異形の君へ~バケモノが視えるようになった男のお話~

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異形の君へ 2 (シュウマ視点)

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 見てしまった。

 小三の夏になる頃。
その日は、学校から帰ると珍しくアヤトの家で遊んでいた。
しばらく遊んでいるとアヤトのお兄さんが友人を連れて帰ってきたのだ。
アヤトのお兄さんは、俺たちよりうんと年上でこの時、高校三年生だったかな。

「隣の部屋、行くぞ」

 アヤトに促され、隣の部屋で隠れる。
ワクワク顔をするアヤトにあぁ、イタズラする気だなと暢気に思っていた。

(なんだろう。すごく恥ずかしいものを見ちゃってる……?)

 アヤトのお兄さんは、友人……いや、恋人ととても良い雰囲気を醸し出している。

「好きだ」

 告白のセリフが聞こえる。
つまり、男と男同士で性行為をしようとしていた。
当時、子供だった俺たちにはとても刺激が強い光景だ。
隣の部屋を凝視したまま固まる。その場から動けなくなった。

(……ダメだ。これ以上は……ここから離れなきゃ……)

 アヤトに声を掛けようとした時だった。

――パクリ。

 アヤトのお兄さんは異形の姿になり、恋人を触手の中へと包み込んだ。
目撃した事実を呑み込めず、しばし呆然とさせた。
祖母が言っていたことは嘘じゃなかった。

「ウ…ウ…ウソだろ」

 アヤトの声で我に返る。

「食べられた……兄ちゃんが……兄ちゃんがッ!」

 自分の兄が人を食べた。
そう見えたアヤトは、窓から飛び出し外へと逃げた。
俺もアヤトを追おうとするが。

「ずっと居たんだね」

 振り返ればアヤトのお兄さんが立っていた。服が乱れてる。
アヤトのお兄さんの後ろには、同じく乱れた格好を整えてる恋人がいた。
生きてた。食べられてなかったんだ。じゃあ、さっき見たものは夢だったのだろうか。

「ごめんなさい」

 まずは謝った。なんであれ二人の情事を盗み見てしまったのだ。
けれど、アヤトのお兄さんは俺を責めるどころか逆に申し訳ない表情を浮かべた。

「僕達の方こそ、ごめんね。ちゃんと確認すればよかったね」
「子供には刺激が強いもんを見せた。それに知っていたのか?」
「ううん。まだ何も……」
「だったら、尚更悪かった」

 アヤトのお兄さんとその恋人は顔を見合わせ、何か確認すると改めて俺の方に顔を向けた。

「あの…さっきのは……」
「そうだね。見ちゃったものね、うん。少しお話しようか」

 ああ、夢じゃあなかったんだな。
アヤトのお兄さんの言葉と様子を見て事実なんだと思った。
おばあちゃん、ごめんねとお話を聞きながら心の中で謝った。

 その後、近所の公園でアヤトをみつけた。
自分の兄が人間では無かったという事実をアヤトは受け入れられずにいたのだ。
だから、俺は嘘をついた。

「化け物って何のこと?」

 これ以上、アヤトを悲しませたくなかったから。

「アレは、夢だったんだよ」

 そして、約束をしたんだ。

「絶対、俺がアヤト守るよ」

 アヤトが人でなかろうが、関係ない。
どんな姿でもアヤトには変わりないのだから――。


おわり
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