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第二章:辺境伯は溺愛中
19悲喜こもごも
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「もうなんだって言うのよ!せっかく新しいドレスを新調したのに!あのアルベルトって人に会うために綺麗に着飾ったのに。……あの人が私の婚約者だったらよかったのに」
そうよ。わたしみたいな綺麗な子にはあのくらいの美しい男性でないと釣り合わないわ。
「誰かいないの!ドレスが汚れちゃったから着替えるわよ!」
「はい。アンジェリカ様!」
すぐに女中たちがやってきて動きやすい部屋着に着替える。
「まったく。サミュエル様ったら本当に何を考えてるかわからないわ!」
何がどうなってるのかわからない。お父様はぷりぷり怒ったままだし、私は部屋に閉じ込められて出してももらえない。昔からそうだった。母様がこの屋敷を出て行ってからは、私の周りには誰も近寄らない。お父様が選んだ人間だけが私の話し相手だった。貴族としての基本の立ち居振る舞いは身につけてるけど、同年代の話し相手がいない。お母様は教養のある方だった。お父様とはよく喧嘩ばかりされていたけど。私もお母様のように勉強して国中を飛び回りたかった。
「女が教養をつけるとろくなことはない!勉強よりも結婚を考えろ。お前は吾輩の娘なのだから綺麗で可愛いのだ。周りの男が求婚にくるだろう。だがな、結婚をしてもいいのは爵位の高い男だけだぞ」
そうなのね。私は綺麗で可愛いのね。結婚すれば今よりもっと裕福になれるのね?そしたらもっと贅沢ができるようになる!お父様にはそう教えられたわ!使用人が読んでいたお伽話の本には素敵な王子様の絵が沢山載っていた。夢中になって沢山買い込んだものよ。どの本にも素敵な王子様が愛を囁いてくれるの。目を閉じるだけで頭の中でその声が聞こえてくるようだわ。主人公は私なのね。
なのに、お父様は私の婚約者はあの無表情なサミュエル様だと言っていたのよ。笑いもしないし何を考えているのかもわからない。それに日に焼けたよう色の濃い肌の色。お父様はいつもサミュエル様の肌は汚れてるみたいだとおっしゃられてたわ。奴隷みたいだともおっしゃられていた。
嫌だわ。奴隷なんて。でも公爵家の血を引いているから爵位が高いらしい。贅沢な暮らしができるのなら多少は目をつぶってやってもいいわ。そうずっと思っていた。
なのに。『俺の正式な婚約者はアルベルトだ』ですって?何よ。それ。やってられないわ。
◇◆◇
サミュエル様……いやサミュエルめ!あの青二才めが!あんなやつ公爵様の血統でなければ。そもそもあの肌の色には鳥肌が立つ!奴隷のような肌のくせに!この吾輩に恥をかかせよって!パレードだと?ふざけよって!
「この地はノワール伯爵領。吾輩の領地なのだ!吾輩が管理しておるのだ!それを生意気な口をたたきよって!」
あんな女のような顔立ちの男が婚約者だと?笑わせる。王都で何をやっていたのやら。
「はん。母親があんなだから。息子もああなるんだな」
あの薄汚れたような肌の色。吾輩が小さい頃は奴隷たちがあのような肌だった。きっとあの側室も奴隷だったのではないだろうか?つまりは奴隷の息子なのではないのか?ならば吾輩のほうが格上ではないか。たまたま公爵さまが奴隷に手をつけて産ました子なのではないかとずっと疑っていた。無表情だし睨みつけるような目。夜のような真っ黒い髪。呪われてるんじゃないか?とさえ思っておったわ。
だが、公爵家だというので我慢しておった。結婚さえしてしまえば吾輩が公爵家の一員としてあの城も全てに入るはずじゃったのに!クソ!忌々しい。
「ふん!農家のものは皆、吾輩のいう事をよくきいている。これからもきくだろう」
周辺の領主にも賄賂はたくさんばら撒いてある。収穫高から何割かは吾輩の懐に入るようになっているし、農民はほとんど勉学もできないやつばかりだ。吾輩がここは伯爵領だと言うだけで皆信じておった。今更違うとは信じまい。だいたい格が違うのだ。吾輩は産まれながらにしての貴族だ。肌も白いし品格がある。
それにしても、ブルーノの奴め!吾輩に謝れとは!エラそうにしやがって!
「よし!もっとブルーノの奴をこき使おう!あやつの主は吾輩なのだからな!」
がっはっはっは。
◇◆◇
「あの方の。アレーニア様のお子様が今、私の身近にいらっしゃる。ああ、夢ではないだろうか」
アレーニア様の幸せが私の幸せ。アレーニア様の喜びが私の喜び。
なのにどうして私はこんな奴の元で働いているのだろうか?
