婚約破棄されましたが、辺境で最強の旦那様に溺愛されています

鷹 綾

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第22話 暴かれる策謀、追い詰められる側近

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第22話 暴かれる策謀、追い詰められる側近

 朝の謁見の間。
 昨日以上の重臣、貴族、審問官が席に並び、
 緊張した空気が漂っていた。

 中央には、王、王妃、そしてテオドリック王太子。
 その右側に、硬直した表情のスティアスが控えている。

 ゆっくりと扉が開き、アイシスが入室した瞬間——
 場の空気が変わった。

「おお……昨日にも増して気品が……」
「まるで、王宮の中心に立つべく生まれた方のようだ……」

 囁きが広がる。
 だがアイシス本人は冷静そのものだ。

 彼女は静かに立ち、視線だけで場の騒めきを鎮めた。


---

■審問開始

「ではこれより、スティアス卿に対する追加審問を始める。」

 国王レオニードの声が響いた。

 スティアスは硬い表情を崩さず言い放つ。

「私は無実だ!
 エミーラ嬢への援助は慈善!
 殿下を支えるための行動であり、策謀など断じて──」

「では、こちらをご覧ください。」

 アイシスが差し出したのは、一枚の書簡複写。

 審問官が声に出して読み上げた。

『エミーラ嬢を殿下に近づけ、“アイシス失脚”を実現せよ。
 報酬は後日渡す。』

 署名:スティアス・グランディス

「……っ!!」

 場がどよめいた。

 スティアスは青ざめ、震える指で書面を指した。

「こ、これは偽物だ! で、でたらめだ!!」

 だが司法長官レグナードは淡々と告げた。

「筆跡鑑定はすでに済んでいる。
 あなたの筆跡と完全に一致している。」

「なっ……!」

 崩れ落ちそうになるスティアス。


---

■アイシスの容赦ない追撃

「さらに、こちらの帳簿をご覧くださいませ。」

 アイシスが次に出したのは、金銭受け渡しの詳細記録。

「スティアス卿は“慈善”とおっしゃいましたが……
 この金額が“慈善”で済むと思われますか?」

 審問官たちが資料をめくる。

「エミーラ嬢へ贈られたアクセサリーや衣服……」
「それらはひとつひとつが貴族令嬢でも手に入らぬほど高価……」
「しかも、支払いはすべて“スティアス卿の私的資金”だ」

「じ、自分の金をどう使おうと勝手だろう!!」

 スティアスが叫ぶ。

 だが、アイシスは涼やかな瞳で言い返す。

「その“私的資金”の出所が問題なのですわ。
 あなたは長年、王太子殿下の名を盾にして、
 複数の商会から“特別献金”を受けておられた。
 これはすでに帳簿から明らかになっています。」

「な……な……!」

「つまりあなたは、王太子の権力を利用して金を集め、
 それを使ってエミーラ嬢を操り……
 殿下を都合よく動かしていたということです。」

 スティアスの顔が真っ白になる。


---

■スティアスの崩壊

「黙れえええええ!!」

 スティアスが突然叫び、机を叩く。

「私は殿下を王にするために動いていた!
 アイシス、お前こそ邪魔だったんだ!
 お前が王妃になれば、私は外される!
 だから……だから……!」

 会場が凍りつく。

 彼の口から出たのは、
“私怨による策謀の自白” そのものだった。

 国王が重々しく言う。

「スティアス……貴様、自ら罪を認めたな。」

「ひっ……」

 スティアスは崩れ落ち、震えながら叫ぶ。

「ち、違う……違うんだ……!
 私は殿下のためを思って……!」

「その“殿下”だが。」

 王の視線が王太子へ向く。

 テオドリックは、すでに顔を真っ青にしていた。

「スティアス……本当に……俺を利用していたのか……?」

「ち、違──殿下! それは誤解で──」

「もういい!!
 お前の言葉など、何一つ信じられん!!」

 テオドリックは椅子を蹴って立ち上がり、震える声で叫んだ。

「お前のせいで……
 俺は父上に叱られ、王宮に笑われ……
 アイシスにも見放され……!!」

 その姿は、もはや威厳ある王太子ではなかった。

 スティアスは必死に手を伸ばす。

「殿下……殿下だけは……!!」

「来るな!!」

 王太子が後ずさる。
 スティアスはそのまま床に崩れ伏し、声を失った。


---

■審問官の結論

「スティアス・グランディス卿。
 あなたには 王家の名誉を著しく損なった罪、
 王太子を不当に操った罪、
 令嬢アイシスを陥れようとした罪 がかかっている。」

 審問官が静かに言い渡す。

「後日、正式な裁定を下す。
 いずれにせよ、あなたの罪は重い。」

 スティアスは完全に崩れ落ちた。


---

■そして残されたもの

 アイシスは深く一礼した。

「ご審問、ありがとうございました。
 スティアス卿の行為により、殿下も誤った道へ進まれました。
 どうか……殿下には正しい機会を与えられますよう。」

 王は静かに頷いた。

 だが王妃だけは、アイシスの手をそっと取って言った。

「あなたが、この国の妃になれなかったのは……
 本当に、この国の損失ですわね。」

 その言葉に、王太子は胸を押さえてうずくまった。

(アイシス……
 どうして……どうして君はこんなにも……)

 しかし、もう遅い。

 彼女はもう“捨てられた令嬢”などではないのだ。


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