婚約破棄はあなたの意思でしたわね? ~王太子を廃嫡に追い込み、義妹を平民に落とした公爵令嬢は新時代の王妃になります~

鷹 綾

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第二十九話 国外追放命令

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第二十九話 国外追放命令

廃嫡から三日後。

王宮に、再び重臣たちが集められた。

議題はひとつ。

アルヴァリオの処遇。

王位継承権は剥奪された。

だが、それだけでは終わらない。

王家の信用は、まだ揺らいでいる。

「国内に留めるのは危険です」

財務卿が静かに言う。

「借入問題は未解決。担保契約は残っております」

軍務卿が続く。

「不満を抱く者が、元王太子を旗印にする可能性も」

国王は沈黙する。

息子である。

だが、王でもある。

「……結論を出そう」

重い声。

「アルヴァリオは国外へ移す」

空気が固まる。

「王都より離れた寒冷地、北方辺境へ」

「身分は」

「王族籍は維持。ただし王位に関わる一切の権限を永久停止」

事実上の追放。

王都から切り離す。

扉が開き、アルヴァリオが呼ばれる。

彼は静かに前へ出た。

すでに抵抗する気力はない。

「処遇が決まった」

国王が告げる。

「北方辺境へ移れ」

アルヴァリオは一瞬、目を閉じる。

「……国外、ですか」

「そうだ」

短い答え。

「王都への立ち入りは許可制とする」

彼はゆっくりと頷いた。

怒りは湧かない。

失うものは、もうほとんどない。

「いつ出発を」

「七日後」

父と息子の会話とは思えない、冷たいやり取り。

公爵邸。

報告が届く。

「元王太子、国外追放命令」

私は静かに紅茶を置く。

「北方ですか」

「はい。王都から遠く離れた地でございます」

私は頷く。

「妥当ですね」

怒りも歓喜もない。

それは当然の帰結。

王位を担保に借金をした男を、王都に置くことはできない。

王宮。

アルヴァリオは私室を見渡す。

豪奢な家具。

壁に掛けられた紋章。

すべてが、もう自分のものではない。

「……ここまでか」

低く呟く。

守ると誓った未来。

王になるはずの道。

すべてが消えた。

侍従が静かに言う。

「ご出立の準備を」

かつてなら、誰もが頭を垂れた。

今は、事務的だ。

王都では噂が広がる。

「追放だそうよ」
「北方へ」
「完全に終わった」

茶会で令嬢が囁く。

「舞踏会の夜が嘘のよう」

あの夜、彼は勝者だった。

今は違う。

公爵邸の庭。

私は夜風を感じる。

「国外ですか」

執事が言う。

「ええ」

私は静かに答える。

「戻る場所はありませんね」

王太子は廃嫡。

義妹は平民落ち。

そして今、国外追放。

最強ざまぁは、形になった。

だが。

まだ一つ、残っている。

元王太子が、最後に縋る相手。

それは――

かつて自ら切り捨てた女性。

嵐は終わらない。

次は、最後の懇願。

そして、決定的な格の違いが示される。
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