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2-2 グレイス家の家族と、公爵の胸に芽生えるもの
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第2章 2-2 グレイス家の家族と、公爵の胸に芽生えるもの
セレナがグレイス家に迎えられて十日ほどが過ぎた頃、朝の空気にどこか張りつめた気配があった。
侍女たちが慌ただしく廊下を行き来し、屋敷全体がそわそわしている。
「アリス、今日は何かあるの?」
「はい! 本日は――公爵様のご家族が本邸にお戻りになるのです!」
「えっ……!」
セレナは驚いて思わず声を上げた。
(そ、そういえば……私は契約上とはいえ、公爵夫人。
ご家族に会うことになるのね……)
胸が緊張で少し締め付けられる。
ブランシェット家では家族と顔を合わせることすら苦痛だったから、家族の前に立つという行為が、無意識に不安を呼び起こす。
「大丈夫ですよ、セレナ様。
旦那様のご両親も、お兄様も、とてもお優しい方々です」
「そ、そう……なのですね」
セレナは胸に手を当て、深呼吸をした。
――大丈夫。ここはブランシェット家ではない。
誰も自分を否定したり、責めたりはしない。
◇
正午過ぎ。
大扉が開き、グレイス家の家族が次々と屋敷へ入ってきた。
「アーヴィング! 久しぶりだねぇ!」
豪快な笑い声を響かせたのは、公爵の兄――ダリウス・グレイス伯爵だ。
見た目はアーヴィングに似ているが、性格はまるで逆で、快活で人懐っこい。
その後ろからは、上品で落ち着いた雰囲気の女性が続く。
「あなた……声が大きいわよ。屋敷中に響いてしまいます」
「ははは、悪い悪い!」
彼女はアーヴィングの母、エレオノーラ公爵夫人。
優しい眼差しで屋敷を見回している。
さらに最後に現れたのは、堂々とした雰囲気の男性――公爵家の当主であり、アーヴィングの父、レオンハルト公爵だ。
「アーヴィング。領地運営、ご苦労だった」
「父上。お帰りなさいませ」
アーヴィングは深く頭を下げた。
普段は冷たく落ち着いている彼が、家族の前では少しだけ柔らかい表情になる。
(……素敵な家族。皆さん、温かい雰囲気)
セレナが遠巻きに見ていると、ダリウスが声を張り上げた。
「ところでアーヴィング! 手紙に書いてあった“妻を迎えた”って話は本当なのか!?」
「兄上、声が……」
「でかいって? ははは! で、どこだ? 我が弟の妻となった女性は!」
セレナは驚き、思わずアリスの後ろに隠れようとした。
だがアリスがそっと背中を押す。
「セレナ様、大丈夫です。前へ」
「……はい」
セレナは緊張した面持ちで家族の前に進み出る。
「はじめまして。セレナ・グレイスと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
深く礼をすると、ダリウスがぱっと笑顔になった。
「おおっ! 本当に綺麗な方じゃないか!
アーヴィング、お前にこんな美しい妻ができるとはな!」
「……兄上、誤解を招く言い方はやめろ」
「はっはっは! いやいや、驚いたぞ!」
エレオノーラ夫人も上品な微笑みを見せ、軽く頭を下げた。
「セレナさん。ようこそグレイス家へ。
息子が……まぁ、不器用なところがありますが、どうぞよろしくお願いしますね」
「は、はい……こちらこそ、よろしくお願いいたします」
その瞬間。
(優しい……!)
セレナの胸は温かくなり、言いようのない安心感に包まれた。
ブランシェット家のように冷たく突き放すこともなく、
ましてや身分を盾に威圧することもない。
ただ純粋に“歓迎”してくれている。
(……こんな家族が存在するなんて)
胸がじんと痛くなった。
◇
レオンハルト公爵が、ゆっくりとセレナに歩み寄る。
「セレナさん。息子が世話になっているようだね」
「い、いえ! そんな……私こそ、助けていただいてばかりで……」
すると、公爵はふっと優しい笑みを浮かべた。
「アーヴィングが自ら誰かを助けるというのは、滅多にないことだ。
きっと君は、彼にとって特別な存在なのだろう」
「と、とくべつ……!?」
セレナの顔がゆでたこ状態になった。
「父上、誤解を招く言い方は――」
「誤解ではないのではないか?」
「……っ」
アーヴィングがわずかに顔を赤くして目をそらす。
その珍しい様子に、セレナは心臓が跳ねるのを感じた。
(え……公爵様って、照れることがあるんだ……?)
