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第一章:塩対応の同室騎士は言葉が足らない
2世話好きが裏目に出る
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「何をしているんだ!」
「へ? 新しいシーツに替えてるんだよ」
部屋の掃除の仕上げにベッドメイキングをしていたらいきなりサミュエルが怒鳴ってきた。いつの間にか部屋に戻っていたようだ。自分のベットがすんだので出かけているサミュエルの分もシーツ替えをしようとしていたのだ。
「余計なことはするなっ」
ずかずかと傍までくるとシーツを持つ僕の手を掴んで鬼のような形相で睨みつけてきた。ゴツゴツした大きな手が僕と違って男らしくってちょっと悔しい。サムの肌は褐色で僕の白い肌が浮いて見える。
掴まれたのは一瞬だったが僕の手首には赤く手の跡がついてしまった。きっと色が白いせいだろう。それを見たサムがぼそっと呟いた。
「すまん」
やけに素直に謝られるとなんだか拍子が抜けた。ちょっとおせっかいだったかな。勝手な事をしてしまったと反省した。同室とはいえベットは彼のテリトリーだ。さわられたくないものがあったのかもしれない。昔から弟たちの世話をしていたために、つい手伝いたくなってしまったのだ。
「悪い。今度からは声をかけてからするよ」
「する必要はない!」
なんだいそのエラそうな言い方は! 悪いと思って反省して損した。なんだか段々と腹が立ってきた。
「ふうん。じゃあ、替えのシーツが届いたらベットの上に置いておくよ」
「あぁ」
あ~。こういう適当な返事ってやる気がない証拠だな。弟たちを見てるからよくわかる。うわの空ってやつだ。やっぱり僕がやったほうが早いんじゃないのか? ひとこと言っといてやろう。
「でも! その日のうちに替えてなかったら僕がやるからな!」
ビシッと僕はサミュエルの目の前に指をたててやった。彼は片眉だけをあげて僕を見ている。ふふふ。なんだ、いろいろ表情を変えることもできるんじゃないか。そう思うとちょっと楽しくなってきた。
「……」
あれ? なんか僕の事を睨んでる? こんな場面は弟たちとの対峙でよく経験している。僕に対して敵対心を持っているからだ。はて? 理由が分からないぞ。
「ねえちょっと! 僕に言いたいことがあるなら言ってくれないとわからないよ!」
「っ! ……」
あれれ。眉間にしわが寄ったぞ。僕がなんかサムの気に障る事をしたのか? だったらなんで黙ってるんだろう。言いたいことがあれば口に出して言えばいいのに。そりゃ上下関係が厳しい近衛などに入団したらそうはいかないだろうが、今は同期で同室者だ。何でも言いあえるはずだ。
「いいかい、サム。君は人間で僕も人間だ! 人間は言語能力が高い生き物だ! すなわち、君と僕は会話ができる! 言葉が話せるんだ!」
サミュエルはいきなりの僕の剣幕に驚いたらしく、目を丸くして無言で話を聞いている。
「それなのにっ。なんで君は僕と話さないんだ? 朝起きたらおはよう。寝るときはおやすみだ! 挨拶ぐらいはできるだろう?」
サミュエルが僕の顔を見ながら数回瞬きをした。
「あいにく僕にはテレパシーがない。だから自分の気持ちを口に出してもらわないとわからないんだ。僕はっ……君と友達になりたいんだ!」
そうだ。今やっと自分の気持ちに気づいた。ずっとモヤモヤしてたのは何故なんだろうと思っていたが、僕はサミュエルと友達になりたかったんだ。
「……ともだち?」
「そうだよ。友人になりたいんだ! と・も・だ・ちだ!」
「いいかい。この寄宿舎の中では僕らは同年代で同室なんだ。つまりは相棒だ! 相棒なら互いに理解しあわないといけないだろ?」
「ふっ」
サミュエルが口の端を歪めた。笑っている? 多分顔の表情筋をあまり動かしたことがないからひくついてるのだろう。
「ん~? なにがおかしいのさ?」
「いや。……ふっ」
「もぉ。なんだよぉ。あっそうだ。今日の訓練で分からない単語があったんだ! 教えてくれない?」
「お前は……話があちこちに飛ぶのだな」
「そうかな? ほら、同室のよしみでさ教えてよ。ここなんだけど」
