スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら

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【幕間】 祷 cor primária do céu 14

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 知った気になったつもりすらなかったが、表面的な部分すらまだまだ知らないことが多い。
 祷はサンバを通し、まだ日本で知られていないブラジル文化も、広めていきたいと考えていた。


 レチシアに連れられていった店では当然のようにアルコールが提供された。
 祷も穂積もアルコールは練習くらいに留めておいた。
 茉瑠がだいぶつぶれてしまっていて、お店のフロアに直接座り込み、飲み干したカイピリーニャの700ml瓶を自分の周囲に並べていた。その数なんと十六本。


 カイピリーニャはブラジルの蒸留酒で砂糖が大量に入っているため甘くて飲みやすいがアルコール度数は15度もある。調子に乗って飲み過ぎると茉瑠のようになってしまうのだ。

 同じくらい飲んでいるはずの慈杏は比較的平然としていて、瓶に埋もれて項垂れる茉瑠を介抱しようとしていたが、項垂れて動かなくなっていた茉瑠が急に顔を上げ、げらげら笑いながら「カイピリーニャぶんぶん! カイピリーニャぶんぶん!」と大学生の飲みサーでやっているようなテキーラコールをカイピリーニャに変えてコールし始めた茉瑠と一緒になって、「ぶんぶんっ」と笑っているのだから、それなりにアルコールはまわっているようだった。

 慈杏に支えられて立ち上がった茉瑠は、「カイッピリーニャ カイッピリーニャ カイッピリーニャ! ウホホイ!」とこちらもテキーラで使われるコールをカイピリーニャに変え、「ウホホイ!」で右手を頭の上にあげて手を広げる動きをしている。慈杏も一緒になって同じ動きをし始め、レチシアは爆笑していた。

「やば、お調子者が過ぎるっ」

 笑っている祷に「これも動画撮っておこう」と穂積もスマホを構え笑いながら話しかけた。「ミカに送っちゃえ」と少し意地悪な笑顔で祷が応える。
 ミカは『カザウ』で『メストリ・サラ』という『ポルタ・バンデイラ』をエスコートする男性ダンサーで、慈案の相手役を務めるメンバーだ。
 本名の美嘉を音読みにした日常でも使われていた愛称をそのままサンバネームにしている。慈杏の恋人でもある。学生の頃からなのでその付き合いは長い。慈杏を第一に考えている懐の深い人物だ。仮に画像を送っても冗談で済むだろう。


 そのうち茉瑠と慈杏の動きはダンスへと変わっていき、レチシアも加わったところで穂積も祷を巻き込みながら一緒に踊った。
 茉瑠はやはりアルコールの影響が色濃く、早々に座り込み、踊る仲間たちを囃し立てる役に回った。
 現地の人たちのノリもさすがで、茉瑠以上に囃し立てながらも、一同よりも尚激しく踊っている。踊ってる人たちの中には、客ではなく従業員も含まれているのだから、やはり本場は違う。
 現地の人たちと一体化したその場は、祷たちを限りなくブラジレイラへと変え、更けてゆく夜を騒がしく長い夜に変えていった。
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