「婚約破棄された令嬢の異世界カフェ革命~甘い復讐と運命の恋~」

鷹 綾

文字の大きさ
29 / 29

第30話: 永遠の甘い日々(大団円)

しおりを挟む
第30話: 永遠の甘い日々(大団円)

レオンが生まれて五年、リアが六歳、二番目の娘リリアが二歳になった頃。

私のカフェは、大陸全土に三十を超える支店を展開する「甘い魔法帝国」になっていた。王都本店は王国遺産に指定され、毎日世界中から観光客が訪れる。甘い香りは、戦争を防ぎ、平和を象徴するものとして、歴史書にまで記された。

私は庭のテラスで、家族みんなを見守っていた。

レオンは五歳。銀髪を風に揺らし、小さな杖で魔法を練習中。リオンにそっくりな青い瞳が、真剣に輝く。

「パパ、見て! 光の花、咲いたよ!」

庭に小さな光の花が咲き乱れる。

リアは六歳。獣人の耳と尻尾を元気に動かし、レオンを追いかけ回す。

「レオンくん、待って! リアお姉ちゃんが守ってあげる!」

リリアは二歳。私の黒髪とリオンの瞳を受け継いだ可愛い女の子。おっとりした性格で、リアの尻尾を掴んで笑う。

ミアとガルは、三人目の子を妊娠中。ミアは相変わらず店を手伝い、獣人スタッフをまとめている。

父は孫たちに囲まれ、幸せそうに昔話を語る。

伯爵は「わしの領地は、エレナ嬢のスイーツで世界一じゃ!」と自慢し続け、孫たちにおもちゃを買い与える。

リオンが私の隣に座り、お腹に手を当てた。

――今、私は四番目の子を妊娠中だ。

「エレナ、今日も赤ちゃん、元気か?」

「ええ、たくさん蹴ってるわ。あなたの子だから、きっと活発よ」

リオンが優しくキスを落とした。

「君と出会えて、俺の人生は変わった。ありがとう、エレナ」

「私もよ。婚約破棄されたあの日から、すべてがここに繋がった」

庭で子供たちが笑い合う。

レオンが魔法でケーキを作ろうと試み、失敗してクリームまみれになる。

リアが大笑い、リリアが拍手。

ミアが駆け寄って拭き、ガルが抱き上げる。

父と伯爵が拍手。

みんなの笑顔が、甘い香りに包まれる。

昔の敵――アレックス王子は、今では良き友人。

時折、子供を連れて店を訪れ、過去を振り返る。

「エレナ、君の勝ちだったな」

「ええ。でも、今はみんなの勝ちよ」

リリアは修道院で穏やかに暮らし、時々手紙を寄こす。

「エレナ様、あなたのスイーツが、私の心を癒しました」

ヴァレンティア家は寄付を続け、孤児院を支援している。

私の復讐は、完全に終わった。

甘いスイーツで、すべてを許し、すべてを手に入れた。

カフェは、家族の愛で永遠に続く。

大陸中の人々が、私のスイーツで笑顔になる。

子供たちが成長し、新しい物語を紡ぐ。

レオンは魔法使いに、リアは冒険者に、リリアはカフェの跡継ぎに。

そして、お腹の子は――未来を照らす光に。

夕陽が庭を染める頃。

リオンが私を抱きしめた。

「エレナ、愛してる。永遠に」

「私もよ、リオン。みんなと、永遠に」

子供たちが駆け寄り、みんなで抱き合う。

甘い香りが、空に広がる。

婚約破棄された令嬢は、異世界で最強のカフェを築き、仇をざまぁし、愛する家族と幸せに暮らした。

甘い魔法は、永遠に続く。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

何か、勘違いしてません?

シエル
恋愛
エバンス帝国には貴族子女が通う学園がある。 マルティネス伯爵家長女であるエレノアも16歳になったため通うことになった。 それはスミス侯爵家嫡男のジョンも同じだった。 しかし、ジョンは入学後に知り合ったディスト男爵家庶子であるリースと交友を深めていく… ※世界観は中世ヨーロッパですが架空の世界です。

聖女に負けた侯爵令嬢 (よくある婚約解消もののおはなし)

蒼あかり
恋愛
ティアナは女王主催の茶会で、婚約者である王子クリストファーから婚約解消を告げられる。そして、彼の隣には聖女であるローズの姿が。 聖女として国民に、そしてクリストファーから愛されるローズ。クリストファーとともに並ぶ聖女ローズは美しく眩しいほどだ。そんな二人を見せつけられ、いつしかティアナの中に諦めにも似た思いが込み上げる。 愛する人のために王子妃として支える覚悟を持ってきたのに、それが叶わぬのならその立場を辞したいと願うのに、それが叶う事はない。 いつしか公爵家のアシュトンをも巻き込み、泥沼の様相に……。 ラストは賛否両論あると思います。納得できない方もいらっしゃると思います。 それでも最後まで読んでいただけるとありがたいです。 心より感謝いたします。愛を込めて、ありがとうございました。

無表情な奴と結婚したくない?大丈夫ですよ、貴方の前だけですから

榎夜
恋愛
「スカーレット!貴様のような感情のない女となんて結婚できるか!婚約破棄だ!」 ......そう言われましても、貴方が私をこうしたのでしょう? まぁ、別に構いませんわ。 これからは好きにしてもいいですよね。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

聞き分けよくしていたら婚約者が妹にばかり構うので、困らせてみることにした

今川幸乃
恋愛
カレン・ブライスとクライン・ガスターはどちらも公爵家の生まれで政略結婚のために婚約したが、お互い愛し合っていた……はずだった。 二人は貴族が通う学園の同級生で、クラスメイトたちにもその仲の良さは知られていた。 しかし、昨年クラインの妹、レイラが貴族が学園に入学してから状況が変わった。 元々人のいいところがあるクラインは、甘えがちな妹にばかり構う。 そのたびにカレンは聞き分けよく我慢せざるをえなかった。 が、ある日クラインがレイラのためにデートをすっぽかしてからカレンは決心する。 このまま聞き分けのいい婚約者をしていたところで状況は悪くなるだけだ、と。 ※ざまぁというよりは改心系です。 ※4/5【レイラ視点】【リーアム視点】の間に、入れ忘れていた【女友達視点】の話を追加しました。申し訳ありません。

【完結】ロザリンダ嬢の憂鬱~手紙も来ない 婚約者 vs シスコン 熾烈な争い

buchi
恋愛
後ろ盾となる両親の死後、婚約者が冷たい……ロザリンダは婚約者の王太子殿下フィリップの変容に悩んでいた。手紙もプレゼントも来ない上、夜会に出れば、他の令嬢たちに取り囲まれている。弟からはもう、婚約など止めてはどうかと助言され…… 視点が話ごとに変わります。タイトルに誰の視点なのか入っています(入ってない場合もある)。話ごとの文字数が違うのは、場面が変わるから(言い訳)

私を見下していた婚約者が破滅する未来が見えましたので、静かに離縁いたします

ほーみ
恋愛
 その日、私は十六歳の誕生日を迎えた。  そして目を覚ました瞬間――未来の記憶を手に入れていた。  冷たい床に倒れ込んでいる私の姿。  誰にも手を差し伸べられることなく、泥水をすするように生きる未来。  それだけなら、まだ耐えられたかもしれない。  だが、彼の言葉は、決定的だった。 「――君のような役立たずが、僕の婚約者だったことが恥ずかしい」

処理中です...