その瞬間、屋敷の女性使用人たちが小声で盛り上がる。
「奥様、とてもお綺麗……!」
「旦那様があんな顔をするの初めて見た!」
「もしかして……恋の予感……?」
くすくすとした声に、セレナも思わず俯いた。
(恋なんて……そんなはず……だって白い結婚で、干渉しないって……)
頭では理解しているのに、胸の奥がじわりと温かくなる。
◇
その日の夕食。
グレイス家の家族は和やかな雰囲気で食卓を囲んでいた。
「セレナさん、こちらの料理はお口に合うかしら?」
「はい、とても美味しいです!」
「それは良かったわ。アーヴィングは食に無頓着だから、味の好みを聞いても“普通でいい”としか言わないのよ」
「ふ、普通で充分だろう……」
アーヴィングのささやかな反論も、家族には可愛く聞こえるらしい。
そしてダリウスが豪快に笑いながら、セレナに話しかける。
「それにしても、アーヴィングが妻を迎えたなんて本当に驚いた!
お前、恋愛に興味ないんじゃなかったのか?」
「……興味はない」
「言い切るねぇ! でもその妻がこれほどの美人なら、興味くらい出てくるんじゃないか?」
「それは――」
アーヴィングは口を閉じ、視線を逸らした。
ちらりとセレナに向いたその瞳に、確かな“何か”が宿る。
(え……これ、目が合った?)
胸がきゅっと締まる。
(どうしよう……こんな気持ち、知らない……)
◇
食後、エレオノーラ夫人がそっとセレナを廊下に誘った。
「セレナさん。少しお話ししてもよろしいかしら?」
「はい」
二人で静かな回廊を歩く。
暖炉の火が揺れ、その光が壁に柔らかい影を落とす。
「先ほどは驚かれたでしょう。でもね……
アーヴィングが女性を公に“妻”と認めるなんて、本当に初めてのことなの」
「そ、そうなのですか……?」
「ええ。あの子は昔から孤独で、人と距離を置く子でした。
でも――あなたのことは、とても大事にしているように見えるわ」
「だ、だいじ……に……?」
セレナの頭にふわっと血がのぼる。
「無理に理解しようとしなくていいのよ。
あなたはあなたのペースで、ゆっくりで良いの。
白い結婚であっても、あなたが幸せなら――私はそれだけで嬉しいわ」
「……ありがとうございます」
セレナは深く頭を下げた。
(こんなに優しい人たちに囲まれるなんて……信じられない)
◇
しかしその夜、思わぬ出来事が起こる。
セレナが部屋に戻ろうとした廊下で、声が聞こえた。
「……だが、気をつけろ」
アーヴィングの声だ。
「兄上、父上。あの娘は――“追放された”という過去を背負っている。
心が傷ついているかもしれん。
無理に距離を縮めれば、彼女を苦しめることになる」
静かで、深い声。
「だから……私は、彼女に干渉しない。
――白い結婚のままでいい」
胸が痛くなった。
(干渉しない……そう。白い結婚だから)
けれど、セレナの胸の奥では別の声が響いていた。
(……干渉してほしい、なんて……思ってしまう私は、おかしいの?)
アーヴィングの優しさは痛いほど伝わる。
彼は自分を守ろうとしている。
それでも――お互いに干渉しないはずなのに。
(どうして、公爵様の言葉だけで……こんなに胸がざわつくの?)
