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5旅のメンバー選抜
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しばらくして討伐メンバーの選抜が始まった。
「さあ勇者様、世界中からつわもの達を用意しましたぞ。はっはっは。どうぞお選びください」
宰相が笑顔で指示した場所には十数人の騎士や賢者たちが控えていた。見た目の服装は平民っぽいが横柄な態度がそうではないと感じられる者も多かった。ユウマはそれを一瞥するとひと言告げた。
「では今から僕と東の森へ移動しましょう」
「へ? それはどういう?」
集まった者たちがざわつき出す。
「言ったでしょ? 実力行使だと。僕は戦いませんので皆さんで魔物を倒してください。後方で皆サマの戦いぶりを観察させていただきます」
東の森の奥には深いダンジョンがありそこにはレベルの高い魔物が潜んでいた。
「宰相殿! 話が違うではないか!」
「戦うのは勇者だけだと……」
ユウマは冷たい視線を宰相に送る。震えあがった宰相が慌てたように喚く。
「な、なにをいうか! お前らっ。パーティーを組むのだぞ。お前らも戦って当たり前だろうが。そうですよね? 勇者様」
「ええ。そのとうりです。魔王討伐に命を懸けられるか。僕を守れるかがメンバー選出の条件です。宰相殿もそのおつもりですよね?」
「はは……そ、そのとおりです」
宰相が苦虫をつぶしたような顔で肯定した。それを聞いて一気に討伐希望者が減る。急用ができたやら体調が良くないなどと言って逃げ出すものがほとんだだった。
「俺が行く!」
聞き覚えのある声の主は騎士団長だった。
「ユウマにゴードンを紹介したのは俺だ。アイツの仇を取ってやりたいんだ。俺はあいつが魔物に呪われたなんて未だに信じらないんだ。どうか俺を討伐に加えてくれ」
悲痛な表情で団長はユウマの足元に膝間づいた。
「僕もそう思っています」
ユウマは宰相に背を向けて小声で団長に囁いた。団長は一瞬瞠目したがユウマの目を見つめ小さく頷いた。
◇◆◇
両手両足をしばられたままゴードンはガタゴトとゆれていた。目隠しもされたままで景色をみることはできないがかなり遠くにつれてこられたことはわかる。馬車に乗せられてるのだろうか? 揺れが激しいところをみると荷車に転がされてるだけなのかもしれない。
宰相に罵られた後、ゴードンは魔術師によって拘束され何やら魔法をかけられた。身体が硬直し縄をかけられどこかに運び出されたのだ。
「よし、この辺でいいだろう」
揺れが止まると同時に引き摺り下ろされた。
「俺はあんたにゃ恨みはないがお偉いさんの命令でさ。このまま捨ててこいって言われてんだ。悪く思わないでくれよ」
男はそう言って腕の縄を緩めてくれた。
「あとは自分でなんとかしな」
ガラガラと荷車の音を遠くに聞きながらゴードンは片手を動かしてなんとか縄から抜け出した。
「ここは一体どこなんだ?」
目隠しをはずし、あたりを見渡すが見たこともない場所だった。
「ユウマは無事だろうか?」
最後に一目会いたかったなと遠くに思いを馳せる。
「ぐぅう。。」
利き腕を動かそうとして激痛が走った。
「まさかもう俺はこの腕が使えないのか?」
情けない思いが胸にいっぱい広がる。とにかく人気のあるところに辿り着かなければと重い足を引きずり歩き出した。
夜半のせいか人通りも少ない。宰相が国外追放といっていたからここは隣国かそれ以外の場所なのだろう。野営の経験もあるし野宿にも慣れていた。ただ武器がないのが悔しかった。たとえ利き腕が使えなくとも残った片手を鍛えることで何とかなるかもしれない。持ち前の前向きな精神で乗り切ろうとこの時はまだ頑張るつもりでいたのだ。
やがて小さな町に流れ着いた。ゴードンはギルドに登録し力仕事でも始めようと思っていた。体力には自信があったし人と付き合うのも嫌いではなかった。だがどれもこれも上手くいかない。仕事をしても賃金が支払ってもらえないことが多かった。誰もゴードンの事を認識できないのだ。同じ仕事をした仲間にもきちんと名前さえ覚えてもらえなかった。自分自身に他人から認識されない魔法がかかってるとはゴードンは気づかなかったのである。片腕しか使えず半人前の仕事しかできないからなのだと思い込んでいた。
「なんだお前? 誰だか知らねえがよそ者が近寄るんじゃねえよ」
「何を! 昨日一緒に仕事したではないか!」
「うそつけ! お前なんか知らねえよ」
「そんな。俺はゴードンだって昨日言ったじゃないか。とにかく働いた分の賃金をくれ。頼むから」
「はぁ?物乞いか?働かないやつに金などやれるか!」
「頼む。もう3日も何も食ってないんだ」
「ちっ。しようがねえな。ほれ小銭恵んでやるからあっちにいけよ」
「……わかった」
やるせないまま荒屋の寝床につくと生きていくのが嫌になる。だがこんな自分を慕ってくれた可愛い弟子のことを思うとせめて一目会いたいという気持ちが強くなる。
「ユウマ。。」
