下、
向かい合って座る。
距離は、
ほんの少し近い。
だが、
急がない。
越えるかどうかは、
もう問題ではない。
選び続けている
という事実が、
すでに答えだった。
「……私」
エテルナは、
静かに言った。
「あなたとなら、
変わってもいいと
思えます」
セーブルは、
何も言わずに
その言葉を受け取る。
それでいい。
言葉を重ねる必要はない。
白い結婚は終わった。
猶予も終わった。
けれど、
物語は終わらない。
これからも、
選ぶ。
迷う。
選び直す。
――それを、
二人で続けていく。
それが、
エテルナとセーブルの
夫婦の形だった。
派手ではない。
だが、確か。
今日もまた、
互いを選んだ。
それだけで、
十分だった。
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