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38 クリーンインストール
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『小賢しい真似を。羽虫どもめが!』
皇帝がコードを唱えるとグレーシュとオリジンが壁や床に叩きつけられた。だが直後に皇帝にも大きな反動が襲う。白壁がガコンとへこむ。
『ぐは……』
ガガ……目の前の皇帝の姿にノイズが走る。魔道具が発動したのか。では二人を抹消しようとしたんだな。今まで無視をしていたのにひどい。
「ルーン。今だ!」
シュラウドの合図に【コード・ゼロ】と僕が唱えると、白壁に青白く発光した文字や数字が縦横に走っていく。コードが次々と浮かび上がってくる。どれも古のコードの応用版だ。最新技術が覆い被さっていたのは防護のみだ。見かけだけだったのか。コードの歪みさえ見える。……自動修復が偏っている。記憶の維持と媒体の確保を重点的にしているからか? 新しい手が入ってないのだ。この場所を守るために細部にまで技術者を入れなかったのか。隠匿され続けてメンテナンスが徹底されていない。だからオリジンがプログラムの隙をみつけて内部情報を見つけられたのだろう。
「壁が消えていく?」
壁の奥には無数の光りが点滅していた。多数のケーブルや機械が見える。それらの動力源は魔力だ。こんなものを守るために、シュラウドや、魔力の高い者たちに服従を強制していたのか。人として自由に生きる尊厳を取り上げようとしていたのか。モノのように魔力や命を奪われていった者たちはもう二度と帰ってこない。理不尽すぎて腹が立ってくる。
「ルーン! 危ない」
シュラウドに抱きかかえられ、一回転する。体中から魔力を奪い取られるかと思うほどの力に襲われた。だが、すぐにその力は反対方向へと向かっていく。皇帝をすり抜け、壁の奥で爆発した。僕らも抹消しようとしたのか。しかし、これで全員分の魔道具を使い切ってしまった。
『ガガ……ガガ……侵略者どもめ……!』
衝撃音とともに警戒音がけたたましく鳴る。システムの一部が壊れたらしい。
【エラー】【自動修復】【ハッキング】【修復不可能】【削除】
「グレーシュ、オリジン大丈夫か!」
「……ああ。なんともねえ」
「吾輩もまだまだやれますぞ」
『緊急事態発生! 敵を排除せよ!』
最上階の扉が開くと共に騎士団たちが現れる。皆、うつろな目をして剣を構えていた。服従コードを使って呼び寄せていたのか。僕たちを抹消できなかったので、今度は物理攻撃をするつもりか。
「ルーン!俺の後ろへ」
剣同士が打ち合う音が響く。だめだ、シュラウドを剣で戦わせてはいけない。皇帝は目の前でフリーズ状態でいる。僕たちの相手は生身の人間にまかせて、プログラムの修復作業に入ったようだ。細かな光だけが無数に点滅を繰り返している。
「雷。吾輩が雷撃でしばらく動けないようにしますから。オリジンは魔道具の修復と製作を」
「よっしゃあ、まかせとけ」
あの二人、なかなか息が合ってるじゃないか。
「貴様……副団長か……」
シュラウドの動きが鈍くなった。顔見知り? いや、副団長って。シュラウドが率いていた騎士団だったのか。少し前まで一緒に戦っていた仲間だった彼らに剣を向けなくてはいけないなんて。皮肉だ。
「団長……なぜ……戻ってこないのですか……?」
副団長と呼ばれた青年が苦しそうに問いかけてくる。
「俺はもう団長ではない」
「では……本当に……反逆の首謀者なのですか?」
「……そうだ……」
青年が悔しそうな顔をして、剣を構えなおした。
「裏切者! お前を倒す!」
剣を打ち合う音が加速する。相手も強い。同じ部隊なら互いの動きも読み切っているだろうに。シュラウドに不利なのではないだろうか。一時でも仲間だった相手に剣を向けるなんて、なんて苦しそうなんだ。僕が現れなかったら、今もシュラウドは団長を続けられていただろうに。
「僕の責任だ。僕がシュラウドを……」
「違う! ルーン! 俺は自分の意思でここにいる!」
「シュラウド……」
「そうだね……こんな事、もう続けさせてはいけない」
人を操ることを止めなければいけない。修復などさせるか。プログラムコード破壊、復元不可能。頭の中でプログラムを構築し発動させるが、ナノマシンがそれを上回って書き換えようとしてくる。演算能力を上回ればいいのか。
『……邪魔をするな』
集中していたせいか僕は皇帝の声に気付かなかったのだ。騎士達の動きが一斉に僕に向かったことを。
「ルーン!」
「……え?」
シュラウドが僕を抱き込んだ。騎士達の剣がシュラウドを通して僕の体の手前で止まる。
「僕を……かばったの?」
シュラウドが刺されてしまった。目の前で血がしたたり落ちる。魔法攻撃も同時に受けていたのか、シュラウドのお腹に穴が開く。嘘だ……。
「やめろ! 【爆ぜろ!】」
僕の魔法コードで、騎士達が爆発音とともに、僕らのまわりから飛び散っていく。
「僕の……僕のシュラウドが……い、嫌だ。死なないで」
「ルーン……怪我はないか」
「シュラウド……しゃべらないで」
「お前がいる限り……俺はお前の中で……生き続ける」
よくも僕のシュラウドを! もうこうなったら手段は選ばないっ!
