完璧すぎるので捨てられましたが、冷徹公爵と“白い結婚”したら元婚約者が先に壊れました

鷹 綾

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第35話 白い結婚の終わりを、誰が告げるのか

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第35話 白い結婚の終わりを、誰が告げるのか

 朝。

 セレナは、執務机に置かれた一通の書簡を見つめていた。
 王都印。
 だが、差出人は評議会ではない。

(……貴族院長)

 封を切る前から、内容は察せた。

 ――確認。
 ――整理。
 ――次の段階。

 丁寧な言葉で包まれた、
 現実の要求。

 ***

 同じ頃、クロードのもとにも、
 同趣旨の書簡が届いていた。

「……やはり来たか」

 机に置き、深く息を吐く。

(沈黙が終われば、
 次は“明文化”だ)

 王都は、
 白い結婚を“仮の状態”として処理し始めている。

 ***

 昼前。

 二人は、自然と同じ書斎に集まっていた。

 互いに、
 何も言わなくても分かる。

「……届きましたね」 「ああ」

 セレナは、書簡を差し出した。

「“白い結婚の継続意思”の確認」 「もしくは」 「……解消」

 言葉にした瞬間、
 空気が静かに変わる。

 ***

「外が、
 終わりを決めようとしています」  セレナが言う。

「だが」  クロードが低く答える。 「決めるのは、
 外ではない」

 セレナは、彼を見た。

「ええ。
 だからこそ――」

 彼女は、はっきり言った。

「誰が告げるのか、
 という問題になります」

 ***

 クロードは、少し考え、
 ゆっくり言った。

「私が言えば、
 “責任ある当主の決断”になる」 「ええ」

「君が言えば」 「……“選ばれた妻の意思”になります」

 どちらも、
 間違いではない。

 だが――
 意味が違う。

 ***

 セレナは、静かに手を組んだ。

「私は」  迷いなく言う。 「もう、“選ばれなかった側”ではありません」

 クロードは、息をのむ。

「だから」  セレナは続けた。 「白い結婚の終わりを告げるなら、
 私は“受け身”ではいたくない」

 それは、
 告白よりも強い言葉だった。

 ***

 クロードは、しばらく黙ってから、
 はっきり答えた。

「……なら」 「……?」 「二人で告げる」

 セレナは、目を見開いた。

「それは……」 「逃げでも、
 押し付けでもない」

 彼は、真っ直ぐ言った。

「白い結婚の始まりが、
 外の都合だったのなら」 「……」 「終わりは、
 内側の意思でなければならない」

 ***

 セレナは、ゆっくり微笑んだ。

「それなら」 「……?」 「私も、
 覚悟を持てますわ」

 言葉にする覚悟。
 言葉にしない勇気。

 その“次”に必要なのは、
 言葉を共有する責任だった。

 ***

 夕刻。

 返書は、まだ書かれない。

 だが、
 二人の中では決まっている。

 終わりは、
 外から与えられるものではない。

 誰か一人が、
 背負うものでもない。

 ***

 夜。

 それぞれの部屋。

 セレナは、静かに呟いた。

「……白い結婚の終わりを、
 誰が告げるのか」

 答えは、もうある。

 クロードも、同じ夜空を見上げていた。

(……私たちだ)

 まだ、告げてはいない。

 だが。

 終わりが“選択”になった瞬間、
 白い結婚は、
 すでに終わりへ向かっていた。


---
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