こいつはどう考えても害にしかならない。排除してしまうのが一番いいだろう。ではどうやって?。
「一番近い場所にいるのが私……。ふむ……」
そうよ。わたしみたいな綺麗な子にはあのくらいの美しい男性でないと釣り合わないわ。
「誰かいないの!ドレスが汚れちゃったから着替えるわよ!」
「はい。アンジェリカ様!」
すぐに女中たちがやってきて動きやすい部屋着に着替える。
「まったく。サミュエル様ったら本当に何を考えてるかわからないわ!」
何がどうなってるのかわからない。お父様はぷりぷり怒ったままだし、私は部屋に閉じ込められて出してももらえない。昔からそうだった。母様がこの屋敷を出て行ってからは、私の周りには誰も近寄らない。お父様が選んだ人間だけが私の話し相手だった。貴族としての基本の立ち居振る舞いは身につけてるけど、同年代の話し相手がいない。お母様は教養のある方だった。お父様とはよく喧嘩ばかりされていたけど。私もお母様のように勉強して国中を飛び回りたかった。
「女が教養をつけるとろくなことはない!勉強よりも結婚を考えろ。お前は吾輩の娘なのだから綺麗で可愛いのだ。周りの男が求婚にくるだろう。だがな、結婚をしてもいいのは爵位の高い男だけだぞ」
そうなのね。私は綺麗で可愛いのね。結婚すれば今よりもっと裕福になれるのね?そしたらもっと贅沢ができるようになる!お父様にはそう教えられたわ!使用人が読んでいたお伽話の本には素敵な王子様の絵が沢山載っていた。夢中になって沢山買い込んだものよ。どの本にも素敵な王子様が愛を囁いてくれるの。目を閉じるだけで頭の中でその声が聞こえてくるようだわ。主人公は私なのね。
なのに、お父様は私の婚約者はあの無表情なサミュエル様だと言っていたのよ。笑いもしないし何を考えているのかもわからない。それに日に焼けたよう色の濃い肌の色。お父様はいつもサミュエル様の肌は汚れてるみたいだとおっしゃられてたわ。奴隷みたいだともおっしゃられていた。
嫌だわ。奴隷なんて。でも公爵家の血を引いているから爵位が高いらしい。贅沢な暮らしができるのなら多少は目をつぶってやってもいいわ。そうずっと思っていた。
なのに。『俺の正式な婚約者はアルベルトだ』ですって?何よ。それ。やってられないわ。
◇◆◇
サミュエル様……いやサミュエルめ!あの青二才めが!あんなやつ公爵様の血統でなければ。そもそもあの肌の色には鳥肌が立つ!奴隷のような肌のくせに!この吾輩に恥をかかせよって!パレードだと?ふざけよって!
「この地はノワール伯爵領。吾輩の領地なのだ!吾輩が管理しておるのだ!それを生意気な口をたたきよって!」
あんな女のような顔立ちの男が婚約者だと?笑わせる。王都で何をやっていたのやら。
「はん。母親があんなだから。息子もああなるんだな」
あの薄汚れたような肌の色。吾輩が小さい頃は奴隷たちがあのような肌だった。きっとあの側室も奴隷だったのではないだろうか?つまりは奴隷の息子なのではないのか?ならば吾輩のほうが格上ではないか。たまたま公爵さまが奴隷に手をつけて産ました子なのではないかとずっと疑っていた。無表情だし睨みつけるような目。夜のような真っ黒い髪。呪われてるんじゃないか?とさえ思っておったわ。
だが、公爵家だというので我慢しておった。結婚さえしてしまえば吾輩が公爵家の一員としてあの城も全てに入るはずじゃったのに!クソ!忌々しい。
「ふん!農家のものは皆、吾輩のいう事をよくきいている。これからもきくだろう」
周辺の領主にも賄賂はたくさんばら撒いてある。収穫高から何割かは吾輩の懐に入るようになっているし、農民はほとんど勉学もできないやつばかりだ。吾輩がここは伯爵領だと言うだけで皆信じておった。今更違うとは信じまい。だいたい格が違うのだ。吾輩は産まれながらにしての貴族だ。肌も白いし品格がある。
それにしても、ブルーノの奴め!吾輩に謝れとは!エラそうにしやがって!
「よし!もっとブルーノの奴をこき使おう!あやつの主は吾輩なのだからな!」
がっはっはっは。
◇◆◇
「あの方の。アレーニア様のお子様が今、私の身近にいらっしゃる。ああ、夢ではないだろうか」
アレーニア様の幸せが私の幸せ。アレーニア様の喜びが私の喜び。
なのにどうして私はこんな奴の元で働いているのだろうか?
こいつはどう考えても害にしかならない。排除してしまうのが一番いいだろう。ではどうやって?。
「一番近い場所にいるのが私……。ふむ……」
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