転生ろうそく王子は愛に溺れるだけじゃない!

ゆうきぼし/優輝星

文字の大きさ
17 / 41

16回復魔法

 移動が北に進むにつれて徐々に肌寒くなってきた。木々の葉の形が違う。尖った形だ。針葉樹だっけ?寒い地方に見られる樹木。いよいよ北の国に近づいてきたんだなと実感する。途中で馬も交代された。足が太いどっしりした軍馬だ。氷の上も走ることが出来るらしい。
 氷の国に入る前に北の街に立ち寄る事になる。ここで本格的なオレの防寒服を買い、身支度をするようだ。
「ルミエール。わかっているとは思うが城にはすでに伝えてある」
「はい」
「いろいろ口うるさく言ってくる奴らもいるがお前は気にしなくてもいいからな」
 ユージナルが心配そうだ。気にしなくていいわけはないだろうな。なんせ皇太子への貢ぎ物なんだし。でも、貢ぎ物ってなにをしたらいいんだろうか?
「まず、何に気をつけたらいいのか。教えて欲しい」
「ん~。そういわれると困るなあ」
「俺も面倒なことは宰相のグラソンにまかせていたからな」
 なるほど。じゃあそのグラソンって人に聞けばいいのか。
「とにかく。気合い入れて衣装を決めようぜ」
「ああ。そちらの方が先だな」

 店に入ると毛皮や厚めの防寒着に目がいく。見るからに暖かそうだ。イスベルクは奥で店の人と何やら話し込んでいる。こちらを向いたと思った途端。
「きゃああっ。可愛い子じゃないのぉ!」
 めっちゃ距離を詰められ抱きしめられた。しかも凄い筋肉!フリフリのレース姿だけど男の人だよね?
「あわわ……」
 ピシピシと音がする。イスベルクかな?
「だめよ!イスベルク様。ここで魔法を使うとアタシの大事な衣装が傷んじゃうじゃない!」
「ルミエールにそれ以上手を出すな!」
 イスベルク。タスケテ~。
「何を言っているのよ!近づかなきゃ。サイズが測れないじゃないの!この子に似合う可愛い服を探したいのでしょう?」
「可愛い服……」
「そうよ。アタシの服を着れば今よりももっと可愛く洗練されるわよ!」
「うっ。では仕方がないな。だが引っ付きすぎだ!」
「はいはい。わかっているわよ。もぉ!久しぶりに来たと思ったらこんな可愛い子連れてくるなんて」

「えっと。できれば可愛いよりもカッコいい服だと嬉しいんだけど」
「あら。ちゃんと自分の意見も言えるのね。偉いわ」
「おいおい。キャンベル。その辺にしておいてやれよ。きっとこれから長い付き合いになるぞ」
「あら。そうね!ユージナルったらたまにはいいこと言うわね。お得意様になってちょうだいね?ごめんなさい。アタシはキャンベル。デザイナーよ!お城の服はアタシの作品が多いのよ。実用的な戦闘服から皇后さまの洗練された衣装までなんでも作れるわよ」
「ルミエールです。よろしくお願いします」
 その後、寸法を測るたびにきゃあきゃあ騒がれたがイスベルクが俺を抱き込んだので終了となった。
「もういいだろ!」
「あらん。やきもち焼の男は嫌われるわよん。じゃあ、とりあえず既成の服でいくつか見繕うから奥のテーブルでお茶でも飲んでいてねん」

「デザイナーさんって体力居るんだなあ。あんなにもムキムキだなんて……」
「ぎゃははは」
 ユージナルが爆笑している。イスベルクは苦笑気味だ。そのキャンベルが衣装をもってやって来た。
「笑い過ぎよ。体力はいるわよ。徹夜で仕上げることなんてしょっちゅうだしね。素敵なデザインが浮かぶと妥協できずにとことんやってしまうのよねえ」
「ルミエール。キャンベルは一時期、俺たちの上官だったのだ」
「ええ?そうだったんですね?」
 兵士だったって事?兵士がデザイナーになったの?
「不思議って顔ね。いいわ、教えてあげる。ちょっと失敗して足にけがを負っちゃったのよ。だから戦いごとからは引退したの。それで前から夢だったデザイナーに転職したってわけ!これがまた天職だったのよねえ」
「強かったぞ。引退した時は残念だった」
「あらまあ。そんな風に思っていてくれたなんて嬉しいわ」
 キャンベルは可愛らしいスカートをめくり少し引きずり気味の片足を見せてくれた。
「今もときどき痛むのが悔しいんだけど」
 ん~。みたところ複雑骨折後の処置が悪かったんじゃないかな?戦の最中じゃすぐに医者に見せられなかったに違いない。これならできるかもしれない。

