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第27話 完全な逆転
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第27話 完全な逆転
王都からの使者が到着したのは、正式なざまぁが記録された翌日のことだった。
外交使節団。
肩書きだけは立派で、態度は――驚くほど低い。
「公爵夫人エリーカ・フォン・グラーツ殿」
深く、深く頭を下げる。
「本日は、王都より“お願い”があり、参りました」
――お願い。
私は、内心で小さく区切りをつけた。
(ついに、この言葉が出た)
かつては、命令。
その前は、招待。
そして今は、懇願に近い依頼。
順序としては、実に分かりやすい。
「内容を伺いましょう」
私は淡々と促す。
「王都は現在、周辺国との調整に難航しております。
そこで――」
使者は一瞬言葉を詰まらせ、それから続けた。
「貴女のお力を、お借りできないかと」
部屋が静まり返る。
アンクレイブは口を挟まない。
完全に、私の判断に委ねている。
「具体的には?」
「物流、税制、外交調整……
以前、貴女が担っておられた分野です」
――以前、ね。
私は少しだけ微笑んだ。
「それは、もう私の職務ではありません」
即答だった。
使者が、目に見えて動揺する。
「ですが……王都は、今……」
「存じています」
私は遮るように言った。
「ですが、それは王都自身の問題です」
冷たい言葉ではない。
ただ、境界線を引いただけだ。
「私には、今、果たすべき責務があります」
そう言って、窓の外に視線を向ける。
整然と動く街。
改革の成果が、日常として根付き始めている。
「この国の未来に、集中しています」
沈黙。
使者は、深く息を吸った。
「……条件を、提示してもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
「王都での地位。
正式な権限。
前例のない裁量を――」
私は、首を振った。
「不要です」
きっぱりと。
「今さら、地位や権限で動く理由はありません」
使者の肩が、わずかに落ちる。
それを見て、私は続けた。
「ただし」
一瞬、希望の光が戻る。
「公国と王都が、対等な国家として協議する場であれば、
技術的助言は検討します」
「対等な……?」
「ええ。
上下関係のない、正式な外交の場です」
それは、救済ではない。
最低限の礼節を守れ、という条件だった。
使者は、深く頭を下げる。
「……持ち帰り、検討いたします」
その背中は、完全に“お願いする側”のそれだった。
使者が去った後、アンクレイブが静かに言った。
「情けをかけすぎでは?」
「いいえ」
私は、首を振る。
「線を引いただけです」
助けない。
だが、突き放しもしない。
――それが、最も冷静で、最も残酷。
「……君は」
アンクレイブが、わずかに笑う。
「本当に、王都を必要としなくなったな」
「ええ」
私は、穏やかに答える。
「もう、“戻る場所”ではありませんから」
その日の夜。
王都では、重臣たちが頭を抱えていた。
「……完全に、立場が逆だ」 「条件を出しても、動かない……」
レヴァンテは、静かに目を閉じた。
(ああ……)
彼女は、
失われた存在ではない。
自分たちの手で、遠ざけてしまった存在なのだ。
完全な逆転。
それは、怒号も、復讐もなく、
ただ淡々と――現実として突きつけられていた。
---
王都からの使者が到着したのは、正式なざまぁが記録された翌日のことだった。
外交使節団。
肩書きだけは立派で、態度は――驚くほど低い。
「公爵夫人エリーカ・フォン・グラーツ殿」
深く、深く頭を下げる。
「本日は、王都より“お願い”があり、参りました」
――お願い。
私は、内心で小さく区切りをつけた。
(ついに、この言葉が出た)
かつては、命令。
その前は、招待。
そして今は、懇願に近い依頼。
順序としては、実に分かりやすい。
「内容を伺いましょう」
私は淡々と促す。
「王都は現在、周辺国との調整に難航しております。
そこで――」
使者は一瞬言葉を詰まらせ、それから続けた。
「貴女のお力を、お借りできないかと」
部屋が静まり返る。
アンクレイブは口を挟まない。
完全に、私の判断に委ねている。
「具体的には?」
「物流、税制、外交調整……
以前、貴女が担っておられた分野です」
――以前、ね。
私は少しだけ微笑んだ。
「それは、もう私の職務ではありません」
即答だった。
使者が、目に見えて動揺する。
「ですが……王都は、今……」
「存じています」
私は遮るように言った。
「ですが、それは王都自身の問題です」
冷たい言葉ではない。
ただ、境界線を引いただけだ。
「私には、今、果たすべき責務があります」
そう言って、窓の外に視線を向ける。
整然と動く街。
改革の成果が、日常として根付き始めている。
「この国の未来に、集中しています」
沈黙。
使者は、深く息を吸った。
「……条件を、提示してもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
「王都での地位。
正式な権限。
前例のない裁量を――」
私は、首を振った。
「不要です」
きっぱりと。
「今さら、地位や権限で動く理由はありません」
使者の肩が、わずかに落ちる。
それを見て、私は続けた。
「ただし」
一瞬、希望の光が戻る。
「公国と王都が、対等な国家として協議する場であれば、
技術的助言は検討します」
「対等な……?」
「ええ。
上下関係のない、正式な外交の場です」
それは、救済ではない。
最低限の礼節を守れ、という条件だった。
使者は、深く頭を下げる。
「……持ち帰り、検討いたします」
その背中は、完全に“お願いする側”のそれだった。
使者が去った後、アンクレイブが静かに言った。
「情けをかけすぎでは?」
「いいえ」
私は、首を振る。
「線を引いただけです」
助けない。
だが、突き放しもしない。
――それが、最も冷静で、最も残酷。
「……君は」
アンクレイブが、わずかに笑う。
「本当に、王都を必要としなくなったな」
「ええ」
私は、穏やかに答える。
「もう、“戻る場所”ではありませんから」
その日の夜。
王都では、重臣たちが頭を抱えていた。
「……完全に、立場が逆だ」 「条件を出しても、動かない……」
レヴァンテは、静かに目を閉じた。
(ああ……)
彼女は、
失われた存在ではない。
自分たちの手で、遠ざけてしまった存在なのだ。
完全な逆転。
それは、怒号も、復讐もなく、
ただ淡々と――現実として突きつけられていた。
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