「ぁあ、それなら……」
その日から少しづつ僕らは会話が増えた。
◇◆◇
「君ってあのサムと同室なんだってね?」
声をかけた来たのは先ほどの授業で一緒だった子だ。
「うん。そうだけど? なに?」
「いや、なんか脅されてるんじゃない?」
「へ? どうしてさ」
「だって、彼って何考えてるかわかんないじゃない? 一緒にいると威圧されるしさ、君も早く転室届けだした方が良いよ」
ときどき、こういって変に同情されることが増えた。
「悪いけど、僕はあの部屋が気に入っているんだ。転室する気はないよ」
確かにサミュエルは口数は少ないがそれだけだ。直接何かをされたことはないし、せっかく念願の広い部屋に移れたのに。それを手放すつもりはない。
「なんだ。じゃあ君が新しい相手なんだ?」
「相手ってどういう事さ?」
「とぼけちゃって~。あの角部屋はさ、別名ヤリ部屋って言うんだよ」
「はあ? なんだよそれ?」
「あいつ同室の奴を手籠めにしてはヤリまくってるって話じゃん。だから君も……」
ニヤニヤしながら近づいてくる相手を思いっきり突き飛ばした。
「サムを馬鹿にするな! あいつはくそがつくほど真面目な奴なんだぞ!」
「なっなにすんだよ! ちょっとばかし綺麗だからってお高くとまってんじゃないよっ」
「何の事を言ってるんだ? お前、頭だけでなく目も悪いんじゃないのか!」
しまったと思ったが言ってしまった。僕は元々短気だ。それに喧嘩っ早い。小さい頃から兄弟喧嘩に慣れていたからだ。男ばかりで殴り合いも多かったから仕方がない。両親からはお前は見た目だけは麗しいから大人しくしとけと言われていた。僕のどこが麗しいんだ? まったくもって理解できない。
取っ組み合いの喧嘩になりかけたときに大きな手が僕らを引き離した。
「……やめろ」
「サム?」
僕を抱き込むような格好でサミュエルが相手を威嚇する。
「失せろ!」
「くそっ」
相手は尻尾を巻いて逃げてしまった。
「助けてくれてありがと。えへへへ」
「無茶をするな」
サムの眉間が寄る。これって僕が心配かけたからだよな。
「僕、短気なんだ。ごめんよ」
サムが無言のまま大きな手で僕の頭をぽんぽんっと優しく叩いた。
「へ? 新しいシーツに替えてるんだよ」
部屋の掃除の仕上げにベッドメイキングをしていたらいきなりサミュエルが怒鳴ってきた。いつの間にか部屋に戻っていたようだ。自分のベットがすんだので出かけているサミュエルの分もシーツ替えをしようとしていたのだ。
「余計なことはするなっ」
ずかずかと傍までくるとシーツを持つ僕の手を掴んで鬼のような形相で睨みつけてきた。ゴツゴツした大きな手が僕と違って男らしくってちょっと悔しい。サムの肌は褐色で僕の白い肌が浮いて見える。
掴まれたのは一瞬だったが僕の手首には赤く手の跡がついてしまった。きっと色が白いせいだろう。それを見たサムがぼそっと呟いた。
「すまん」
やけに素直に謝られるとなんだか拍子が抜けた。ちょっとおせっかいだったかな。勝手な事をしてしまったと反省した。同室とはいえベットは彼のテリトリーだ。さわられたくないものがあったのかもしれない。昔から弟たちの世話をしていたために、つい手伝いたくなってしまったのだ。
「悪い。今度からは声をかけてからするよ」
「する必要はない!」
なんだいそのエラそうな言い方は! 悪いと思って反省して損した。なんだか段々と腹が立ってきた。
「ふうん。じゃあ、替えのシーツが届いたらベットの上に置いておくよ」
「あぁ」
あ~。こういう適当な返事ってやる気がない証拠だな。弟たちを見てるからよくわかる。うわの空ってやつだ。やっぱり僕がやったほうが早いんじゃないのか? ひとこと言っといてやろう。
「でも! その日のうちに替えてなかったら僕がやるからな!」
ビシッと僕はサミュエルの目の前に指をたててやった。彼は片眉だけをあげて僕を見ている。ふふふ。なんだ、いろいろ表情を変えることもできるんじゃないか。そう思うとちょっと楽しくなってきた。
「……」
あれ? なんか僕の事を睨んでる? こんな場面は弟たちとの対峙でよく経験している。僕に対して敵対心を持っているからだ。はて? 理由が分からないぞ。