セレナの心に芽生えたその感情は、まだ小さく、かすかなものだった。
だが、確かに存在していた。
――恋の芽吹き。
それは本人すら気づかぬうちに、静かにふくらみ始めていた。
セレナがグレイス家に迎えられて十日ほどが過ぎた頃、朝の空気にどこか張りつめた気配があった。
侍女たちが慌ただしく廊下を行き来し、屋敷全体がそわそわしている。
「アリス、今日は何かあるの?」
「はい! 本日は――公爵様のご家族が本邸にお戻りになるのです!」
「えっ……!」
セレナは驚いて思わず声を上げた。
(そ、そういえば……私は契約上とはいえ、公爵夫人。
ご家族に会うことになるのね……)
胸が緊張で少し締め付けられる。
ブランシェット家では家族と顔を合わせることすら苦痛だったから、家族の前に立つという行為が、無意識に不安を呼び起こす。
「大丈夫ですよ、セレナ様。
旦那様のご両親も、お兄様も、とてもお優しい方々です」
「そ、そう……なのですね」
セレナは胸に手を当て、深呼吸をした。
――大丈夫。ここはブランシェット家ではない。
誰も自分を否定したり、責めたりはしない。
◇
正午過ぎ。
大扉が開き、グレイス家の家族が次々と屋敷へ入ってきた。
「アーヴィング! 久しぶりだねぇ!」
豪快な笑い声を響かせたのは、公爵の兄――ダリウス・グレイス伯爵だ。
見た目はアーヴィングに似ているが、性格はまるで逆で、快活で人懐っこい。
その後ろからは、上品で落ち着いた雰囲気の女性が続く。
「あなた……声が大きいわよ。屋敷中に響いてしまいます」
「ははは、悪い悪い!」
彼女はアーヴィングの母、エレオノーラ公爵夫人。
優しい眼差しで屋敷を見回している。
さらに最後に現れたのは、堂々とした雰囲気の男性――公爵家の当主であり、アーヴィングの父、レオンハルト公爵だ。
「アーヴィング。領地運営、ご苦労だった」
「父上。お帰りなさいませ」
アーヴィングは深く頭を下げた。
普段は冷たく落ち着いている彼が、家族の前では少しだけ柔らかい表情になる。
(……素敵な家族。皆さん、温かい雰囲気)
セレナが遠巻きに見ていると、ダリウスが声を張り上げた。
「ところでアーヴィング! 手紙に書いてあった“妻を迎えた”って話は本当なのか!?」
「兄上、声が……」
「でかいって? ははは! で、どこだ? 我が弟の妻となった女性は!」
セレナは驚き、思わずアリスの後ろに隠れようとした。
だがアリスがそっと背中を押す。
「セレナ様、大丈夫です。前へ」
「……はい」
セレナは緊張した面持ちで家族の前に進み出る。
「はじめまして。セレナ・グレイスと申します。どうぞよろしくお願いいたします」
深く礼をすると、ダリウスがぱっと笑顔になった。
「おおっ! 本当に綺麗な方じゃないか!
アーヴィング、お前にこんな美しい妻ができるとはな!」
「……兄上、誤解を招く言い方はやめろ」
「はっはっは! いやいや、驚いたぞ!」
エレオノーラ夫人も上品な微笑みを見せ、軽く頭を下げた。
「セレナさん。ようこそグレイス家へ。
息子が……まぁ、不器用なところがありますが、どうぞよろしくお願いしますね」
「は、はい……こちらこそ、よろしくお願いいたします」
その瞬間。
(優しい……!)
セレナの胸は温かくなり、言いようのない安心感に包まれた。
ブランシェット家のように冷たく突き放すこともなく、
ましてや身分を盾に威圧することもない。
ただ純粋に“歓迎”してくれている。
(……こんな家族が存在するなんて)
胸がじんと痛くなった。
◇
レオンハルト公爵が、ゆっくりとセレナに歩み寄る。
「セレナさん。息子が世話になっているようだね」
「い、いえ! そんな……私こそ、助けていただいてばかりで……」
すると、公爵はふっと優しい笑みを浮かべた。
「アーヴィングが自ら誰かを助けるというのは、滅多にないことだ。
きっと君は、彼にとって特別な存在なのだろう」
「と、とくべつ……!?」
セレナの顔がゆでたこ状態になった。
「父上、誤解を招く言い方は――」
「誤解ではないのではないか?」
「……っ」
アーヴィングがわずかに顔を赤くして目をそらす。
その珍しい様子に、セレナは心臓が跳ねるのを感じた。
(え……公爵様って、照れることがあるんだ……?)
