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第一章 日輪の夢幻花 〜業火の鬼〜
帽子
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▽▽▽
近くの浜に誘導し、砂浜に着くと、岩場の陰でびっしょり濡れたワンピースの裾を絞る。
真夏とはいえ、濡れた服でいるのはかわいそうに思う。
節介をしたんだ、ならばとことんするしかない。
すぐにキャリーバックから、着替えようのシャツやズボン、タオルなど取り出した。
「服が乾くまでこれを使って───」
そう言って少女の濡れた姿から目を晒すように差し出した。
「ええっ!?そんな申し訳ないです!飛び込んだのは私の責任ですから・・・」
「・・・」
まあ、そうなんだが・・・しかし、今更この腕を引っ込めるこもできない。
「・・・・えーとっ」
少女は困った表情で少し考えこむと、すぐに受け取ることにした。
せっかく自分のために用意してくれたのだから、受け取らないと失礼だと考えたのだろう。
「じゃあ、あの、お言葉に甘えて・・・ちょっと向こうで着替えてきますね───」
そのまま駆け足で、岩場の方へ向かって行った。
着替えを済ませると、ぶかぶかの半袖に短パンの姿で小走りに戻ってきた。
それから乾くまでの間、二人は砂浜に座ったまま時間を潰すことになった。
・・・
・・・
・・・
「どうして飛び込んだんだ?」
なんとなく察しはつくが・・・。
「この帽子です!」
少女は手に持っていた麦わら帽子を見せた。
随分と年季が入った帽子であるが、大切にされていたことが見てわかる。
「この帽子が海に落ちてしまったので、拾おとして飛び込んじゃいましたっ」
と笑顔のまま平然と答える。
しかし、一歩間違えれば溺れていたかもしれない。ここは年長者として、注意しなければならない。
「それなら誰か人を呼べばよかった。近くにいる人にでも言って助けを借りることもできたはずだ。運が悪ければ溺れていたかもしれない」
「大丈夫ですよ!私、水泳部で水にはとことん強いですからっ!それに───」
「・・・・・・・・」
「───それにこの麦わら帽子から目を離している間に、沖に流されてしまったらって思うと不安でどうしても飛び込まざるえなかったんです」
身を呈してでも、それほど思い入れのある大切な帽子なんだろう。
彼女の目から優しさに満ちた表情が窺える。
────が、
「・・・大切なのはわかったが、それでもやはり命には変えられない。だからこれからは危険なことはしないで周りに助けを呼んでほしい。君だって家族はいるだろう」
「・・・・・・・そう・・・ですよね、すみません・・・」
なぜか少女は視線を落として、何か思い詰めた表情を浮かべた。
家族という言葉に何か引っかかった様子だった。
しかしすぐにひらき直ると笑顔に戻った。
「ごめんなさい、服なんか借りてしまって。そういえばここへは観光ですか?」
「いえ、かん・・こうではな・・・・い・・・っん?」
あれ?俺は一体、海で何をしているんだ?
電車を寝過ごし、海に誘われ、その先で少女が海に飛び込むイベントがあったせいか、当初の目的を忘れていた。
思い出すと、全身から血の気が引くような感覚に陥った。
「・・・・・?」
「・・・・、ちょっと待っていてもらっていいですか」
慌ててバックから携帯電話を取り出すも、そういえば蒜山の連絡先を知らない。
時刻は午後2時過ぎ。
待ち合わせの時間を1時間もオーバーしている。
頭が真っ白になった。
まずい・・・・。非常にまずい。
一応、メールを送る。
返信はない。
真面目はひらりと身を翻して、少女に聞いた。
「すみません、ここはどこかわかりますか?」
ここから目的地まで時間を調べるにしても、場所がわからない。
「────?ここは、花僕町の海浜公園ですよ?」
ものすごい勢いでボタンを連打する。
時刻を確認すると、先程の駅から40分程度であることがわかった。
よかった。そこまで離れていない。暗くなる前には着くことはできそうだ。
ホッと胸を撫で下ろした───。
いやいやホッとするのは早い。急がなくてはいけない。
サラリーマンだった頃の血が騒ぎ出す。
「ありがとう。ごめん、急いで行かないとっ!!!」
そう言って、下ったオレンジロードを走って引き返すことにした。
「えっ!?あのっ!!」
と、後方で少女が何か言っていたが、そんなことお構いなしに走り出した。
少女はその男の背中を追うもすぐに離されいく───
「はやっ、ちょっとっ!!!あのーーーーー!!!」
大声を出すも男の右肩の裾がバタバタと煽られながら、ものすごい勢いで坂を登っていった。