「ねえちょっと! 僕に言いたいことがあるなら言ってくれないとわからないよ!」
「っ! ……」
あれれ。眉間にしわが寄ったぞ。僕がなんかサムの気に障る事をしたのか? だったらなんで黙ってるんだろう。言いたいことがあれば口に出して言えばいいのに。そりゃ上下関係が厳しい近衛などに入団したらそうはいかないだろうが、今は同期で同室者だ。何でも言いあえるはずだ。
「いいかい、サム。君は人間で僕も人間だ! 人間は言語能力が高い生き物だ! すなわち、君と僕は会話ができる! 言葉が話せるんだ!」
サミュエルはいきなりの僕の剣幕に驚いたらしく、目を丸くして無言で話を聞いている。
「それなのにっ。なんで君は僕と話さないんだ? 朝起きたらおはよう。寝るときはおやすみだ! 挨拶ぐらいはできるだろう?」
サミュエルが僕の顔を見ながら数回瞬きをした。
「あいにく僕にはテレパシーがない。だから自分の気持ちを口に出してもらわないとわからないんだ。僕はっ……君と友達になりたいんだ!」
そうだ。今やっと自分の気持ちに気づいた。ずっとモヤモヤしてたのは何故なんだろうと思っていたが、僕はサミュエルと友達になりたかったんだ。
「……ともだち?」
「そうだよ。友人になりたいんだ! と・も・だ・ちだ!」
「いいかい。この寄宿舎の中では僕らは同年代で同室なんだ。つまりは相棒だ! 相棒なら互いに理解しあわないといけないだろ?」
「ふっ」
サミュエルが口の端を歪めた。笑っている? 多分顔の表情筋をあまり動かしたことがないからひくついてるのだろう。
「ん~? なにがおかしいのさ?」
「いや。……ふっ」
「もぉ。なんだよぉ。あっそうだ。今日の訓練で分からない単語があったんだ! 教えてくれない?」
「お前は……話があちこちに飛ぶのだな」
「そうかな? ほら、同室のよしみでさ教えてよ。ここなんだけど」
「ぁあ、それなら……」
その日から少しづつ僕らは会話が増えた。
◇◆◇
「君ってあのサムと同室なんだってね?」
声をかけた来たのは先ほどの授業で一緒だった子だ。
「うん。そうだけど? なに?」
「いや、なんか脅されてるんじゃない?」
「へ? どうしてさ」
「だって、彼って何考えてるかわかんないじゃない? 一緒にいると威圧されるしさ、君も早く転室届けだした方が良いよ」
ときどき、こういって変に同情されることが増えた。
「悪いけど、僕はあの部屋が気に入っているんだ。転室する気はないよ」
確かにサミュエルは口数は少ないがそれだけだ。直接何かをされたことはないし、せっかく念願の広い部屋に移れたのに。それを手放すつもりはない。
「なんだ。じゃあ君が新しい相手なんだ?」
「相手ってどういう事さ?」
「とぼけちゃって~。あの角部屋はさ、別名ヤリ部屋って言うんだよ」
「はあ? なんだよそれ?」
「あいつ同室の奴を手籠めにしてはヤリまくってるって話じゃん。だから君も……」
ニヤニヤしながら近づいてくる相手を思いっきり突き飛ばした。
「サムを馬鹿にするな! あいつはくそがつくほど真面目な奴なんだぞ!」
「なっなにすんだよ! ちょっとばかし綺麗だからってお高くとまってんじゃないよっ」
「何の事を言ってるんだ? お前、頭だけでなく目も悪いんじゃないのか!」
しまったと思ったが言ってしまった。僕は元々短気だ。それに喧嘩っ早い。小さい頃から兄弟喧嘩に慣れていたからだ。男ばかりで殴り合いも多かったから仕方がない。両親からはお前は見た目だけは麗しいから大人しくしとけと言われていた。僕のどこが麗しいんだ? まったくもって理解できない。
取っ組み合いの喧嘩になりかけたときに大きな手が僕らを引き離した。
「……やめろ」
「サム?」
僕を抱き込むような格好でサミュエルが相手を威嚇する。
「失せろ!」
「くそっ」
相手は尻尾を巻いて逃げてしまった。
「助けてくれてありがと。えへへへ」
「無茶をするな」
サムの眉間が寄る。これって僕が心配かけたからだよな。
「僕、短気なんだ。ごめんよ」
サムが無言のまま大きな手で僕の頭をぽんぽんっと優しく叩いた。
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