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第一章:塩対応の同室騎士は言葉が足らない
10塩彼氏返上
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「ま、まあまあまあ! そういうことでしたのね!」
義母のマイラが感嘆の声を上げた。あからさまな態度にレイノルドが片眉をあげる。サミュエルが男性と婚姻するなら弟の家督は揺るがないものとなるだろう。
「兼ねてから相談させていただいたように、卒業後は俺は辺境伯として領土を護っていく所存です」
「ったく。サミュエルらしい。婚姻を許してくれではなく婚姻しますのでと来たか。しかも降格して辺境伯を名乗ると言うのだな?」
「え? でもサムは騎士団に所属してるって言ってたよね?」
このまま騎士団にサミュエルが残ると思っていた僕は驚いた。
「ああ。辺境地に騎士団の支部を作る予定だ」
「はああ? なんだと!」
大声を荒げたのは父親であるレイノルドだ。
「お前、なんでそんな大事なことを儂に言わない!」
「王都からの極秘案件でしたので」
「ぐぬぬ。儂が反対したらどうするつもりだ」
「なさらないでしょ? 父上にはメリットが多すぎるはず」
「確かに。隣国との狭間にうちが保有している広大な辺境地に騎士団支部を設立させる場を提供すれば王都に恩を売れるし我が家の争いも鎮火しますわねえ。ほほほ」
マイラは満面の笑みである。そしてサミュエルにひざまづいた。
「今までごめんなさいね。貴方の事も本当は息子だとは思ってはいるのよ。少なくとも私は貴方をこの手で育てていこうと決心していたのだもの。でもカーネルが産まれて私は疑心暗鬼になってしまった。貴方が忠誠を誓ってくれたのに疑い続けてごめんなさい」
彼女はうなだれる様にサミュエルに頭を下げた。
「はあ、わかった。サミュエル、お前ほど策士な奴はおらぬわ。マイラを改心させ。この公爵家が王都に恩が売れるか。なるほど悪くはない取引だ。お前の望む様に儂が他者からアルベルトを奪えるように尽力してやろう」
「父上。感謝いたします」
◇◆◇
僕はしばらく茫然としていた。すべては僕のあずかり知らぬところで話が動いていたからだ。
「アル? どうした?」
「どうしたじゃない! サムは何でも一人で決めてしまって。僕の意見も聞いて欲しかった!」
「っ! すまない。こういうところだな。俺の悪いところは」
「ヒドイよ! 僕にも相談してよ」
もちろん、嫌じゃない。すっごく嬉しいよ。でもさ、なんで僕に説明してくれないのさ。自分勝手に突っ走って。僕だけ置いてけぼりだなんて。
「取られると思ったのだ」
「取られる?」
「アルが子爵家の三男だとわかっていた。お前が悩んでいるようだったので、気になってツイリー家に探りを入れた」
サミュエルが単独行動をとっていたのは騎士団の鍛錬だけでなく僕の家の内情を調べるためでもあったらしい。卒業後に婚約話が出てたのは事実だったようで焦ったサミュエルは卒業前に僕との婚姻を決めたかったのだそうだ。
「かなりの資産家の侯爵家がお前を欲しがっている」
「そんなの聞いてない……」
「子爵殿も悩んでられるようだ。あの、ジュリアンとかいう子の家らしい」
「ジュリアンってまさかあの? どうりで取り巻きが多いと思った」
食堂でアルベルトに声をかけてきた子の親が侯爵家だったらしい。
「爵位的には侯爵よりも俺の父親の公爵のほうが位は上だ。だから父に頼むしかなかった」
爵位順にしたら公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の順になる。サミュエルは皆の前では爵位を明らかに公言してなかった。ジュリアンはサミュエルが公爵家だと知らなかったのだろう。
「そうだったのか。でもサムは良いの? 公爵家から離れてしまって」
「最初から離れるつもりだったんだ。爵位なぞ俺には関係ない。煩わしいしがらみに縛られるのは嫌だ。守れるものと剣術があればいい」
守れるものってそれって僕のこと?
「僕は守られるだけは嫌だよ」
「くくく。そうだな。俺はそういうお前の気の強いところも気に入ってるんだ。今後は俺と共に領地経営に手を貸してくれないか」
領地経営! なるほど面白そうだ。
「僕は細かい手作業なども好きなんだ。いろいろ作物の栽培とかもしてみたいよ」
「ああ良いな。アルならいいアイデアを出してくれそうだ。アルは美しく果敢で、それなのに繊細で世話好きで。母のようだからな」
「母?」
「いや、その。俺には母親の記憶がないんだ」
「そうなのか……ん? それって僕がおかん体質ってこと?」
「おかんというのがよくわからんが、アルといると俺が癒されるのだ。アルが好きだ。アルと離れたくない。アルが笑うと俺が嬉しいのだ。アルを誰にも渡したくない。アルの剣さばきも華麗で素晴らしい。アルの……」
「わ、わかった。わかったから」
次から次へと出てくる惚気言葉に心臓がバクバクする。なんだいったい。サミュエルってばこんなに恥ずかしい事をいうやつだったか?