「服・・・借りたままなんだけど・・・・・・・」
▲▲▲
近くの浜に誘導し、砂浜に着くと、岩場の陰でびっしょり濡れたワンピースの裾を絞る。
真夏とはいえ、濡れた服でいるのはかわいそうに思う。
節介をしたんだ、ならばとことんするしかない。
すぐにキャリーバックから、着替えようのシャツやズボン、タオルなど取り出した。
「服が乾くまでこれを使って───」
そう言って少女の濡れた姿から目を晒すように差し出した。
「ええっ!?そんな申し訳ないです!飛び込んだのは私の責任ですから・・・」
「・・・」
まあ、そうなんだが・・・しかし、今更この腕を引っ込めるこもできない。
「・・・・えーとっ」
少女は困った表情で少し考えこむと、すぐに受け取ることにした。
せっかく自分のために用意してくれたのだから、受け取らないと失礼だと考えたのだろう。
「じゃあ、あの、お言葉に甘えて・・・ちょっと向こうで着替えてきますね───」
そのまま駆け足で、岩場の方へ向かって行った。
着替えを済ませると、ぶかぶかの半袖に短パンの姿で小走りに戻ってきた。
それから乾くまでの間、二人は砂浜に座ったまま時間を潰すことになった。
・・・
・・・
・・・
「どうして飛び込んだんだ?」
なんとなく察しはつくが・・・。
「この帽子です!」
少女は手に持っていた麦わら帽子を見せた。
随分と年季が入った帽子であるが、大切にされていたことが見てわかる。
「この帽子が海に落ちてしまったので、拾おとして飛び込んじゃいましたっ」
と笑顔のまま平然と答える。
しかし、一歩間違えれば溺れていたかもしれない。ここは年長者として、注意しなければならない。
「それなら誰か人を呼べばよかった。近くにいる人にでも言って助けを借りることもできたはずだ。運が悪ければ溺れていたかもしれない」
「大丈夫ですよ!私、水泳部で水にはとことん強いですからっ!それに───」
「・・・・・・・・」
「───それにこの麦わら帽子から目を離している間に、沖に流されてしまったらって思うと不安でどうしても飛び込まざるえなかったんです」
身を呈してでも、それほど思い入れのある大切な帽子なんだろう。
彼女の目から優しさに満ちた表情が窺える。
────が、
「・・・大切なのはわかったが、それでもやはり命には変えられない。だからこれからは危険なことはしないで周りに助けを呼んでほしい。君だって家族はいるだろう」
「・・・・・・・そう・・・ですよね、すみません・・・」
なぜか少女は視線を落として、何か思い詰めた表情を浮かべた。
家族という言葉に何か引っかかった様子だった。
しかしすぐにひらき直ると笑顔に戻った。
「ごめんなさい、服なんか借りてしまって。そういえばここへは観光ですか?」
「いえ、かん・・こうではな・・・・い・・・っん?」
あれ?俺は一体、海で何をしているんだ?
電車を寝過ごし、海に誘われ、その先で少女が海に飛び込むイベントがあったせいか、当初の目的を忘れていた。
思い出すと、全身から血の気が引くような感覚に陥った。
「・・・・・?」
「・・・・、ちょっと待っていてもらっていいですか」
慌ててバックから携帯電話を取り出すも、そういえば蒜山の連絡先を知らない。
時刻は午後2時過ぎ。
待ち合わせの時間を1時間もオーバーしている。
頭が真っ白になった。
まずい・・・・。非常にまずい。
一応、メールを送る。
返信はない。
真面目はひらりと身を翻して、少女に聞いた。
「すみません、ここはどこかわかりますか?」
ここから目的地まで時間を調べるにしても、場所がわからない。
「────?ここは、花僕町の海浜公園ですよ?」
ものすごい勢いでボタンを連打する。
時刻を確認すると、先程の駅から40分程度であることがわかった。
よかった。そこまで離れていない。暗くなる前には着くことはできそうだ。
ホッと胸を撫で下ろした───。
いやいやホッとするのは早い。急がなくてはいけない。
サラリーマンだった頃の血が騒ぎ出す。
「ありがとう。ごめん、急いで行かないとっ!!!」
そう言って、下ったオレンジロードを走って引き返すことにした。
「えっ!?あのっ!!」
と、後方で少女が何か言っていたが、そんなことお構いなしに走り出した。
少女はその男の背中を追うもすぐに離されいく───
「はやっ、ちょっとっ!!!あのーーーーー!!!」
大声を出すも男の右肩の裾がバタバタと煽られながら、ものすごい勢いで坂を登っていった。
「服・・・借りたままなんだけど・・・・・・・」
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