スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら

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ディスクジョッキー

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 座る紳士をにこやかに見つめ、一拍置いたところでしょーちゃんが話し始めた。

「ランドさんほどの実績のある方が、ほぼ手弁当で加わってくれると聞いて、非常に心強いです」
 しょーちゃんの言葉に、「いやあ、こちらこそ。得難い機会を齎してくれた彼に感謝しなくてはね」と、ランドさん。
 
「同感です。こんどうちのお店おごっときます! って言っても、私はもうやめてますけど、その日だけは復活しちゃおうかなー」なんて笑っているしょーちゃんに、そんな貴重な機会があるなら、是非ご同伴させていただきたいものです、なんて、物腰柔らかに冗談に乗っている紳士。

 
 いや、そう言われれば、見せてもらった動画の中でターンテーブルを操作し場を盛り上げていたあのDJに雰囲気似ている? し、やり取りなんかからも、普通の勤め人にしてはなんかこなれている気がする。遊び慣れていると言い換えることもできる? もっと言えば、いわゆる業界人系のイメージから、チャラさを抜いた感じ?
 
 
「え、あ、あの。こちらの方が……?」
「あなたが色部さん? 今回の企画の発起人の? 改めて、初めまして。この度は素晴らしい機会をロートルディスクジョッキーに与えてくださってありがとうございます。イベントではクラブDJとMCの役割を拝命しました、スーパーTNTNランド・B・B・B・B・ON・MY・BEATと申します。長い名前ですので、どうぞランドとお呼びください」
 
 物腰丁寧なのに内側に何やらいかれた単語が含まれている自己紹介を受け、私は辛うじて「はじめまして、色部です。この度は依頼を受けてくださりありがとうございます。よろしくお願いします」とだけ言うことができた。
 
 こ、この人が!
 あの、ローカルなクラブ界隈ではちょっと有名なスーパーTNTNランド・B・B・B・B・ON・MY・BEAT!
 ちょっと有名かどうかは、私は良くは知らんのだけれども。たーくんがなんかそんな感じのことを言っていた!
 スーパーTNTNランドが名前で、B・B・B・B・ON・MY・BEATが苗字に相当するとか、なんかそんなようなことを言っていた! 知らんけれども。
 TNってなんだよ。なんで名前にスーパーとかついてるんだよ。とか思うも、それが彼らの住まう業界なのだろう。サンバの世界も、サンバネームというものを名乗り、中にはよくわからないものもあったりはするが、ここまでのものは規格外だ。ちなみにTNはティンと発音するようだ。それを二回続ける読み方は、狙ってるとしか思えない。発想が小三だ。それをこの紳士が......と思うと、何が虚で何が実かわからなくなってくる。
 
 たーくんが見せてくれた動画では、奇抜なサングラスを掛け、よくわからない帽子をかぶり、わけのわからない衣装を身に付けたDJが、何やらすっごいテンションで、早口でまくしたてながら、ターンテーブルを操作していた。
 さすがと言って良いのか、早口なのに言葉は聞き取りやすかった。もしくはなにを言っているのかわからなくてもそれ自体がラップの歌のようになっていて、ターンテーブルの技術も確かなものがあるのか、動画の中は終始盛り上がっているように見えた。
 
 それが、この人?

 あの、ファンキーとクレイジーを足して何かを掛けて、それを遠くにぶん投げたような個性を、孔雀ばりに観る者に見せつけていたあの人が?

 全然印象が違う。

 が、お笑い芸人が普段はまじめとか、まあ割と聞く話ではある。
 ローカルの音楽シーンに詳しくない私が知らなかっただけで、たーくんが言う通り、それなりに知られている人なのだろう。
 人とのかかわりが重要な業種や業界にあっては、一見どんなに破天荒に見えてもその実、正しいコミュニケーションが取れる誠意ある常識人じゃなくては、大成は難しいとも思う。
 
 翌々考えてみれば、すべて想定し得る範囲内のことだ。
 私が勝手な先入観で、思い込んでいたに過ぎない。
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