「よかったら。僕に回復魔法をかけさせてもらえませんか?」
「え?そう?じゃあやって診てくれる?」
「ルミエールは回復魔法も使えるのか?」
「うん。あの国にいた時はいつもイジメられていたからね。自分で治すしかなかったんだ」
 大丈夫。オレって傷は治せるんだよ。病気はやっとことがないからわかんないけど。

 キャンベルの足を両手で包み込むと少しずつ魔力を流す。ああ、いける。大丈夫だ、これなら。

「ルミエール!」
 イスベルクに抱え込まれて目を開くと心配そうな顔を目に映った。しまった、集中しすぎていたらしい。軽くめまいがする。きちんと食事をするようになって少しは体力ついたと思っていたのになあ。
「うそ……歩ける。痛くないわ!今まで何やっても治らなかったのに」
「すごいな!」
 ユージナルが驚いている。
「えへへへ」
「ああ。凄いぞ。俺のルミエールは可愛くてたのもしい」
 イスベルクも褒めてくれた。ウへへ。オレっておだてられて木に登っちゃうかも。よかった。なにか一つでも役に立てることがあって。

感想 28

あなたにおすすめの小説

【完結】生まれ変わってもΩの俺は二度目の人生でキセキを起こす!

天白
BL
【あらすじ】バース性診断にてΩと判明した青年・田井中圭介は将来を悲観し、生きる意味を見出せずにいた。そんな圭介を憐れに思った曾祖父の陸郎が彼と家族を引き離すように命じ、圭介は父から紹介されたαの男・里中宗佑の下へ預けられることになる。 顔も見知らぬ男の下へ行くことをしぶしぶ承諾した圭介だったが、陸郎の危篤に何かが目覚めてしまったのか、前世の記憶が甦った。 「田井中圭介。十八歳。Ω。それから現当主である田井中陸郎の母であり、今日まで田井中家で語り継がれてきただろう、不幸で不憫でかわいそ~なΩこと田井中恵の生まれ変わりだ。改めてよろしくな!」 これは肝っ玉母ちゃん(♂)だった前世の記憶を持ちつつも獣人が苦手なΩの青年と、紳士で一途なスパダリ獣人αが小さなキセキを起こすまでのお話。 ※オメガバースもの。拙作「生まれ変わりΩはキセキを起こす」のリメイク作品です。登場人物の設定、文体、内容等が大きく変わっております。アルファポリス版としてお楽しみください。

転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった

angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。 『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。 生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。 「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め 現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。 完結しました。

監獄にて〜断罪されて投獄された先で運命の出会い!?

爺誤
BL
気づいたら美女な妹とともに監獄行きを宣告されていた俺。どうも力の強い魔法使いらしいんだけど、魔法を封じられたと同時に記憶や自我な一部を失った模様だ。封じられているにもかかわらず使えた魔法で、なんとか妹は逃したものの、俺は離島の監獄送りに。いちおう貴族扱いで独房に入れられていたけれど、綺麗どころのない監獄で俺に目をつけた男がいた。仕方ない、妹に似ているなら俺も絶世の美形なのだろうから(鏡が見たい)

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまの第2回BL小説漫画コンテストで『文が癒されるで賞』をいただきました。応援してくださった皆さまのおかげです。心から、ありがとうございます! 表紙は、ぱくたそ様よりsr-karubi様の写真をお借りしました。ありがとうございます!

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい

夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが…… ◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。 ◆お友達の花々緒さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。 ◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。

転生先は猫でした。

秋山龍央
BL
吾輩は猫である。 名前はまだないので、かっこよくてキュートで、痺れるような名前を絶賛募集中である。 ……いや、本当になんでこんなことになったんだか! 転生した異世界で猫になった男が、冒険者に拾われて飼い猫になるほのぼのファンタジーコメディ。 人間化あり、主人公攻め。

温泉旅館の跡取り、死んだら呪いの沼に転生してた。スキルで温泉郷を作ったら、呪われた冷血公爵がやってきて胃袋と心を掴んで離さない

水凪しおん
BL
命を落とした温泉旅館の跡取り息子が転生したのは、人々から忌み嫌われる「呪いの沼」だった。 終わりなき孤独と絶望の中、彼に与えられたのは【万物浄化】と【源泉開発】のスキル。 自らを浄化し、極上の温泉を湧き出させた彼の前に現れたのは、呪いにより心と体を凍てつかせた冷血公爵クロード。 半信半疑で湯に浸かった公爵は、生まれて初めての「安らぎ」に衝撃を受ける。 「この温泉郷(ばしょ)ごと、君が欲しい」 孤独だった元・沼の青年アオイと、温もりを知らなかった冷血公爵クロード。 湯けむりの向こうで出会った二人が、最高の温泉郷を作り上げながら、互いの心の傷を癒やし、かけがえのない愛を見つけていく。 読む者の心まですべて解きほぐす、極上の癒やしと溺愛のファンタジーロマンス、ここに開湯。