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気合いと気負い
しおりを挟む(色部 誉)
「誉。大丈夫だと思ってるから念のための確認だと思って欲しいんだけど」
バイトの控室での準備中に、メイクをしながら鏡越しに要さんに問われた。
要さんはどちらかと言えばシャープな顔立ちだ。言い方を変えればきつめの印象を与える。その顔を少し顰めている。
気合いを入れていた私にどうかしたのかと問われ、マレとのことを話したのだ。
「入れ込み過ぎてない?」「共依存になってない?」
伝えられた事象のみを、客観的に評価したら顕れた疑問は、きっと的を得ている。
自分を振り返る機会が与えられたのはありがたいと思わなくては。だけど、まあ、それはそれとして。
「大丈夫です! 要さんこそ、私に入れ込み過ぎてません?」
言うべきことは言わせてもらう。
要さんはいつまでも私に甘い。私に過保護だ。私に構いすぎる。
「んなっ⁉︎」
周りから聞こえる「誉、いつになく強気じゃん」なんて笑いながら言う声も、私には追い風だ。
私は自分のやりたいこととして、マレの望みを叶えるために頑張るのだ。
気合は入るし強気にだってなる。周りからそう見えているなら、それがきちんと体現できている証明のように思えた。
でも、真面目な話要さんの言うことはわかる。
だから、私はまず自分の気持ちを整理したのだ。
後悔や罪の意識を行動の指針としないように。
余計な情報や感情を削ぎ落したときに、私はもう一度マレの手を掴みたいと本当に思っていることを、識れた。自分の心の奥の願望に確信が持てた。そしてそれは、私を安堵させてくれた。
あの頃、マレを護っていたと思っていた私は、その実マレを護ることで私自身間違いなく充足感を得ていた。
今も、本音で「マレのためになにかを」と思えている私には、自己犠牲や義務感や償いではなく、「自分の満足のため」というある意味健全な欲求に基づいていることが確認できた。
自分のエゴを、欲を、認識できた私は、何ら後ろ暗いことなく、堂々と「自分のために」と、その欲を貫ける。
「する」立場であることを強く意識することで、改めて私は要さんの想いにも気付かされた。
先ほどはあんな言い方をしたが、感謝はしているのだ。
「どうせ入れ込むなら、応援してください。手伝ってください!」
「おぉ⁉︎ う、うん」
気圧されたような要さん。
私がそうであるように。要さんもまた、私を護ろうという意識を持っているのなら、その対象からは頼られた方が嬉しいし、気合が入るはずだから。
遠慮せずに頼らせてもらおうと思った。
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