ゴードンはユウマが無事に討伐から帰ることだけを祈り眠りについた。
「さあ勇者様、世界中からつわもの達を用意しましたぞ。はっはっは。どうぞお選びください」
宰相が笑顔で指示した場所には十数人の騎士や賢者たちが控えていた。見た目の服装は平民っぽいが横柄な態度がそうではないと感じられる者も多かった。ユウマはそれを一瞥するとひと言告げた。
「では今から僕と東の森へ移動しましょう」
「へ? それはどういう?」
集まった者たちがざわつき出す。
「言ったでしょ? 実力行使だと。僕は戦いませんので皆さんで魔物を倒してください。後方で皆サマの戦いぶりを観察させていただきます」
東の森の奥には深いダンジョンがありそこにはレベルの高い魔物が潜んでいた。
「宰相殿! 話が違うではないか!」
「戦うのは勇者だけだと……」
ユウマは冷たい視線を宰相に送る。震えあがった宰相が慌てたように喚く。
「な、なにをいうか! お前らっ。パーティーを組むのだぞ。お前らも戦って当たり前だろうが。そうですよね? 勇者様」
「ええ。そのとうりです。魔王討伐に命を懸けられるか。僕を守れるかがメンバー選出の条件です。宰相殿もそのおつもりですよね?」
「はは……そ、そのとおりです」
宰相が苦虫をつぶしたような顔で肯定した。それを聞いて一気に討伐希望者が減る。急用ができたやら体調が良くないなどと言って逃げ出すものがほとんだだった。
「俺が行く!」
聞き覚えのある声の主は騎士団長だった。
「ユウマにゴードンを紹介したのは俺だ。アイツの仇を取ってやりたいんだ。俺はあいつが魔物に呪われたなんて未だに信じらないんだ。どうか俺を討伐に加えてくれ」
悲痛な表情で団長はユウマの足元に膝間づいた。
「僕もそう思っています」
ユウマは宰相に背を向けて小声で団長に囁いた。団長は一瞬瞠目したがユウマの目を見つめ小さく頷いた。
◇◆◇
両手両足をしばられたままゴードンはガタゴトとゆれていた。目隠しもされたままで景色をみることはできないがかなり遠くにつれてこられたことはわかる。馬車に乗せられてるのだろうか? 揺れが激しいところをみると荷車に転がされてるだけなのかもしれない。
宰相に罵られた後、ゴードンは魔術師によって拘束され何やら魔法をかけられた。身体が硬直し縄をかけられどこかに運び出されたのだ。
「よし、この辺でいいだろう」
揺れが止まると同時に引き摺り下ろされた。
「俺はあんたにゃ恨みはないがお偉いさんの命令でさ。このまま捨ててこいって言われてんだ。悪く思わないでくれよ」
男はそう言って腕の縄を緩めてくれた。
「あとは自分でなんとかしな」
ガラガラと荷車の音を遠くに聞きながらゴードンは片手を動かしてなんとか縄から抜け出した。
「ここは一体どこなんだ?」
目隠しをはずし、あたりを見渡すが見たこともない場所だった。
「ユウマは無事だろうか?」
最後に一目会いたかったなと遠くに思いを馳せる。
「ぐぅう。。」
利き腕を動かそうとして激痛が走った。
「まさかもう俺はこの腕が使えないのか?」
情けない思いが胸にいっぱい広がる。とにかく人気のあるところに辿り着かなければと重い足を引きずり歩き出した。
夜半のせいか人通りも少ない。宰相が国外追放といっていたからここは隣国かそれ以外の場所なのだろう。野営の経験もあるし野宿にも慣れていた。ただ武器がないのが悔しかった。たとえ利き腕が使えなくとも残った片手を鍛えることで何とかなるかもしれない。持ち前の前向きな精神で乗り切ろうとこの時はまだ頑張るつもりでいたのだ。
やがて小さな町に流れ着いた。ゴードンはギルドに登録し力仕事でも始めようと思っていた。体力には自信があったし人と付き合うのも嫌いではなかった。だがどれもこれも上手くいかない。仕事をしても賃金が支払ってもらえないことが多かった。誰もゴードンの事を認識できないのだ。同じ仕事をした仲間にもきちんと名前さえ覚えてもらえなかった。自分自身に他人から認識されない魔法がかかってるとはゴードンは気づかなかったのである。片腕しか使えず半人前の仕事しかできないからなのだと思い込んでいた。
「なんだお前? 誰だか知らねえがよそ者が近寄るんじゃねえよ」
「何を! 昨日一緒に仕事したではないか!」
「うそつけ! お前なんか知らねえよ」
「そんな。俺はゴードンだって昨日言ったじゃないか。とにかく働いた分の賃金をくれ。頼むから」
「はぁ?物乞いか?働かないやつに金などやれるか!」
「頼む。もう3日も何も食ってないんだ」
「ちっ。しようがねえな。ほれ小銭恵んでやるからあっちにいけよ」
「……わかった」
やるせないまま荒屋の寝床につくと生きていくのが嫌になる。だがこんな自分を慕ってくれた可愛い弟子のことを思うとせめて一目会いたいという気持ちが強くなる。
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ゴードンはユウマが無事に討伐から帰ることだけを祈り眠りについた。
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