その瞬間、屋敷の女性使用人たちが小声で盛り上がる。
「奥様、とてもお綺麗……!」
「旦那様があんな顔をするの初めて見た!」
「もしかして……恋の予感……?」
くすくすとした声に、セレナも思わず俯いた。
(恋なんて……そんなはず……だって白い結婚で、干渉しないって……)
頭では理解しているのに、胸の奥がじわりと温かくなる。
◇
その日の夕食。
グレイス家の家族は和やかな雰囲気で食卓を囲んでいた。
「セレナさん、こちらの料理はお口に合うかしら?」
「はい、とても美味しいです!」
「それは良かったわ。アーヴィングは食に無頓着だから、味の好みを聞いても“普通でいい”としか言わないのよ」
「ふ、普通で充分だろう……」
アーヴィングのささやかな反論も、家族には可愛く聞こえるらしい。
そしてダリウスが豪快に笑いながら、セレナに話しかける。
「それにしても、アーヴィングが妻を迎えたなんて本当に驚いた!
お前、恋愛に興味ないんじゃなかったのか?」
「……興味はない」
「言い切るねぇ! でもその妻がこれほどの美人なら、興味くらい出てくるんじゃないか?」
「それは――」
アーヴィングは口を閉じ、視線を逸らした。
ちらりとセレナに向いたその瞳に、確かな“何か”が宿る。
(え……これ、目が合った?)
胸がきゅっと締まる。
(どうしよう……こんな気持ち、知らない……)
◇
食後、エレオノーラ夫人がそっとセレナを廊下に誘った。
「セレナさん。少しお話ししてもよろしいかしら?」
「はい」
二人で静かな回廊を歩く。
暖炉の火が揺れ、その光が壁に柔らかい影を落とす。
「先ほどは驚かれたでしょう。でもね……
アーヴィングが女性を公に“妻”と認めるなんて、本当に初めてのことなの」
「そ、そうなのですか……?」
「ええ。あの子は昔から孤独で、人と距離を置く子でした。
でも――あなたのことは、とても大事にしているように見えるわ」
「だ、だいじ……に……?」
セレナの頭にふわっと血がのぼる。
「無理に理解しようとしなくていいのよ。
あなたはあなたのペースで、ゆっくりで良いの。
白い結婚であっても、あなたが幸せなら――私はそれだけで嬉しいわ」
「……ありがとうございます」
セレナは深く頭を下げた。
(こんなに優しい人たちに囲まれるなんて……信じられない)
◇
しかしその夜、思わぬ出来事が起こる。
セレナが部屋に戻ろうとした廊下で、声が聞こえた。
「……だが、気をつけろ」
アーヴィングの声だ。
「兄上、父上。あの娘は――“追放された”という過去を背負っている。
心が傷ついているかもしれん。
無理に距離を縮めれば、彼女を苦しめることになる」
静かで、深い声。
「だから……私は、彼女に干渉しない。
――白い結婚のままでいい」
胸が痛くなった。
(干渉しない……そう。白い結婚だから)
けれど、セレナの胸の奥では別の声が響いていた。
(……干渉してほしい、なんて……思ってしまう私は、おかしいの?)
アーヴィングの優しさは痛いほど伝わる。
彼は自分を守ろうとしている。
それでも――お互いに干渉しないはずなのに。
(どうして、公爵様の言葉だけで……こんなに胸がざわつくの?)
セレナの心に芽生えたその感情は、まだ小さく、かすかなものだった。
だが、確かに存在していた。
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