「俺がアルベルトを幸せにしたいんだ!」
「……なんだよそれ。恥ずかしいよ。サミュエルの……馬鹿」
「ふふ。そうだな。アルの前だとどうやら俺は馬鹿になるらしい」
僕はぎゅっとサミュエルに抱きついた。
「どんなサミュエルでも大好きだ」
「俺もだ」
「二人で幸せになろうね」
「ああ」
~~~~~~~~~~~~~
ここまでお読みいただきありがとうございます。
お気づきかと思いますがサムは無口ですが案外スパダリの気質があります。
今後の成長はアルの手腕にかかっております。
義母のマイラが感嘆の声を上げた。あからさまな態度にレイノルドが片眉をあげる。サミュエルが男性と婚姻するなら弟の家督は揺るがないものとなるだろう。
「兼ねてから相談させていただいたように、卒業後は俺は辺境伯として領土を護っていく所存です」
「ったく。サミュエルらしい。婚姻を許してくれではなく婚姻しますのでと来たか。しかも降格して辺境伯を名乗ると言うのだな?」
「え? でもサムは騎士団に所属してるって言ってたよね?」
このまま騎士団にサミュエルが残ると思っていた僕は驚いた。
「ああ。辺境地に騎士団の支部を作る予定だ」
「はああ? なんだと!」
大声を荒げたのは父親であるレイノルドだ。
「お前、なんでそんな大事なことを儂に言わない!」
「王都からの極秘案件でしたので」
「ぐぬぬ。儂が反対したらどうするつもりだ」
「なさらないでしょ? 父上にはメリットが多すぎるはず」
「確かに。隣国との狭間にうちが保有している広大な辺境地に騎士団支部を設立させる場を提供すれば王都に恩を売れるし我が家の争いも鎮火しますわねえ。ほほほ」
マイラは満面の笑みである。そしてサミュエルにひざまづいた。
「今までごめんなさいね。貴方の事も本当は息子だとは思ってはいるのよ。少なくとも私は貴方をこの手で育てていこうと決心していたのだもの。でもカーネルが産まれて私は疑心暗鬼になってしまった。貴方が忠誠を誓ってくれたのに疑い続けてごめんなさい」
彼女はうなだれる様にサミュエルに頭を下げた。
「はあ、わかった。サミュエル、お前ほど策士な奴はおらぬわ。マイラを改心させ。この公爵家が王都に恩が売れるか。なるほど悪くはない取引だ。お前の望む様に儂が他者からアルベルトを奪えるように尽力してやろう」
「父上。感謝いたします」
◇◆◇
僕はしばらく茫然としていた。すべては僕のあずかり知らぬところで話が動いていたからだ。
「アル? どうした?」
「どうしたじゃない! サムは何でも一人で決めてしまって。僕の意見も聞いて欲しかった!」
「っ! すまない。こういうところだな。俺の悪いところは」
「ヒドイよ! 僕にも相談してよ」
もちろん、嫌じゃない。すっごく嬉しいよ。でもさ、なんで僕に説明してくれないのさ。自分勝手に突っ走って。僕だけ置いてけぼりだなんて。
「取られると思ったのだ」
「取られる?」
「アルが子爵家の三男だとわかっていた。お前が悩んでいるようだったので、気になってツイリー家に探りを入れた」
サミュエルが単独行動をとっていたのは騎士団の鍛錬だけでなく僕の家の内情を調べるためでもあったらしい。卒業後に婚約話が出てたのは事実だったようで焦ったサミュエルは卒業前に僕との婚姻を決めたかったのだそうだ。
「かなりの資産家の侯爵家がお前を欲しがっている」
「そんなの聞いてない……」
「子爵殿も悩んでられるようだ。あの、ジュリアンとかいう子の家らしい」
「ジュリアンってまさかあの? どうりで取り巻きが多いと思った」
食堂でアルベルトに声をかけてきた子の親が侯爵家だったらしい。
「爵位的には侯爵よりも俺の父親の公爵のほうが位は上だ。だから父に頼むしかなかった」
爵位順にしたら公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵の順になる。サミュエルは皆の前では爵位を明らかに公言してなかった。ジュリアンはサミュエルが公爵家だと知らなかったのだろう。
「そうだったのか。でもサムは良いの? 公爵家から離れてしまって」
「最初から離れるつもりだったんだ。爵位なぞ俺には関係ない。煩わしいしがらみに縛られるのは嫌だ。守れるものと剣術があればいい」
守れるものってそれって僕のこと?
「僕は守られるだけは嫌だよ」
「くくく。そうだな。俺はそういうお前の気の強いところも気に入ってるんだ。今後は俺と共に領地経営に手を貸してくれないか」
領地経営! なるほど面白そうだ。
「僕は細かい手作業なども好きなんだ。いろいろ作物の栽培とかもしてみたいよ」
「ああ良いな。アルならいいアイデアを出してくれそうだ。アルは美しく果敢で、それなのに繊細で世話好きで。母のようだからな」
「母?」
「いや、その。俺には母親の記憶がないんだ」
「そうなのか……ん? それって僕がおかん体質ってこと?」
「おかんというのがよくわからんが、アルといると俺が癒されるのだ。アルが好きだ。アルと離れたくない。アルが笑うと俺が嬉しいのだ。アルを誰にも渡したくない。アルの剣さばきも華麗で素晴らしい。アルの……」
「わ、わかった。わかったから」
次から次へと出てくる惚気言葉に心臓がバクバクする。なんだいったい。サミュエルってばこんなに恥ずかしい事をいうやつだったか?
「俺がアルベルトを幸せにしたいんだ!」
「……なんだよそれ。恥ずかしいよ。サミュエルの……馬鹿」
「ふふ。そうだな。アルの前だとどうやら俺は馬鹿になるらしい」
僕はぎゅっとサミュエルに抱きついた。
「どんなサミュエルでも大好きだ」
「俺もだ」
「二人で幸せになろうね」
「ああ」
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
お気づきかと思いますがサムは無口ですが案外スパダリの気質があります。
今後の成長はアルの手腕にかかっております。
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