【コード・ゼロ!】【クリーンインストール!】
すべてをゼロへ! 既存のデータとメモリをすべて消去し、最初からやり直す! 初期化へ!
この世界の再構築を。
皇帝がコードを唱えるとグレーシュとオリジンが壁や床に叩きつけられた。だが直後に皇帝にも大きな反動が襲う。白壁がガコンとへこむ。
『ぐは……』
ガガ……目の前の皇帝の姿にノイズが走る。魔道具が発動したのか。では二人を抹消しようとしたんだな。今まで無視をしていたのにひどい。
「ルーン。今だ!」
シュラウドの合図に【コード・ゼロ】と僕が唱えると、白壁に青白く発光した文字や数字が縦横に走っていく。コードが次々と浮かび上がってくる。どれも古のコードの応用版だ。最新技術が覆い被さっていたのは防護のみだ。見かけだけだったのか。コードの歪みさえ見える。……自動修復が偏っている。記憶の維持と媒体の確保を重点的にしているからか? 新しい手が入ってないのだ。この場所を守るために細部にまで技術者を入れなかったのか。隠匿され続けてメンテナンスが徹底されていない。だからオリジンがプログラムの隙をみつけて内部情報を見つけられたのだろう。
「壁が消えていく?」
壁の奥には無数の光りが点滅していた。多数のケーブルや機械が見える。それらの動力源は魔力だ。こんなものを守るために、シュラウドや、魔力の高い者たちに服従を強制していたのか。人として自由に生きる尊厳を取り上げようとしていたのか。モノのように魔力や命を奪われていった者たちはもう二度と帰ってこない。理不尽すぎて腹が立ってくる。
「ルーン! 危ない」
シュラウドに抱きかかえられ、一回転する。体中から魔力を奪い取られるかと思うほどの力に襲われた。だが、すぐにその力は反対方向へと向かっていく。皇帝をすり抜け、壁の奥で爆発した。僕らも抹消しようとしたのか。しかし、これで全員分の魔道具を使い切ってしまった。
『ガガ……ガガ……侵略者どもめ……!』
衝撃音とともに警戒音がけたたましく鳴る。システムの一部が壊れたらしい。
【エラー】【自動修復】【ハッキング】【修復不可能】【削除】
「グレーシュ、オリジン大丈夫か!」
「……ああ。なんともねえ」
「吾輩もまだまだやれますぞ」
『緊急事態発生! 敵を排除せよ!』
最上階の扉が開くと共に騎士団たちが現れる。皆、うつろな目をして剣を構えていた。服従コードを使って呼び寄せていたのか。僕たちを抹消できなかったので、今度は物理攻撃をするつもりか。
「ルーン!俺の後ろへ」
剣同士が打ち合う音が響く。だめだ、シュラウドを剣で戦わせてはいけない。皇帝は目の前でフリーズ状態でいる。僕たちの相手は生身の人間にまかせて、プログラムの修復作業に入ったようだ。細かな光だけが無数に点滅を繰り返している。
「雷。吾輩が雷撃でしばらく動けないようにしますから。オリジンは魔道具の修復と製作を」
「よっしゃあ、まかせとけ」
あの二人、なかなか息が合ってるじゃないか。
「貴様……副団長か……」
シュラウドの動きが鈍くなった。顔見知り? いや、副団長って。シュラウドが率いていた騎士団だったのか。少し前まで一緒に戦っていた仲間だった彼らに剣を向けなくてはいけないなんて。皮肉だ。
「団長……なぜ……戻ってこないのですか……?」
副団長と呼ばれた青年が苦しそうに問いかけてくる。
「俺はもう団長ではない」
「では……本当に……反逆の首謀者なのですか?」
「……そうだ……」
青年が悔しそうな顔をして、剣を構えなおした。
「裏切者! お前を倒す!」
剣を打ち合う音が加速する。相手も強い。同じ部隊なら互いの動きも読み切っているだろうに。シュラウドに不利なのではないだろうか。一時でも仲間だった相手に剣を向けるなんて、なんて苦しそうなんだ。僕が現れなかったら、今もシュラウドは団長を続けられていただろうに。
「僕の責任だ。僕がシュラウドを……」
「違う! ルーン! 俺は自分の意思でここにいる!」
「シュラウド……」
「そうだね……こんな事、もう続けさせてはいけない」
人を操ることを止めなければいけない。修復などさせるか。プログラムコード破壊、復元不可能。頭の中でプログラムを構築し発動させるが、ナノマシンがそれを上回って書き換えようとしてくる。演算能力を上回ればいいのか。
『……邪魔をするな』
集中していたせいか僕は皇帝の声に気付かなかったのだ。騎士達の動きが一斉に僕に向かったことを。
「ルーン!」
「……え?」
シュラウドが僕を抱き込んだ。騎士達の剣がシュラウドを通して僕の体の手前で止まる。
「僕を……かばったの?」
シュラウドが刺されてしまった。目の前で血がしたたり落ちる。魔法攻撃も同時に受けていたのか、シュラウドのお腹に穴が開く。嘘だ……。
「やめろ! 【爆ぜろ!】」
僕の魔法コードで、騎士達が爆発音とともに、僕らのまわりから飛び散っていく。
「僕の……僕のシュラウドが……い、嫌だ。死なないで」
「ルーン……怪我はないか」
「シュラウド……しゃべらないで」
「お前がいる限り……俺はお前の中で……生き続ける」
よくも僕のシュラウドを! もうこうなったら手段は選ばないっ!
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この世界の再構築を。
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